海外ドラマ

ゴースト ボタン・ハウスの幽霊たち

歴史ある屋敷を相続した若夫婦と、そこに住み着く幽霊たちの共存を描く、緩めのシットコム!

Ghosts
2019年 イギリス カラーHD 30分 全6話 Monumental Television/BBC One Amazon Primeで視聴可能
クリエイター:マシュー・ベイントン、サイモン・ファーナビー、マーサ・ハウ=ダグラス、ジム・ハウィック、ローレンス・リチャード 監督:トム・キングスレイ
出演:シャーロット・リッチー、キール・スミス=バイノー、マーサ・ハウ=ダグラス、マシュー・ベイントン、サイモン・ファーナビー、ジム・ハウィック、ローレンス・リカード、ロリー・アデフォペ、ベン・ウィルボンド、ケイティ・ウィックスほか

 住むところに困っていた、今時の若夫婦。しかし妻のアリソン(リッチー)は、突然、遠い遠い親戚の相続人として、15世紀に建てられた郊外のマナーハウスを相続することになった。弁護士は当然売却を勧めるのだが、2人は無謀にも自分たちで修理をしてホテル経営に乗り出すことを思いつく。
 しかし、そのすさまじく由緒ある屋敷には、幾世代にもわたりそこで非業の死を遂げた霊たちが、幽霊となって住み着いていたのだ・・。もちろん霊感のない2人には見えるはずもない幽霊だったのだが、アリソンは屋敷の2階の窓から落ちるアクシデントで意識不明の状態を脱した後、なんと幽霊たちが見えてその声も聞こえるようになってしまった。
 家を売ろうにも、間抜けな夫マイク(スミス=バイノー)は、法外な条件のローンを契約してしまい今更破棄はできない。仕方なく、2人は幽霊たちとの共同生活をする羽目になる・・。
 と、あらすじを書くと、定番ではあるが面白いコメディになりそうな予感はする。しかし、英国ものなので、反射的にモンティパイソンの突き抜けた笑を期待してしまうのだが、それだとちょっと肩透かしだ。どうやら、子供(穏やかなセックスネタは出てくるので、幼児もというわけにはいかないが)も含めたファミリーでみられる、ギリギリのシットコムを目指しているようだ。ドラマ制作のフレーム自体がそれを表している。
 主演の若夫婦を除く、屋敷に住み着く幽霊たちのほとんどは、コメディアンでクリエイターにも名前を連ねている。彼らは全員、2009年からBBCの子供向けチャンネルCBBCで放映されて5シーズン続いた、ミュージカル仕立ての教育コメディ番組<Horrible Histories>(日本で放映されていないが、訳するとすれば「本当にあった怖い歴史!」となるのは間違いない!)の出演者たちなのだ。テリー・ディアリーの出版したイラストブックを元ネタに、きれいごとではなかった歴史の裏話を、子供にもわかるように歌と芝居で解説した教育番組。ブラックな笑いではあるものの、ギリ子供向けというのがミソだろう。

<Horrible Histories>のファイナルソング

 メイン・ライターのマシュー・ベイントン(なりそこない詩人のトーマスを演じた)は、「もともとは大人向けのショウを作ろうとしていたけど、(ローワン・アトキンソンのコメディ)「ブラックラダー」路線で、(こっそり遅くまでおきているような)年長の子供にもアピールするとも考えた」と言っているようです。なるほど。微妙ですね。
 お屋敷と幽霊のドラマですが、現代イギリスの不動産、住宅事情をあらわにするドラマでもあるようで、特に最後の回で若い2人が別の家に移ろうと、業者の案内でいくつもの物件を内見するエピソードは笑えます。さすがイギリスなので、どんな大丈夫そうな物件でも、どこかに幽霊が居ついている!

 アリソンを演じたシャーロット・リッチーは、「コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語」(シーズン4から7)で知られる女優。マイク役のキール・スミス=バイノーも、ライターも務めるコメディの役者さん。
 夫の秘密を知って窓から突き落とされた、エドワード時代のボタン家当主ファニーを演じたマーサ・ハウ=ダグラス、ロマン派詩人のなりそこないトーマスのベイトン、90年代にセックス・スキャンダルの最中に死亡した国会議員を演じたサイモン・ファーナビー、この地にいた先住民の霊を演じるローレンス・リカード、80年代に事故で死んだ、ボーイスカウトの世話役パットを演じるジム・ハウィック、第二次世界対戦の士官だったキャプテンを演じるベン・ウィルボンド、魔女狩りで死んだメアリーを演じるケイティ・ウィックスらはいずれも、<Horrible Histories>の主要メンバーだった。
 英国では、ドラマはそこそこ好評だったようで、すでにシーズン3までが決定ていて、さらにアメリカ版のリメイクも決まったようだ。

by 寅松