オンランシネマ

エクストリーム・ジョブ

韓流だが中身はアメリカン・コメディ!最後の対決は、なんと韓流マカロニ調!

극한직업/Extreme Job
2019年 韓国 111分 アバウトフィルム、ヘクリム/CJエンタテインメント Netflix、Amazon Primeほかで視聴可能
監督:イ・ ビョンホン 脚本:ムン・チョンイル、ペ・セヨン
出演:リュ・スンリョン、イ・ハニ、チン・ソンギュ、イ・ドンフィ、コンミョン、シン・ハギュン、オ・ジョンセ ほか

 監督がイ・ビョンホンという人物だが、あの有名な韓流スターとは無関係、同名異人だ。韓国のコメディ映画だが、アメリカンなテイストがある。ブラックというほどでもないが、張り込み捜査のための偽造営業がどんどん繁盛してしまい深みにはまるというのは笑えるアイディアだ。

 ソウルのどこかの署。班長のコ・サンギ(リュ・スンリョン)以下、総勢5名の麻薬捜査班は、日夜派手な捜査を繰り広げるも、使い走りの常習者一人逮捕するのに苦労するほど要領が悪い。ようやく追い詰めたら、交差点で16台もの交通事故を起こし、取り逃がしそうになった犯人は自分からスクールバスに轢かれてたまたま捕まったというほど・・。要するに、アタマの悪い連中だ。

 当然ながら署長からは大目玉で、もはや班の存続が危機に瀕して居る。そんななか、着々と成果をあげる強行犯係のチェ課長(ソン・ヨンギュ)から横流ししてもらった情報は、どうやら麻薬を扱うヤクザ組織の大物イ・ムベ(シン・ハギュン)が出所して街に戻り、組織を再結集して大掛かりな取引を始めるだろうという話。
 麻薬捜査班は総出で、イ・ムベが潜伏して居るらしいビルの見張りを始めるが・・、なかなか相手は姿を現さない。
 ちょうどそのビルの向かいの寂れたフライドチキン店「兄弟チキン」に、5人は陣取って張込みを続けて居るのだが、やる気の失せた店主は、あまりに客が来ないので店を売りに出したと告げる。しかも、向かいのビルのヤクザたちは、店からの出前をよく頼むお得意様らしい。慌てた捜査班の一番の若手、キム・ジェホン (コンミョン)は、店を「お、俺が買います!」と言い出す。後に引けなくなったコ班長は、妻に内緒で退職金の前借りをして店を買い取るのだが・・・、これまで一度も来なかった客が、度々店を覗く!その度に捜査資料を隠したりと大慌ての捜査班は、いっその事偽装で形だけの営業をしようと思い立つのだが・・・。
 
 ストーリーは予想の範囲だが、捜査班のキャラクターもさほど嘘くさくなくて、最後の方で個性が小出しになってくるところは良い。紅一点のチャン・ヨンス(イ・ハニ)を含め、全員無骨で料理店などには向かないが、なぜか実家が焼肉屋でオツムが弱めのマ・ポンパル(チン・ソンギュ)が絶品のチキンを作り出したり、家庭でも妻に頭のがらないコ班長が娘にだけは慕われているのかと思えば、金づるのように扱われていたりと、細かい部分も印象に残る。
 店が繁盛してしまって、このままでは捜査ができないと、料理の価格を大幅に上げて、「こんな値段のチキンを食べにくる客はいない!」と一息つくと、この値段の高さがSNSで話題になり、富裕層がどんどん来店、日本人観光客のツアーにまで組み込まれて、全員が「いらしゃいませー」と挨拶するところは爆笑だ。

 いろいろあって、結局大立ち回りになるというのは、まさに完全に定番の展開なのだが、面白いのはもう一つどんでん返しが残っていること。
 どう見ても、この5人では、2つのいかついギャング勢力に皆殺しにされる!と見る方も心配になるのだが・・・実はこの5人、頭は悪いが腕っ節の方は最強だったのだ!強行犯係の方がヤクザには勝てないレベルなのに、常に本気で殺そうと向かってくる中毒患者を扱っている麻薬捜査班は別格らしい。

 セクシーな体型だが、ガサツで恐ろしいヨンスを演じるイ・ニハは、元ミス・コリアでモデル出身の美人さんだが、ふてぶてしい雰囲気をうまく出している。
 韓国映画にしては、なかなか音楽がいいのもめずらしい。
 班長とイ・ムベの対決シーンでは、音楽はマカロニ調になる遊びも。エンディングでは、ほぼブラスロックのエンディングテーマ〜このマカロニ調のリフレインが!

エンディング・テーマ

 『ゴールデンスランバー』の韓国リメイク版や、『国家が破産する日 』などの音楽を手がけたキム・テソンが、遊び心のあるBGMをつけている。

By 寅松