海外ドラマ

ロンドン警視庁コリン・サットンの事件簿〜連続殺人鬼リーヴァイ・ベルフィールド

現代的捜査手法の出発点になったらしき、連続殺人犯の捕獲劇!

Manhunt
2019年 イギリス カラー 46分 全3話 ITV Studios/ITV AXNミステリーにて放映
クリエイター:エド・ウィットモア 原案:コリン・サットン 監督:マーク・エヴァンス
出演:マーティン・クルーンズ、ケイティ・ライオンズ、クローディー・ブレイクリー、スティーブン・ワイト、ステファン・ロードリ、カーラ・テオボルド ほか

 2000年代のはじめの、リーヴァイ・ベルフィールドによる連続殺人の捜査過程を綿密にドラマ化したドキュメンタリー・ドラマである。物語は、2004年8月19日、南西ロンドンの広大な公園、トゥイッケナム・グリーンで22歳のアメリ・ディラグランジュの遺体が、頭をハンマーのようなもので殴られた状態で発見されるところから始まる。コリン・サットン警視は、本庁から電話を受け、この事件の上級捜査官として呼び出された。<Senior Investigating Officer>上級捜査官は、おそらく日本で言えば帳場を管理するキャリア組の「管理官」のような制度だろう。

 真面目すぎる性格のサットン捜査官は、上司から受ける様々な圧力や、上司が捜査班に送り込んだその腰巾着警部の邪魔に屈せずに事件を解決に導く。当初から、サットンや部下は、この事件が周辺で起きているいくつかの女性殺害事件とつながる可能性を感じ取っていたが、それぞれすでに捜査を進めて、起訴はしていないが犯人と思われる人物を特定しているケースもあり、「連続殺人」に話を広げたくないのが上層部の思惑だったのだ。

 事実を扱うドラマは、特に誰の視点で描かれるかによって、雰囲気は大いに変わる。
 このドラマは、そもそも日本語タイトルに「コリン・サットン」の名前が入っていることからもわかるように、サットン上級捜査官の目を通した物語である。なにせ、実在のコリン・サットン自身が原案に協力しているので、当然と言えば当然だ。犯人ベルフィールドの人格は、粗暴で、女性差別主義者で、若い女に執着する変態としか描かれていないが、警察内部の様々な事情や、捜査や起訴に至る過程は大変丁寧に描かれている。
 サットンの妻、ルイーズは、ロンドンの隣サリー州警察の分析官で、ベルフィールドの連続殺人が過去のサリー州での事件にも及び始めると、その情報を巡って家庭内でも不和に発展するところが、リアルだ。妻は、「田舎警察だとバカにしてるでしょ!」などと怒るが、ロンドン警視庁との差は大きいのだろう。サリーはロンドンの南部の郊外で、とても裕福なイメージがあるので、そのままとは言えないが警察の雰囲気では、埼玉県警と警視庁くらい違うのではないか?
 話がそれるが、2006年の古い作品だったので取り上げなかったが、AXNミステリーで同時期に放映された60年代の連続殺人を扱った実話ドラマ「悪から目を背けて〜英国最凶ムーアズ事件」は、事実の掘り下げがいまいちでピンとこないドラマだったが、60年代のマンチェスター警察がいかに粗暴で、時代遅れだったかをよく描写していて、そこは面白かった。まさに名作「ライフ・オン・マーズ」で描かれた通りに、威圧的で、勝手な刑事しか出てこない!

 もう一つ、このドラマが今までの刑事ドラマと大いに違うのが、捜査過程がリアルに描かれていることだろう。
 2000年代初頭は、それまでの昔ながらの捜査方が近代的な手法に変わった過渡期であったことが、このドラマでよくわかる。妻が薦めるデータベースを活用した分析などには、あくまで消極的なサットンだが、この時代に普及し始めた街頭のCCTVの活用には実に積極的で、捜査班のなかの大きな人員をカメラ映像分析に当てる。まさに現代では当たり前の捜査手法だが、この時代には防犯カメラごときに人員を裂きすぎると批判されたりしたりするのも興味深い。
 犯人を特定した後も、監視チームを要請して動向を監視したり、確保に動いた後も、(日本と違って)72時間しか拘束できない中で決定的証拠を探し、細かい積み上げでようやく検察の方から起訴の承諾を取り付ける過程などは、これまでの警察ドラマとは一段違うリアルさである。

 イギリスでは本作は非常に視聴率もよかったようで、ITVはセカンド・シーズンを進めており現在製作中の模様である。

シーズン2の評はこちら>>

by 寅松

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