海外ドラマ

アストリッドとラファエル 文書係の事件録 シーズン3

最後には驚きの展開!アストリッドは、父アンギュスの殉職の秘密に直面することに!

Astrid et Raphaëlle Season3
2022年 フランス、ベルギー カラー2:1 55〜105分 全8話  JLA Productions / France 2 AXNミステリーにて放映
クリエイター:アレクサンドル・ド・セガン、ローラン・ブルタン 監督:ジュリアン・セリ、フレデリック・ベアト、クロエ・ミクー
出演:サラ・モーテンセン、ローラ・ドヴェール、ベノワ・ミシェル、ジェン=ルイ・ガルソン、ウスキ・キアル、ジャン=ベノワ・スーリエ、ユベール・ドゥラットル、サイトウ・ケンゴ、ヴァレリー・カプリスキー ほか

 最近はNHKでも吹き替えが放送されているからか日本でも認知度があがり、本国では、近年稀に見る高視聴率ドラマ(なんと平均27%)に成長したクライムシリーズ!自閉症スペクトラムのフランス犯罪資料局・文書係、アストリッド(サラ・モーテンセン)と、暴走しがちな女性警視ラファエル(ローラ・ドヴェール)のコンビは、本シリーズも快調に事件を解決するが・・。

 まず本シーズンでは、のっけから文書係のアストリッドが捜査に加わっていることに、検察庁が異議を唱えて捜査から外されそうにな危機に陥る。
 天文学者が、天文台で落雷に打たれて死んでいた1話目のエピソードは、話が、「国家による宇宙兵器の隠蔽?」などいうあらぬ方向に進みそうになるが、その本当の謎を見つけ出したアストリッドの働きに感謝した仏大統領の取りなしで、なんとか捜査からは外されない処遇を得るのが・・。その条件としてアストリッドは、捜査官試験を受けて司法警察官として資格をとらねばらない事態に陥ってしまうのである。
 普通の受験者にとって難関である、警察官としての知識に関してはアストリッドはまったく心配がない。ただ一つの問題点は、圧迫面接を行う試験管たちの前での口頭試問に、自閉症の彼女が耐えられるのか?という問題である。
 しかし、この問題にも意外な味方が登場して、話はさらに複雑さを増す。
 司法警察アカデミーの教官アンヌ・ラングレーは、アストリッドを見て驚いた・・。実は、アンヌは殉職したアストリッドの父、アンギュス・ニールセンが生前付き合っていた女性で、アストリッドに引き合わせる直前に、本人が亡くなってしまったのだ・・。
 この繋がりは、さらに最終回(8話)で、次々殺されている路上生活者の事件の共通点を犯罪資料から探していたアストリッドが、父親の殉職した麻薬密輸事件との関係を探し当てたことで、大きく動き出す!

 そのほか毎回起こるのは・・・、修道院で発見された、「聖痕」がある死体の謎。カナダ先住民族で、フランスに移り住んだ部族の末裔である女性が発見した遺骨の真相。精神病院の閉鎖病棟で死んでいた男の、密室殺人のトリック。さらには、12歳の自閉症児だけが目撃者のパリ東駅での殺人やら、血液が残っていない吸血鬼に襲われたような若手写真家の死体をめぐる謎。幻の「青いバラ」の栽培に成功した天才的植物学者が、パリの植物園で殺された事件も・・。相変わらず、どの事件も凝りすぎていて、リアリティとして問題があるが、初期シーズンよりは謎解きが練られているように思える。

 ちょっと唐突ではあるが、最後の8話で突然登場する、父アンギュスが殉職した事件では、彼が所属してたのはBRB(組織犯罪捜査班)で、大企業アロエベラが薬物密輸に関係していたことを探っていたこと。逆にアンギュスを内偵していたアンヌ・ラングレーは、彼と深い関係になってしまったことが明かされる。アストリッドは、父が残した絵ハガキにあった「フェンリル(狼)」のキーワードを見つけ出し、証拠の出なかった密輸の謎を解き明かす。さらに、ラファエルが仕掛けたハッタリで、アンギュス殺害に協力した警察内部の内定者にたどりつくのが・・。
 悲しい結末ではあるが、最後にはアストリッドに腹違いの弟が存在することが告げられて、シーズン4へと続いてゆく。(シーズン4継続は決定している。)

 犯罪捜査とは並行して、気になっていたアストリッドとテツオ(サイトウ・ケンゴ)の関係は、アストリッドの主導の初キスというクライマックスも迎える。さすがに、(自閉症とまではいかないのかもしれないが)コミュニケーション障害の美女の恋を、世界に先駆けて2001年に映画『アメリ』で見事に描いたフランスだけあって、この描写は丁寧だ。
 ラブコメ要素の、ラファエルと、同僚ニコラ(ベノワ・ミシェル)の関係は、ニコラが若い恋人を作ったことでついに進展?ラファエルの告白で、「なんだよ!早く言ってくれよ!」とキレまくるのもおかしい。
 
 蛇足だが、NHKで放映している「吹き替え版」をちらりと見てしまって驚いた!なんだこりゃ!吹き替えが酷すぎだよ!
 NHKは、海外ドラマの吹き替えも、キャストには、それなりの役者を選んで、真面目に作っているのだが・・・、アストリッド役に貫地谷しほりを選んだのは、失敗としか言いようがない。(貫地谷しほり自体はいい役者だが、とにかく今回は残念な演技だ)演出の問題なのかもしれないが、正直、サラ・モーテンセンの自閉症を見事に表現した素晴らしい演技が、あの吹き替えでは台無しである。

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By 寅松