海外ドラマ

私は刑事ロボスコ 南イタリアの事件簿 シーズン2

南イタリアの昭和的セクハラ警察も、ロボスコ警視の活躍で変身か?

Le indagini di Lolita Lobosco Season 2
2023年 イタリア カラーHD 115~125分 全6話 Rai Fiction/Rai 1 ミステリー・チェンネルで放映
脚本:マッシモ・ガウディオーソ、ダニエラ・ガンバーロ、マッシモ・レアーレ 原案:ガブリエラ・ジェニシ 監督:ルッカ・ミニエロ
出演:ルイザ・ラニエリ、フィリッポ・シッキターノ、ルネッタ・サビーノ、ジョバンニ・ルデーノ、ビアンカ・ナッピ、ヤコポ・クリン、ジュリア・ヒューメ、フランチェスコ・デ・ヴィート、マリオ・スグエッリア、マウリツィオ・ドナドーニ ほか

 シーズン2も同じ監督なのに雰囲気が激変した南イタリアの女性刑事もの!
 シーズン1は、まず、イタリア人にも物珍しいのか、南イタリアのアドリア海に面したプーリア州のバーリを中心とした地域の観光ドラマとしての側面と、プロデュースした「モンタルバーノ 〜シチリアの人情刑事〜」で知られる名優ルカ・ジンガレッティさんが、自分の妻でもある美人女優ルイザ・ラニエリを主演に据えて、彼女の色気を存分に引き出そうという、美熟女刑事ドラマという2つの側面に重点が置かれていた・・・。

 ところが、なんだかシーズン2になったら全然イメージが違うぞ!?
 確かに、間にコロナの流行があって撮影などにも影響したのだろう、2021年のイーズン1からこのシーズン2までは2年も経っているので、感覚が昭和な南イタリアもいろいろコンプラ的変遷があったのだろうか??
 それにしても、監督も脚本家もシーズン2までは同じ(シーズン3では変わっている)なのに、違いすぎるよ!
 そもそも、オープニング・ロールからまるで違う。
 シーズン1なんて、婆さんたちのオレキエッテづくりと、ロリータのエッチなパンティが2階からひらひら飛んでゆく昭和エロ映像のマッチングですよ!それがシーズン2のなんと上品なこと。ロリータ(ロボスコ)の少女時代の思い出を、ノスタルジックに加工したホームビデオがメインでいやに垢抜けてる。

 ドラマのテイストの方も、随分と違ってしまっている。
 シーズン1の方で、ロリータ・ロボスコ警視(ルイザ・ラニエリ)といい感じになった年下の恋人ダニーロ(フィリッポ・シッキターノ)は、シーズン2では恋人同士で、同居を始めるかどうかに悩んでいる。バーリ所轄の女性蔑視は当然という態度の警察官を、いつもロリータが叱り付けていたのに、今ではみんなおとなしく、女性への配慮も当然の雰囲気だ!(笑)

 6話のイーズン2には、やたらに縦糸の物語も多い。
 もちろん、一番大事なのは、美熟女ロリータの恋の行方で、年下のやけにイケメンの恋人ダニーロとグズグズ悩んだ挙句に同棲を始めるが、それもつかの間、ジェーナリストのダニーロにスウェーデンでの仕事が舞い込み、遠距離恋愛ということに。今度はその間に長いこと行方不明になっていた、父親ニコラ(アルド・オットブリーノ)の助手だった若者でロリータの初恋の相手であったアンジェロ(マリオ・スグエッリア)がバーリの街に舞い戻り、心ならずも惹かれてゆく。
 もう一つは、父親ニコラが、ひき逃げされて殺された真相を突き止めるためのロリータ・ロボスコのサイドプロジェクトだが、これは最後の方でアンジェロの登場と繋がってゆく仕掛け。
 これだけでも十分だが、この他、脇役たちのストーリーも驚くほどしつこい。
 以前は、ロリータに嫉妬ばかりしていた、ロボスコの部下で相棒(ちなみに大学の同級生でもあった)アントニオ(ジョバンニ・ルデーノ)の妻、ポルツィア(クラウディア・レッロ)が大学に入ると言い出して、アントニオはまさに家庭の危機を迎えるが、ロリータにも後押しされてその自立をなんとか理解しようと成長するお話。
 さらには、ロリータの母親、ヌンツィア(ルネッタ・サビーノ)に昔から想いを寄せていた、一家の友人でバーリの八百屋さんトリフォーネ(マウリツィオ・ドナドーニ)が、ついにヌンツィアとの距離を縮める微笑ましい熟年ラスストーリーやら、ロリータの部下のエスポジート(ヤコポ・クリン)が、付き合っている警察車両のメカニック、カテリーナ(カミラ・ダイアナ)と母親(ドンナ・フリシニ)との間でキリキリ舞いをするストリーまで、余すところなく描かれる。
 
 ま、事件も毎回発生はするが、あまりに縦糸に時間を取られるので、添え物感は否めない。
 1話が、ダイビング中に死んだ恋人同士の、女性の酸素ボンベが一酸化炭素入りのものにすり替えられていた事件。2話目は、ヌンツィアと妹カルメーラ(ジュリア・ヒューメ)の民宿で中毒死者が出る事件。3話が、結婚式のあったホテルで、名門高校の女性教師が殺されていた事件。4話目は、教会内で殺された人望の厚い司祭が、美術品売買のブローカーと謎の取引をしようとしていた物語。5話目は、あやしいナイトクラブで働いていた赤毛の外国人女性が、惨殺された事件で、過去の女性殺人との関連が疑われ出す話。そして6話目が、評判の芳しくない劇団の主催者兼役者が稽古場で殺されていた事件である。
 正直言って事件の方も、警視殿の奮闘というより、なんとなく自然に解決してゆくような雰囲気だ。
 ただ、5話目の連続殺人者だけは、ナイトクラブに自ら赤毛のウイッグをつけて囮として出撃したロリータが、犯人に拉致されてあわや殺されそうになる事態に!
 もちろん、アントニオとエスポジートが駆けつける寸前に、ロリータ自らの一撃で、犯人は捕まってしまいましたがね・・。

 前シーズンでは、プーリア/バーリの名物料理がイヤというほど出てきたが、今シーズンは、ネタ切れなのかあまり珍しいものは出てこない。
 八百屋のトリフォーネが、絶賛するヌンツィアの得意料理のパルミジャーナは、揚げた薄切りナスとトマトソースを層にしてオーブンで焼く南イタリア全体に行き渡っている地元料理。そういえば、先日放映された、お隣バジリカータ州のドラマ「マテーラの検察官インマ・タタランニ」でも、インマの夫の実家で食べるシーンが出てきた。
 ヌンツィアとカルメーラの民宿で客の男が食事中に変死した事件で、食中毒か?と問題になったスカンマロ(Frittata di scammaro)というのは、アンチョビ、黒オリーブ、ケイパー、松の実などで味付けしたスパゲティをフライパンで焼いた、焼きスパゲティのこと。日本ではお店で出しているのは、見かけこともないが、ヌンツィアが「ナポリのおばさんのレシピよ!」という通り、プーリアではなくてナポリ料理である。

 シーズン3もあるそうで、そちらは監督なども違うので、今度は全く違うドラマになるのか?それも怖いけどね。

シーズン1の評はこちら>>
By 寅松