海外ドラマ

ベター・コール・ソウル シーズン3

ジミーとチャックの確執は頂点に!法廷ドラマとアウトロー・ドラマの二面性をもった、現代米TVドラマを代表する傑作!

Better Call Saul Season3
2017年 アメリカ カラーHD/4K 41-60分 全10話 AMC Netflixで視聴可能 スーパー!ドラマTVで放映
クリエイター: ヴィンス・ギリガン、ピーター・グールド
出演:ボブ・オデンカーク、ジョナサン・バンクス、マイケル・マッキーン、レイ・シーホーン、ジャンカルロ・エスポジート、マイケル・マンド、パトリック・ファビアン、マーク・マーゴリス ほか

 シーズン3は、全体が傑作といえるドラマの中においても傑作だ!ブレイキング・バッドのスピンアウトとして登場したベター・コール・ソウルの位置付けについては、シーズン1/2の解説をご覧いただきたい。
 このシーズンでは、なんといってもこれまでドラマ主軸であった、主人公ジミー(のちのソウル:ボブ・オデンカーク)とその兄で大弁護士のチャック(マイケル・マッキーン)の確執が決着を迎える。
 淡々と地元のサラマンカへの報復を考えていたマイクは、ついにガス・フィリングに出会い、サラマンカを殺すことは止められるが、それ以外の商売の邪魔については期待されているようなので、自分の保管していた裏金の洗浄と引き換えに、サラマンカの流通ルートを潰しにかかる。
 怒ったサラマンカは、ガスのルートに自分のヘロインを同乗させること強要するが、それだけでは我慢ならず、独自のルートのために手下のナチョの父親の中古車ビジネスに目をつける。ところが堅気の父親がこのままでは殺されると追い込まれたナチョが、意外な手でサラマンカの抹殺を図ることになる。
 チャックを心配して訪れた、ジミーの証言を録音したチャックの本当の狙いは、実は法曹協会の審問会においてジミーの弁護士資格を永久剥奪することだったが、ジミーはキムの協力を得て、自分らしいやりかたでチャックの主張の根底を揺るがして、1年の資格停止と社会奉仕活動という軽い判定を勝ち取った。

 シーズン1からのお話を思い出したい方はこちら
5人の登場人物が10分で振り返る、ベター・コール・ソウル、シーズン1〜3
(素晴らしい!是非日本語字幕をつけて欲しい!)

 毎回ドラマの始まりは、内容とは無関係に見え、かなり進んで行くまでシーンが意味することがわからない仕掛け。カメラワークの工夫は、まさに天才的だ。ドラマの学校があれば、脚本、撮影、編集とすべてについて教材にすべき出来栄えである。
 ポーカー・フェイスのマイクの策略は、感心するくらいかっこいい。本筋の話とは関係ないが、弁護士資格を停止されたジミーが、自分の広告枠を転売するために学生を使って地元CMの撮影押し売りを始めたり、もともと自分が開拓した老人ホーム共同訴訟の和解を早めて、取り分をせしめようとする手際は、相変わらず爆笑である。このCMのエピソードで初めて、ソウル・グッドマンというキャラクターが登場する。
 しかし、今回の特徴は、これまでより本格的なリーガルドラマとしての側面を有していることだ。
 ジミーを陥れるチャックの2段構えの罠も素晴らしいが、別のブラフを予想させながら、まさかの仕掛けで切り抜けるジミーのアイディアは、リーガル・ドラマとしてもレベルが高い。公式の裁判の場ではなく、弁護士会の審問というレベルに落として、面白みを出せる範囲を確保して上で、持ってきた作戦は奇抜だが十分説得力もあって納得できる。
 演技者としては、今回のシーズンで出演場面のピークを迎えるマイケル・マッキーンが実に素晴らしい。ある意味ジミーの人当たりの良さに昔から嫉妬をしながら、その人格は認めようとしないチャックの心情や、ジミーを法曹界から追放したいという強い執着から、自分のローファームでも居場所を失ってゆく姿を、実にリアルに演じきった。
 また、ガスの古からの協力者で、マイクの金を洗浄してくれるドイツ系の大手企業のマネージャー、リディアとして、「真実を知る者/犯人はこの中にいる」「ロック・ネス〜湖に沈んだ謎」などのスコットランド女優、ローラ・フレイザーがブレイキング・バッドに続いて登場してくる。
 
 次のシーズンでは、さらにブレイキング・バッドの世界観に近づいてゆくだろう。ジミーが命じられた社会奉仕活動のなかで、娘に会いに行きたがっていた街のチンピラを助けてやる小さなエピソードが、ジミーからソウルへの架け橋として伏線となっているのだろうか?目が離せない。 
 次の第4シーズンまではすでに本国で放映されているが、シーズン5の撮影は若干遅れて今年から行われているようだ。

Season1,Season2 評はこちら>>
Season4 評はこちら>>
Season5/6 評はこちら>>

by 寅松