オンランシネマ

デッド・ドント・ダイ

注:現代の映画だと思って見たら憤死します!閲覧注意!

The Dead Don’t Die
2019年 アメリカ 104分 アニマル・キングダム/フォーカス・フィーチャーズ Amazon Primeで視聴可能
監督:ジム・ジャームッシュ 脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントン、クロエ・セヴィニー、イギー・ポップ、トム・ウェイツ、 ダニー・グローヴァー、セレーナ・ゴメス、RZA ほか

 オフビート・コメディの巨匠、ジム・ジャームッシュが監督した話題のゾンビ映画が早くもアマゾンで配信されている。しかし、迂闊に普通の映画だと思って見たら「憤死」するレベル!よほど温かい目で見てあげないと苦しいでしょう。(笑)
 「ウォーキング・デッド」登場以来、世界の映像業界ではゾンビブームは、いまも継続中と言っていいだろう。海外なら映画の『ショーン・オブ・ザ・デッド』、ドラマの「Zネーション」「フリーキッシュ 絶望都市」。日本でも、ヒット作『カメラを止めるな!』はゾンビ映画だし、TVでも、小芝風花の茨城訛りが素晴らしいかったテレ朝系の「ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ」や、NHKが小劇場の作家、櫻井智也の作品をドラマにした「ゾンビが来たから人生見つめ直した件」など、なかなか出来のいい作品も生まれている。(もちろん、日テレ+Huluの「君と世界が終わる日に」のような酷いドラマもありますが・・。)
 これらすべての作品に共通するのは、現代の視点でゾンビの恐怖を再解釈して、新たな視点を組み込んだ物語だという点。しかーし、巨匠は全く立ち位置が違います。
 この人は50年代、60年代の懐かしのB級、C級ホラー映画が大好きだったに違いありません。今どきの新たな解釈のゾンビものなんて、「クソくらえ!」と思っているのでしょう。(そうとしか思えません)
 というわけで、雰囲気も、展開の緩さも、スピード感も50年代、60年代のままの到底現代の映画とは思えない1作を作ってしまいました。それが本作。

 しかし、とにかく、出演者が豪華。昔からこの人の映画はそうですが、俳優だけではなく音楽関係者が多く出演しています。田舎町、センター・ビルの警察に努める3人、ロバートソン署長、ロニー、ミンディは、ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、クロエ・セヴィニーという豪華版。さらにゾンビとして、最初に登場するのはイギー・ポップさん!町の葬儀屋を買い取った女主人で、道場で金ピカの仏像にお辞儀をして、日本刀を振り回している謎の人物(ゾンビの頭も次々ぶった切る)ゼルダにティルダ・スウィントン。森に住む世捨て人、ボブにトム・ウェイツ。金物屋のハンクにダニー・グローヴァー。そのほか、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、 セレーナ・ゴメス、RZA、オースティン・バトラーなどなどは、皆音楽に関係のある出演者たち。
 どカントリーのテーマ曲を提供している、現代カントリー界の大物、スタージル・シンプソンも、ギターを引きずるギター・ゾンビとして登場。この人の、現代とは無関係なテーマソングは、なかなかです。
 
スタージル・シンプソンのテーマ曲

 この豪華な身内的キャストが、ジャームッシュ監督の映画で実に楽しそうに演じています。多くの人は人生で一度はゾンビになってみたいのでしょう。
 内容は、バカらしくて説明する気にもなりませんが、米政府がエネルギー開発のために行った極点地域での水圧破砕作業により、地球の地軸にズレが生じて、昼夜のバランスが崩れ(なんの関係があるのか)世界中で死者がゾンビ化するとう設定。
 話はないようなもので、細かい、オタク的な笑いが積み重なる展開には、世界最低の映画と言われたエド・ウッドの『プラン9・フロム・アウタースペース』や、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降のジョージ・A・ロメロ作品へのオマージュが存分すぎるほど組み込まれていますが、それが笑えるほどでもありません。

 昔のB級映画まんまののんびり感を味わいたい場合にのみお勧めですね。

By 寅松

日本語版トレーラー