海外ドラマ

サバイバー:宿命の大統領 シーズン2

危機連発すぎる大統領の立派さも、国民の立派な判断も、今はもう実在しないパラレルワールド・アメリカでの出来事?

Designated Survivor Season 1
2017年 アメリカ カラーHD 43分 全22話 ABC/Netflix スーパー!ドラマTVで放映
クリエイター:デヴィッド・グッゲンハイム 監督:クリス・グリスマー、ティモシー・バスフィールズ、レズリー・リブマン、フレッド・トーイほか
出演:キーファー・サザーランド、ナターシャ・マケルホーン、エイダン・カント、イタリア・リッチ、カル・ペン、マギー・Q、ベン・ローソン、ゾー・マクラーレン、マイケル・J・フォックス、キム・レイヴァー ほか

 地上波にありがちな運命なのか?シーズン1は確かにワンアイディアのあるストーリーだった。一般教書演説が行われている最中にアメリカの国会議事堂が爆破され、政権のメンバーも国会議員もほとんどが殺害されるというパニックの中、アメリカ大統領を引き継ぐことになったのは、ほぼ政治が素人の元教師、トム・カークマン(キーファー・サザーランド)。しかもアメリカに対する脅威が続く中、その捜査と政権を維持する戦いが続く・・・まではなんとか見られたのだ。
 しかし!シーズン2は、政権2年目を迎えたカークマンの活躍のお話に・・!事の発端は国家の転覆をはかる巨大陰謀で、ものすごい深刻な話なのに、思わせぶりな怪しい人物が次々出た割に、最終的には民間銀樹会社を経営して男、パトリック・ロイド(テリー・セルピコ)の単独犯行的な解釈で実に尻すぼみ。さっさと終わってしまうではないか?おいおい、大丈夫かよ!で、シーズン2の頭の方には、自分で死んでしまうこの男が仕掛けた罠が発動したりもするのだが、それも結局大した結果はもたらさない。最初のアイディアだけで、陰謀全体をどう決着させるかまで考えていなかったのがありありとわかる。
 そこで今度は、カークマンを襲うのは大統領職の危機だ。もともと「24 -TWENTY FOUR」+「ホワイトハウス」というアイディアだったものが、ホワイトハウス風の政治ドラマ部分が肥大してくる。カークマンを助けようとしゃしゃりでできた尊大な共和党の元大統領はなかなか腹黒いし、辛辣な政治記者が、政権の内部情報を暴露する。北朝鮮まがいの国やら、イランまがいの国やら、アフガンのテロリストやら、プエルトリコまがいの国やら・・・世界中から危機がアメリカを襲う。コロナウィルスを連想させる、新型のウィルスが南部でアウトブレイクするなんていう危機までおこるのだが、どれもこれも毎回1話の尺のなかで大統領の機転と、ウェルズ捜査官のスパイを超えた万能影武者としての活躍で収まってしまう。あまりにスーパーな大統領で笑うしかない。
 こんな立派な大統領なのに、国民の厳しさが半端なくて、カークマンは常に人々から批判されている。その上、単なる交通事故で妻を失い、一時は危機に瀕して精神もあやうくなるのだが、ちょうどよく、彼を支える天才女性科学者兼経営者アンドレアが現れるのだ。が、ななな、なんだー、こいつは!「24」でジャック・バウワーと最後は結婚する国防長官の娘オードリーを演じていた、キム・レイヴァーじゃないか!楽屋オチだろ!
 さらに、最後の方を盛り上げるために、よくわからない理由で弾劾されそうになるカークマンを追い詰めるのは、「グッドワイフ」のルイーズ・カニングそのままのキャラクターで登場する悪辣弁護士イーサン・ウェストの大物マイケル・J・フォックスじゃあないか!
 パロディとしては面白いが、まともなドラマとしては、トホホとしか言いようがない。しかし、すでにアメリカにおいて立派な大統領が、党派を超え、自らを犠牲にしてまでも、国民に奉仕するなどというストーリーは、SFかというほど現実からかけ離れたものになってしまった。
 アメリカの現実にいる大統領は、莫大な資産の脱税にしか興味がなく、科学を無視して、コロナウィルスで国民を21万人も殺し、しかも自らコロナのスプレッダーとなってイベントで人々に平気でウィルスを感染させている。さらにブラック・ライブ・マター運動が起これば、それを左翼のテロだと非難。逆に白人至上主義者を褒めたたえ、知事を殺害する計画を建てたテロリストを批判する代わりにその知事を非難するというキチガイとしか言いようのない行動を繰り返す。
 現実がここまでマンガチックに展開してしまうと、もはや政治フィクションなどといいうものの立場はないのかもしれない。
 結末は、えええ、そこで!というところで終わっていて、このままシーズン3がキャンセルなんて酷すぎるー!という終わり方だが、シーズン3は、正直見なくてもいいかもなー。

by 寅松

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