海外ドラマ

キリング・イヴ/Killing Eve シーズン2

ハイテンションな展開で時間を忘れさせる!美少女サイコパスと韓国系おばさんのスパイ・ブラックコメディ!

Killing Eve Season2
2019年 イギリス/アメリカ カラーHD 41~55分 全8話 Sid Gentle Films / BBC America WOWOW、AXNミステリーにて放映 U-NEXTで配信
クリエイター:エメラルド・フェネル 他 原作:ルーク・ジェニングス 監督:デイモン・トーマス、リザ・ブリュールマン、フランチェスカ・グレゴリーニ
出演:ジョディー・コマー、サンドラ・オー、キム・ボドゥニア、フィオナ・ショウ、オーウェン・マクドネル、ショーン・デラニー、ヘンリー・ロイド=ヒューズ、ジャング・サン・デン・ホランダーほか

 圧倒的な問題作として登場した、このドラマが日本では一向に人気が出ないのは、おそらくストリーム配信がマイナーなU-NEXTの独占になっているからだろう。ちょっと残念だ。ともかく怪作であったシーズン1から、クリエイターも監督も変わったが、フィービー・ウォーラー=ブリッジが作り出した世界観は、一応維持されている。
 シーズン2は、衝撃的なシーズン1(シーズン1の評論はこちら)の最後、パリのアパルトマンのベッドの上で、イブ(オー)がヴィラネル(コマー)をナイフで刺した30秒後から始まっている。すぐに組織(トゥエルヴ)の掃除屋(事後処理チーム)が現れるが、イブは動転しながらその連中をかわし、なんとかロンドンへ。一方刺されたヴィラネルも、ようやく逃げ出し、タクシーの運転手を脅して病院にたどり着いて手当を受ける。一応の手術を受けたのちに、交通事故で顔が半分吹っ飛んだ少年を使って、なんとか脱出に成功。生きる希望もない少年(ピエール・アトリ)を優しくだいて首をへし折っちゃうのは、ヴィラネルなりの優しさか??
 シーズン1の最後でキャロリンのチームをクビになっていたイヴだが、「事情が変わった」と言われ、今度はMI6の特捜チーム迎えられる。そこでイヴはヴィラネルとは手口が違う暗殺者の仕業と思われる、巨大IT企業のオーナー、アリスター・ピールの暗殺を調べることに・・。医療の知識があり、誰からも目立たずに仕事をやり遂げる。「ゴースト」とイヴが名付けた新しい暗殺者。「新しい女だわ・・ヴィラネルがブチキレる」とイヴも少し嬉しそうなのがおかしい。キャロリンは、イヴをロンドンの隠れ家にかくまっているコンスタンティン(ボドゥニア)に合わせる。ヴィラネルに撃たれたが、死んではいなかったのだ。
 一方、ヴィラネルはフランスに旅行にきていた間抜けそうな一家の車のトランクに入り込み、イヴを追いかけてイギリスに渡る。しかし、その一家の車がたどり着いた郊外で、騙せると思って取り入った佗しそうな中年男ジュリアン(ジュリアン・バラット)は、屋敷で認知症の母親を監禁しているサイコだった。傷が悪化する中、なんとかジュリアンを殺して逃げ出すと、今度は、トウェルブの新しいハンドラー、レイモンドに捕獲される。
 レイモンド(エイドリアン・スカーボロー)は、ヴィラネルに新しいホテルの部屋を用意して、簡単な仕事をさせるが、ヴィラネルはこの男が気に入らない。レイモンドは、トウェルブも新しく登場した殺し屋を高く評価していて、MI6がその女を追っている。イヴももうお前には興味はない・・と言ってのける。
 一方ヴィラネルからのサインに気づいたイヴは、MI6の保護対象になっているコンスタンティン家族の居場所を調べて、コンスタンティンからヴィラネルの隠れ家を引き出そうとするが、突入部隊を率いてホテルに乗り込むと、寸前にヴィラネルはコンスタンティンに連れ去られていた。

 このシーズンでは、エッジな深みと怖さが後退し、若干わかりやすくなったイメージはあるものの、ストーリー的にはスピーディーで予想不可能。そして見所は、これまで完全に完璧なサイコとして描かれてきた、ヴィラネルも窮地に陥り、若干人間的な部分を見せるところだろう。いずれにしてもキュートで、かっこいい。ジュディ・コマーは、本シーズンでエミー賞の最優秀女優賞を受賞した。
 殺しの派手さはあいからわずで、特にコンスタンティンと逃げ出したアムステルダムで、飾り窓地区(売春宿街)のウィンドウの一つで外に見せつけながら、アニメちゃんのお面+セクシー衣装で、変態浮気男をハムのように吊るして殺す場面はグッとくる。
 ヴィラネルとレイモンドはフリーとなって仕事をし始めるものの、結局は裏で暗躍するキャロリンに雇われて、イヴがたどり着いたアジア系の寡黙な殺人者ゴースト(ジャング・サン・デン・ホランダー)の口を割らせることに協力。その依頼主であるアリスター・ピールの息子アーロン・ピール(ロイド=ヒューズ)の狙いを探るために、ヴィラネルが潜入することに同意する。このアーロンというキャラが、またもやヴィラネルに匹敵するほどのあくどいサイコパス性格で、二人の息が合ってしまうところはブラックだ。

 シーズン1ではおずおずとしたアジア系の雰囲気と熱中すると引き込まれてしまう、隠れた情熱をもつ女、イヴを演じていたサンドラ・オー。このシーズンではさらに一歩踏み出して、ヴィラネルと共鳴してしてしまうような深層も表出する。韓国系のおばはんは、普通こういう格好しているなあという、ホテルの清掃係の制服は完全に似合うが、セクシーなドレスで夫の学校に現れる姿は、奮発した松任谷由実のようで爆笑を誘う。このギャップを意図的に見せつけるのが狙いだろう。
 前シーズンでは、あまり人格がよくわからなかった優しいだけのポーランド系の夫、ニコ(実はアイルランド人俳優のオーウェン・マクドネルが演じる)も、今回は学校で言い寄ってくる女教師もいて、出番が多い。イヴとヴィラネルの因縁の関わりに振り回されて、被害が及んでくるのは本当に気の毒だ。
 音楽のテイストは、変わらずだが、<Unloved>によるオリジナルの比率が高くなったようだ。オランダの60年代のアイドル、ウィルケ・アルベルティの曲<Vlinder van een zomer>や、カナダの夫婦ユニット、ポピー・ファミリーの71年のヒット<Where Evil Grows>、トルコの歌謡曲などが使われてはいるが、あまり有名な曲は使われていなかったようだ。

 ともあれ、ラストにはまたもや新しい衝撃が!って、すでにシーズン4までは決まっているので、これで終わらないのは誰でもわかりますがね。 

by 寅松

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