海外ドラマ

アンダン 〜時を超える者〜  シーズン2

タイムワープ的SF感は消えて、今回はそれぞれの思い出に入りこんで家族の選択を修正する?

Undone Season2
2022年 アメリカ カラーHD 22-24分 全8話 トルナンテ・カンパニー/アマゾンスタジオ Amazon Primeで視聴可能
クリエイター:ラファエル・ボブ=ワクスバーグ、ケイト・パーディ 監督:ヒスコ・ハウルシング
出演:ローサ・サラザール、アンジェリーク・カブラル、コンスタンス・マリー、ボブ・オデンカーク、カルロス・サントス、アルマ・マルティネス ほか

 アニメ「ボージャック・ホースマン」のラファエル・ボブ=ワクスバーグが主導する、全面ロトスコーピング・ドラマ・プロジェクトのシーズン2。
 シーズン1は、耳の障害だけでなく統合失調症の気があると思われている、主人公のアルマが自分の内部時間を旅するような感覚の物語で、サンアントニオの光景と相まってとても不思議なドラマではあった。
 シーズン2では、最後に光のドアに吸い込まれていったアルマ(ローサ・サラザール)は、目的を達して別の時間軸を生きている。
 前の時間軸では車の事故(自殺)によって、アルマが子供の頃にに死んだ父ジェイコブ(ボブ・オデンカーク)は生きていて、アルマ自身も大学の博士課程で研究者をしている。妹のベッカ(アンジェリーク・カブラル)は夫のリード(ケヴィン・ビグリー)に子供を急かされているが、以前の時間軸では同棲していたアルマの恋人サム(シッダルタ・ダナンジャイ)は、街で見かける赤の他人である。
 このシーズンでは、父親を自分の人生に取り戻したものの、家庭で時々父と言い争う母親カミラ(コンスタンス・マリー)のメキシコに残してきたらしき秘密を探ろうとアルマは力を尽くす。ところがなぜか、この時間軸ではアルマ自身のタイムワープ能力は不調をきたし、ベッカがなぜか能力を発揮する。アルマは、その行為自体に乗り気ではないベッカを説得し、母親の過去の秘密を遡ろうとするのだが・・・。

 残念ながら、前シーズンの取り柄でもあった精神病の人間の内面を旅するような不可思議なSF体験は鳴りを潜め、ほぼ様々な人たちの思い出に入り込むだけのタイム・ワープになっている。これだと、要するにそれぞれの登場人物の思い出の再現フィルムみたいなもので、SF感はとても乏しい。
 家族もそれぞれに秘密があって、現在のこじれた状況のもとになっているらしく、それを遡って解き明かしていくドラマになる。原因が解き明かされると、時間軸が変更されて過去が変わってしまう・・ところだけがSFだ。
 アメリカというかテキサスならではなのだろう。
 一家は今はアメリカ人だが、母親のカミラはメキシコからの移住したので、当然元の家族も、夫と出会う前の人生はメキシコにある。
 後半で、実はカミラの決断に大きな影響を及ぼしていたとわかる、ジェイコブの母親ジェラルディン(ホリー・フェイン)は、ユダヤ系のポーランド人。統合失調症と判定された心の闇のもとは、ポーランドの地にあった。
 ジェラルディン(そして子供時代のラウル:ヴェダ・シェンフェゴス)の内面を巡るグラフィックスだけは、統合失調症の記憶の中身を再現したものなのか、やや古めかしいシュール・レアリズム絵画調で見応えがある。

 最終的に、よくある家族物語になってしまったが、言いたいことがわかる話に落ち着いたことはたしか。タイトルである<Undone>は、まさにPC操作の中で現代では日常的に使う<Undo>コマンドの過去形だ。
 世界的な傾向だが、特にアメリカ人が強く信奉する、インスタントに体や人生を操作できるという考え(ーー例えばアメリカ人は、体の不調は、どのような種類のものであれ、薬を飲めば治ると固く信じていて、すぐに薬に頼るが、その他のことにも同じように対処しようとする傾向があるーー)が果たして何をもたらすのかを提起しようとしているのかもしれない。
 結局、何度Undoを繰り返したところで、完全に満足な人生なんてないのかも・・?ということか、最後は夢オチっぽく、アルマは以前の時間軸を取り戻しに帰ってゆく。

By 寅松

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