警視グレイス　シリーズ3

もはや陰気なダウンジング刑事（デカ）も、彼女ができてやる気刑事に早変わり！

　
　ジョン・シム主演のITVの人気シリーズ。地味に続いていてシーズン3が日本でも放映された。本国ではシーズン4も決まっているようだ。
　シーズン2までは、クリエイターであるラッセル・ルイス自身が脚本に携わっていたが、シーズン3からは、ベン＆キャロルのコンビ（1話と3話）と「コリンサツトンの事件簿」で知られるのエド・ウィットモア（2話）にバトンタッチしている。ディレクターは、最初から1作毎に違うのだが、脚本のせいか最初の陰鬱なダウンジング刑事（デカ）であった、ロイ・グレイスの人格がぜんぜん違う感じでスタートする。

　のっけから、新副総監就任パーティーに出かけようとするグレイスの家に、まな弟子格のブランソン巡査が尋ねてきて、「1杯飲まないとやってられねえっす！」と愚痴を・・。看護師の妻が、浮気をしている現場を見たのだという！
　仕方がないなあ・・という感じでパーティーに行くのややめて愚痴に付き合う優しいグレイス！ま、何れにしてもアリソンに代わって新しくグレイスたちの上司にあたる副総監（ACC）としてやってきたのは、グレイスの仇であるカシアン（サム・ホアー）で、そいつの着任を祝ってやる気はなかったのだ。

　しかし1話目では、なんと、その着任祝いを行なったホテルで、参加した女性客がレイプされる事件が発生する。しかも、そのレイプ犯は、全身黒いラバースーツを着込んで、ディルドウで暴行するという変わった手口で、一切証拠を現場に残していない一方、代わりに被害者の口紅を持ち去っていた・・。
　グレイスは、この手口を聞いて、自分も操作に加わった10年前の未解決の連続レイプ事件を思い出した。しかし、なぜか10年前の事件資料が、ごっそり警察の資料室から持ち出され、戻っていないことも判明する。
　グレイスは、当時はまだ捜査官の差別的意識もあり十分尽くされていなかった捜査を再びすることを決意。手口の違いから、捜査対象から外された同時期の女性失踪事件から突破口を見つけ出す。

　2話目は、ちょっと毛色が少し違う。無害そうな若者が恋人に、友達に渡してほしいと手渡された荷物を持って自転車で出かけると、事故に遭遇。あえなく死んでしまう。事故というのが、車が3台も関わる事故で、トレーラーや黒人女性が運転する乗用車も巻き込まれるが、事件のきっかけをつくった青いピックアップ・トラックは逃げてしまった。
　若者の所持品からドラッグが見つかり、一応事件は殺人を視野に入れて捜査されるが、トラックの運転手の手がかりを追うと、次々殺人が・・。
　若者は、ハーバードをやめてイギリスに来た若者で親はウォール街の会計士という話で進むのだが、（ーちょっとネタバレにはなるがー）最後のオチは急転直下、若者の母親がアメリカきっての犯罪組織（マフィア）を継ぐ娘で、息子の復讐のため元海兵隊員の殺し屋をイギリスに送り込んで、事故の関係者を全員抹殺しようとしていたとわかる・・・って、一体いつの時代のマフィアだ！
　イギリス人がアメリカのマフィアなどと言えば、この程度だと（つまり未開地の乱暴な野蛮人だと）思っていることだけはよくわかるが、これでは荒唐無稽もいいところだ。
　
　3話目は、地元ブライトンで人気が出始めた女性歌手ガイア（ヴィクトリア・エムズリー）が自宅で命を狙われ、本人の代わりに日系らしい女子ドラマーが撃たれる事件。さらに養豚場で人骨が見つかる事件が連続。
　この話も、養豚場近くのパブ経営者が失踪した事件に絡んでいると思われる、仮釈放中の金貸しギャングの存在、歌手のヒット曲パクリ疑惑、マネージャーの財務問題、ガイアの隠し子を、自分の子供だと主張しているクレイジーなファンなど・・いろいろ紛らわしい登場人物が出て来て、最後までなかなか真相がつかめない。
　これらの3話を通して縦軸としては、あれほど失踪した妻のことでウジウジしていたグレースが、監察医のクレア（ゾーイ・タッパー）と付き合いだして、なんだかウキウキに。アムステルダム警察からも手がかりがないと返答を受け、妻の捜索にみきりをつけて、裁判所で死亡手続きをとる記事が出ると・・・なんと妻らしき人物がブライトンに・・。

　ま、シリーズ4もすでに進んでいるので、この問題は最後にあっということになるんでしょうねえ？

シリーズ1の評はこちら＞＞

By　寅松