海外ドラマ

D.P. -脱走兵追跡官- シーズン2

韓国だけでなく、日本/世界も含めた全てのドラマと比べてもおそらくダントツに出来がいい!

디피/D.P.
2023年 韓国 4K 41〜64分 全6話 Climax Studio、Shotcake/Netflix Netflixで配信
クリエイター:キム・ボトン、ハン・ジュニ 監督:ハン・ジュニ 原作:キム・ボトン(「D.P.犬の日」)
出演:チョン・ヘイン、ク・ギョファン、キム・ソンギュン、ソン・ソック、キム・ジヒョン、チ・ジニ、チョン・ソギョン、パク・セジュン、ムン・サンフン、ペ・ナラ、チェ・ヒョヌク、コ・ギョンピョ、ウォン・ジアン、イ・ヨン ほか

 キム・ボトンのウエッブ・コミックを原作に、『コインロッカーの女』でデビューしたハン・ジュニが手がけた、韓国軍の体質とその現実を描くNetflixオリジナル作、待望の第2シーズン。シーズン1は、2022年の第58回百想芸術大賞で作品賞を始め3部門で受賞した事を見ても、現代・韓国ドラマの頂点と言える傑作だ。

 シーズン2も実にすばらしい。

 6話しかないが、最初の2話が、シーズン1のラストで、アニメおたく仲間のソクポンの事件をニュースで知ったキム・リル(ムン・サンフン)が、前線の部隊で発砲を起こした事件について描かれる。
 次の第3話は、もともとミュージカル俳優志望のトランスジェンダーの主人公ニーナ(本名:チャン・ソンミン)をミュージカル俳優のペ・ナラが演じた、映画なみのドラマ。
 その次は、南北非武装地帯の監視部隊という閉ざされた世界の中で起こった、地雷による事故死を再調査する中で、思ってもいなかった真相が浮上するホラー風の1話。
 そして残りの2話では、これまでポーカー・フェイスを貫いてきたアン・ジュノ(チョン・ヘイン)が周りも驚く行動に出る。
 最後の最後まで、ハラハラさせるだけでなく、それぞれの思いが視聴者を泣かせずにはおかない。ありがちなお涙頂戴ではなく、最後までクールに締めくくるのに、泣かせるあたり・・この監督の優れた資質と言えるだろう。

 今回は、最初から軍で起こる事件を隠蔽する総本山として、陸軍本部法務室長で准将のグ・ジャウン(チ・ジニ)とその部下で、実働部隊、検察部の准尉オ・ミヌ(チョン・ソギョン)が登場。法務部のジャウン部下としてソ・ウン(キム・ジヒョン)が登場してくるが、ソ・ウンは多くの目撃者とネット放送がされる中でのキム・リル射殺命令に躊躇した件で解任され、その後、弁護士として人権センターが起こした起訴の代理人となる。
 実は、ソ・ウンは、憲兵大将補佐官でジュノやパク・ボムグ(キム・ソンギュン)を助けて面倒な立場に追い込まれる大尉イム・ジソプ(ソン・ソック)の元妻であることが判明する。
 ソ・ウンを演じるキム・ジヒョンは、「39歳」で演じたジュヒのキャラクターとは 180度違うクールで容赦ない軍人/弁護士役を演じた。
 どこにでも顔を出すイメージのおじさん、チョン・ソギョンが演じるオ・ミヌは、「調査官ク・ギョンイ」で演じたキム部長タイプの、見た目貧相ながら冷徹で恐ろしい現場の軍検察(国防部検察団)幹部である。

 ハン・ジュニが共同監督として参加した、韓国配信プラットフォームwavveのドラマ「弱いヒーロー Class1」の主演の一人で、「ラケット少年団」「二十五、二十一」と青春もので頭角を現したチェ・ヒョヌクが、第4話「プルコギ怪談」の人格が変わってしまった1等兵としていい味を出している。

 大きな役ではないが、目を引いたのがミユージカル歌手を夢見るトランスジェンダー、ニーナ(チャン・ソンミン)の脱走とその悲しい顛末を描いた、ファンタジックな第3話「カーテンコール」で、彼が身分を隠して歌手として働いていたクラブの経営者ムン・ヨンオクを演じたウォン・ジアン。実は、ヨンオクはシーズン1の第3話、釜山での捜索対象ヒョンミンの恋人で、DPたちからまんまと金をだまし取って逃げるデパガであった。
 地元の違法業者集団に追われ、横丁に逃げ込んだアン・ジュノは、ヨンオクに助けられ意外な再会を果たす。キム・ゴウンに似たタイプながら、さらに肝の座った感じを出す、ウォン・ジアンの演技が印象的だ・・と、思ったら、このドラマで評判を得たのか?最新の地上波KBS2のゾンビ・コメディ「HeartBeat」(現在、Amazon Primeで視聴可能)では、テギョン(2PM)と絡む主演を勝ち取っている。

 もちろん、4話の主役、ニーナを演じたミュージカル俳優、ペ・ナラも素晴らしかった。この回のみエンディングでは、ペ・ナラが歌う、ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の挿入歌<Midnight Radio>が流れる。

 このドラマ以降、パク・ボグムを演じたキム・ソンギュンと、イム・ジソプを演じたソン・ソックも活躍の場を広げた気がしてならない。
 キム・ソンギュンの方は「賢い医師生活」では、ほんの端役だったのに、「39歳」の脚本家が書き下ろした2023年のJTBCドラマ「離婚弁護士シン・ソンハン」では、チョ・スンウを盛り立てる親友として主役級に。22年に公開した映画『奈落のマイホーム』では主役を演じた。
 ハン・ジュニの『スピード・スクワッド ひき逃げ専門捜査班』では、イム・ジソプと似たようなキャラの検事役を演じたソン・ソック。2019年の「恋愛体質〜30歳になれば大丈夫」では、オフビートなCF監督というちょっとした役だったが、「私の解放日誌」やDisney+配信の「カジノ」(シーズン1/2)では主役に昇格。韓国内ではCMなどでも人気らしい。

 最終回には、シーズン1で素晴らしい演技をした、シン・スンホとチョ・ヒョンチョルもカメオでちょとだけ顔を出すのも嬉しい。
 しかし、シーズン2が全て終わっても、未だアン・ジュノの除隊までは1年が残されている・・・これは、シーズン3の可能性を残しているのか・・・。

シーズン1の評はこちら>>

By 寅松

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