オンランシネマ

呪呪呪/死者をあやつるもの

可愛恐ろしい、美少女謗法師が帰って来た!しかし、この題名は!?

방법: 재차의/The Cursed: Dead Man’s Prey
2021年 韓国 110分 CJ ENM、Studio Dragon、キーイースト Amazon Primeで視聴可能
脚本:ヨン・サンホ 監督:キム・ヨンワン 
出演:オム・ジウォン、チョン・ジソ、チョン・ムンソン、キム・イングォン、コ・ギュピル ほか

 なんでこういうタイトルにするかなあ。多分、この映画だけ見た人には、意味不明なことが多過ぎるはずだ。
 本作は2020年にtvNで放映された(日本ではNetflxでも配信されていた)12話のホラー・ドラマ「謗法〜運命を変える方法〜」の続編、もしくはシーズン2にあたる「映画」である。まあ、どういう事情でシーズン2が映画になってしまったのかはわからないが、とにかくスタッフ、キャストも設定も繋がった2本の作品なのだ。韓国原題では、ちゃんと「謗法:ふたたび」となっているのだが、日本題と英題は、全く違う題名だ。
 先のドラマ版を見ていなければ、エンドタイトルがでかかった後に、証拠不十分で釈放になったスンイル製薬の会長の娘、ピョン・ミヨン常務(オ・ユナ)を、彼女の車のキーと名前の漢字名、写真でジニ(オム・ジウォン)とジソン(チョン・ジソ)の2人が脅せるのかもわからないだろう。
 ようやくこの映画がAmazon Primeで見られるのは嬉しいのだが、ドラマ版の「謗法〜運命を変える方法〜」は、Netflixでの配信が終了したらしく、今はHuluでしか見られないようで、ややこしい。

 イム・ジニとペク・ソジンの2人が対峙することになる相手は、ドラマと映画では違う。ドラマの方で2人は、IT企業フォレストの会長、ジョンヒョクに取り付いた悪鬼と対峙、その計画を阻止すべく力を尽くすのだが、映画の方では、その壮絶な対決から数年が経った設定である。

 もともと大手新聞記者であったイム・ジニは、今はドラマ版の方で「都市探偵」という探偵事務所をやっていた元警官のキム・ピルソン(キム・イングォン)と組んで、ネットニュースの配信会社「都市探偵」を運営し、ネット・ジャーナリストとして活動している。
 自著の宣伝のために出演したラジオ番組にかかってきた匿名電話が、彼女を指名し、「昨夜の死体による殺人の犯人だ」と告白したことから、話は思わぬ方向へと展開してゆく。実はその番組の1日前に、自宅で殺された人物とその加害者と思われる遺体が発見されるが、加害者の方は何年も前に死亡した人物だったのだ・・・。

 ドラマ版で片足が不自由な状態で、現場から離れるように何度も圧力を変えられていた刑事であるジニの夫、チャン・ソンジュン(チョン・ムンソン)は、その後人工関節を装着する手術をしたようで、今も現役で、この事件も彼が担当していた。
 夫の心配をよそに、言い出したら聞かないジニは、電話をかけてきた犯人を名乗る人物が指名した通り、ホテルの宴会場でインタビューを実行するのだが・・。男は「スンイル製薬のピョン会長の謝罪がなければ、キム・ミンソプ理事、イ・サンイン専務、ピョン会長を順番に殺す」と言い残して、捕まえようとした警察官たちの前で土くれに戻ってしまう。

 ジニが、超自然による事件にこだわるのは、ドラマ版の事件の後、行方不明になっているソジンへのメッセージでもあった。
 キム・ピルソンらが、調べを進めると、どうやらスンイル製薬は、米軍の生物兵器開発プロジェクトに協力して人体実験を請け負い、苦情が出なないことを見越して100名に登るホームレスや外国人を集め実験台にしていた。貝毒を元にしたその薬物で、被験者は全員死亡する事態になっていた。
 ドラマ版で助教授であった、民俗学者タク・ジョンフン(コ・ギュピル)は、教授に出世しているが、ジニたちの相談を受け、土人形によって死者を蘇らせる妖術は、インドネシアのものではないか?と推測するのだが・・。

 ホラー要素も強かったドラマ版に対し、この映画版は、アクション映画といってもいいほどアクション要素が優っている。スンイル製薬のミンソプ理事(チョン・ジェソン)を守ろうと、護送する刑事たちに対し、ものすごい数の霊能者デゥクンに操られるた死体=泥人形が追跡し、摑みかかるシーンは圧巻だ。

 ミンソプ理事は、あえなく殺されるが、ソンジュンを含む彼を警護していた警官たちは、呪いにより貝毒兵器の影響を被り、危篤の状態に。
 スンイル製薬の人体実験が行われたていた場所が、放置されている旧社屋の研究所であることを突き止めたジニは、「その場所の土で呪いの泥人形を作る」というタク教授の言葉から、スタッフ、ソンジュンの部下、ヨンス刑事(ヨン・ウジン)らとそこを訪れて、ただならぬ文様の結界を発見するのだが・・、やはり死者に襲われることに。
 危機に陥った時、満を辞して登場するのは、勿論、ジニを姉と慕う、ペク・ソジンである。
 ドラマ版で、まだ女子高生であったソジンは、今回は3年にわたり、自分の中の悪鬼を抑えるために世界を放浪した後という設定で、すこしお姉さんになっている。濃いめのゴスロリ・メイクもなかなか良い。
 しかし、日本で2年間巫女を体験したあと、中国の寺にいたはずなのに、ジニの窮地を感じとって突然の危ないところに登場するとは・・・、もはや完全超能力者だ。映画で時間がないとはいえ、少々登場が唐突である。

 あと、まあ、韓国人的には馴染みがないので、この程度でもOKなのだろうが、呪術師(チャド・パーク)その娘であるらしいジェシー(イ・スル)もインドネシア人には到底見えない。

 映画版のみの登場人物としては、臆病者丸だしのキム・ミンソプ理事を、チョン・ジェソンが熱演していた。「愛と利と」の高圧的な支店長。「検事ラプソディー」の最後にちょっと男気を見せるジニョン支庁長。「マイ・ディア・ミスター」では、主人公に敵対する社長にぶら下がる腰巾着的常務・・と、何れにしても悪になりきれない、気の弱い所のあるおじさん役では定評のあるバイプレーヤーである。
 ミンソプの上司で、最後には会社の秘密を暴露して自殺する専務イ・サンインを演じたクォン・ヘヒョは、このすぐ後のNetflixオリジナル、ヨン・サンホ監督作「寄生獣 ーザ・グレイー」に、キム・ピルソン役のキム・イングォンとともに、重要役柄で出演している。
 また、ジソン役のチョン・ジソは、2022年「ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜」で、主人公ドンウンのいじめ抜かれる高校生時代を演じた。
 
 ヨン・サンホの脚本は、ホラー要素が強くても、超自然要素だけに頼りすぎず、必ず人間側の犯した過ちをうまく入れ込んで、納得のいく結末を引き出しているところが、評価できる。
 「ソンサン -弔いの丘-」など最近作は、もう少し大人なテイストのドラマを描く傾向があるが、本作はキャラクター設定的にも、ヨン・サンホのルーツであるアニメの影響をダイレクトに感じさせるエンタメ作で、気軽に楽しめる映画といえだろう。

ドラマ版「謗法〜運命を変える方法〜」の評>>

By 寅松

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