海外ドラマ

トランスプラント 戦場から来た救命医 シーズン1

シリアからの亡命移民医師が活躍する!カナダ版「ER」!

Transplant Season 1
2020年 カナダ カラーHD 40分 全8話 Bell Media CTV/NBCUniversal スーパー!ドラマTVで放映
クリエイター: ジョセフ・ケイ 監督:ステファン・プレジンスキー、エリック・カニュエル、ホリー・デイル ほか
出演:ハムザ・ハク、ジョン・ハナー 、ロランス・ルブーフ、アイーシャ・イッサ、ジム・ワトソン、トーリ・ヒギンソン ほか

 一言で言えばカナダの「ER」ではあるが・・。カナダ/トロントの架空の大病院、ヨーク・メモリアル病院のER救命センターで、戦場のシリアから亡命してきた若い医師、バッシュ(ハムザ・ハク)が活躍するお話。
 しかし、第1話(パイロット作)が、なかなか衝撃的だ。トロント下町の中東料理店で食事をしている白人男性に、ウェイターの男が近寄ってつぶやく「私を覚えてますか?」男が、ちらりとウェイターを見やって答えた瞬間、爆音とともに店全体が吹き飛んでしまう。テロかと思うが、テロではなく巨大トレーラーが店に突っ込んだのだ。
 店内の全員が負傷を負う中、先ほどのウェイター、バッシュは見事な手際で人々を介抱する。先ほど話しかけた男は、衝撃で脳内圧が亢進して危険な状態になっていることに気づいたバッシュは、すかさず近くにあった工事用の電動ドリルを見つけ、男の頭蓋骨に穴を開けて脳圧を下げる処置をしたのだ。
 後日、この男はヨーク・メモリアル病院のER部長、Dr.ジェッド・ビショップ(ジョン・ハナー )であったことがわかる。彼を助けたウェイターのバッシュは、本国シリアで医師をしていたが、戦火を逃れ難民としてカナダで生活していた。
 多くの人を救助し、病院で自らの手当うけて帰ろうとするバッシュは、帰りがけに、意識の戻った部長に会いにゆくように指示される。
 「君は、以前、私が面接し、雇わなかった。だが、もう一度やり直そう。まずは、自己紹介だ」
 
 一応、採用はされたもののバッシュの前には、弾圧されて逃げてきた本人の成績証明をシリアで発行してもらえと要求する、官僚的な病院事務。違法入国で送還されることを恐れ、警察から隠れようろする友人。ちょっとのことで、すぐに外国人入居者を追い出しにかかる非道な大家。トロントに馴染めないシリアから連れてきた幼い妹などなど・・、面倒ごとが立ちはだかる。
 しかし、驚くのはインターンとして働き始めたバッシュが、のっけらあまりに経験豊富で処置が的確なこと。バッシュの教育を任された美人研修医のマグス・ルブラン(ロランス・ルブーフ)も、当惑気味だ。

 1話ごとには、救急医師たちを手こずらせる難病、患者の秘密や家庭環境、どの医療ドラマでも取り上げられる問題が描かれるが、それぞれ、現代医療の取材や現場の調査が行き届いて、不自然なものや適当な描写はまるでない。医療制度の違いのために、何よりも治療費や病院経営の経費問題などが一番大きなウェイトをしめる傾向があるアメリカ医療ドラマとは違い、そのあたりが重大されていないところが、カナダらしい。
 また、カメラワークも非常に素晴らしい。

 全体を通してストーリー自体が、ものすごく新鮮だということは、もちろんない。
 医療ドラマは、膨大に作られているし、名作もたくさんある。しかし、何度も繰り替えさているが故に、ここのところ新しい医療ドラマは、登場人物のキャラクターに依存しがちで、基本的な部分がおろそかになる傾向があるように思える。
 もちろん、このドラマでもチームのそっれぞれのキャラははっきりしているし、そぞれぞれの秘めた人生も順次描かれて行くが、それぞれのキャラの個性だけに頼らずに済んでいると利点は、確実にある。
 主人公のバッシュは、シリア難民であるとともに自国では大変優秀な医師であったという特殊な人物。題名の<Transplant>には、医学用語としての「移植」という意味もあるが、植物の「移植」、人の「移住」にも使う言葉である。
 まさに違う土地で再び生きようとする人間を描く、移民問題、カルチャーギャップ問題が、医療とならぶ並列テーマとして扱われるドラマであるのだ。

 バッシュを演じた、ハムザ・ハクは、サウジアラビア生まれで両親はパキスタン人だが、自身も9歳でカナダに移住した俳優。博士号を持つインテリで、本作のアドバイザーも務めたらしい。自身も、この役は本来ほんもののシリア人が演じるべきだとは言っているが、その演技はなかなか素晴らしく、この役でカナダのスクリーンアワードの主演男優賞を受賞している。
 
 カナダ本国ではすでにシーズン2が放映された。

By 寅松

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