海外ドラマ

刑事アニタ〜ブラックサンド殺人事件

刑事モノというより、アイスランドの八つ墓村か!

Svörtu Sandar Black Sands
2021年 アイスランド カラーHD 60分 全8話 Glassdriver/Stöð 2 AXNミステリー・チャンネルで放映
クリエイター:アルディス・ハミルトン、ラグナル・ヨンソン、バルドヴィン・Z 監督:バルドヴィン・ゾーフォニエンソン(Z) 
出演:アルディス・ハミルトン、ソール・チュリニウス、コルベイン・アルンビョルンソン、アーヴァル・フィヨル・ベネディクトソン、アロンマー・オラフソン ほか

 アイスランドの風景がいい・・・、と言ってもこの舞台は少々特殊だ。アイスランドの南の突端、火山から出た玄武岩が砕かれてできた黒い砂浜で、世界的に有名な観光地「レイニスフィヤラ」を舞台にしている。「ブラック・サンド・ビーチ」として知られているので、ドラマの中でやたらに繰り返されるように、今では世界中から観光客が押し寄せているスポットでもある。
 死体の発見現場として登場するレイニスドランガルという奇岩も、超有名スポットだ。(だろうね)
 しかし、久々に参るほどかったるいドラマだった!
 
 物語は首都レイキャビクから、訳ありで生まれ故郷である地元へ転任になった刑事アニタ(アルディス・ハミルトン)が車で帰ってくるところから始まる。
 道すがら、地元の警察署長ラグナル(ソール・チュリニウス)と出会い、ちょうど発見されたばかりの旅行者の転落死現場を見ていくよう誘われる。2人は、昔からの知り合いのようだ。当然のように、アニタはラグナルと一緒に現場を訪れるが・・色々とヘンテコな状況があるのに、ラグナルは最初から「旅行者の転宅事故だから事件性はないだろう」の一点張り。現場には、アニタとも幼馴染(というか、血の繋がらない従兄弟であることがのちにわかる)の地元でただ一人の医師ソロモンも呼ばれて、検死を行うが、どー考えてもテキトーな雰囲気だ。
 出だしは良いのだが、この辺からどーもヘンテコなモヤモヤ感がただよって、長く引っ張られる。
 アニタは、最初から電話していて、母親が食事を用意して待ってるからと言っているが、ちっとも実家には帰りたくないらしくダラダラしている。ラグナルは、3年前に妻を亡くしてから、人が変わったようにやる気をなくした老警官だが、昔からよく知っているアニタには秘密があるようで、いつまでもモゴモゴしている。結局、今はアニタの母親エリン(ステイヌン・オーリナ・ステファンズドッティル)と付き合ってると言う話だが・・・。
 アニタの方も、実は小出しにどうやらレイキャビクで不倫騒動を起こして、左遷されてきたらしきことがわかるのだが・・・元彼に未練があるらしく、酔っ払ってくるとバスルームでおっぱいの見えるエロイ自撮りをして元不倫相手に送りつけたりする。そのくせ、地元で久々に会う男がりっぱになっていると、そちらにも目移り。
 おいおい!アイスランド女性が肉食系度が高いのか、この娘の問題なのか?そっちが気になってしょうがない。
 主演のアルディス・ハミルトンは、ちょっとブラックの血が入っているのか?浅黒い美人さんだが、とにかく体型は安産型。ちょっと日本人からは、すごくセクシーには見えないが、アイスランドでは受け取り方が違うのが、やたらにセクシーサービスカットも乱発される。うーん!

 1話のラストでは、突然、転落死した女性ウルリカの名前を呼ぶ、血だらけの女性レナ(アニア・パウスカ)が登場して、これはと期待させるが、その後も進展は遅い。正直8話も見るのが、大変疲れる。
 ストーリーに展開があれば長さは関係ないが、イメージ的にいうと前半5、6話分くらいまで、それぞれの人物の思わせぶりな隠し事や、わだかまりが表現されて、ドヨーンとした空気の進まないお話が展開される。もはや、アイスランドのツインピークス!?じゃないだろうな・・、心配になる展開。
 4話ぐらいになると、電話だけで登場することがないと思われていた不倫相手の家庭が突然登場。2人の子供がいて、強そうな肉食系妻スティッフィー(アンナ・グズムンズドッティル)の尻に敷かれているハゲ頭のデカ、グスティ(アーヴァル・フィヨル・ベネディクトソン)が登場して事件に加わる展開に。
 最後の2話分ぐらいで、今度は過去に登って、物語の背景あたりから説明されるのだが・・、それを後から言うの??なんだよ〜!

 古い写真などは見せられるが、結局説明されて初めてわかるのが、アニタの母親と、ラグナルの亡くなった妻ウナ(ジャナ・グズムンズドッティル)、ソロモンの母親ハットラ(クリスティン・リア)の3人は、引き取られたアニタの祖母に育てられた血の繋がらない姉妹で、もう一人の兄ダヴィド(パルミ・ゲストソン)とともに育てられているので、よーするに登場人物はみな一家!しかも、全員子育てが失敗しているらしく、アニタの母親エリンとソロモンの母親はともに子供虐待していた・・・。
 レイニスフィヤラは、アイスランドの八つ墓村だったのか??

 といういわけで、驚くほど手際の悪い捜査のおかげで、最後は犯人が野放しになっつて、犯人からの電話で居場所を突き止めて向かうのだが・・まさに予想通りの手遅れで、『セブン』ばりの惨劇になっているのでした!
 しかし、ほのめかしが多く、犯罪の根底にあるらしき虐待も、正直あんまりはっきりわからない。なんでも説明すればいいと言うものでもないが、いろいろ省略して想像に任せるなら、この長さは正直かったる過ぎである。
 早くから、家族から離れてしまった3人娘の兄であるダヴィッド(今は老人)が、何かの鍵を握っているらしき伏線もあるのだが、この人だけは母親の葬式が終わるとさっさと帰ってしまうので、惨劇にも遭遇しない!それでよかったのか?すごく疑問が残る。(ネタバレになるから言えないけど・・)この人、多分、彼のパパなんだよね〜〜!

 最後にはヘリを投入して、レイニスドランガルある海岸の光景を写すが・・それもさほど必要ない気がしてならない。
 主人公のアニタも、後から助っ人で参戦するグスティの方も、いずれにせよ刑事としてすごいところもなくて、本当に捜査も穴だらけてドタバタだ。もし、「教場」の風間公親がご覧になってたら、相当罵声を浴び失せられたであろう。

 ちなみに、アイスランドのこの人たちの世代の心の歌は、パティ・スミスの「ビコーズ・ザ・ナイト」だったの??うーん。