海外ドラマ

ホームカミング シーズン2

脚本と見せ方がすごい!映像作品としては最上級のドラマだというべきだろう!

Homecoming Season2
2020年 アメリカ カラーHD 24〜37分 全7話 Amazon Video Amazon Primeで視聴可能
クリエイター/原作:マイカー・ブルームバーグ、イーライ・ホロウィッツ 監督:カイル・パトリック・アルバレス 撮影監督: ジャス・シェルトン
出演:ホン・チャウ、ジャネール・モネイ、ボビー・カナヴェイル、ステファン・ジェームズ、クリス・クーパー、ジョーン・キューザック ほか

 映画的な面白さの粋を集めたようなドラマである。アマゾン・スタジオのオリジナル作として期待された「ホームカミング」のシーズン2がAmazon Primeに登場した。出来たての新作だ。シーズン1は、何と言ってもジュリア・ロバーツが主演して、エグゼクティブ・プロデューサーも務めたことで話題となったが、評判のわりに人気は出なかったのかもしれない。シーズン2の方は、とっても地味な扱いで、全体の回数も7回とコンパクトにまとめられている。
 だからといって、シーズン1が面白くなかったわけでも、出来が悪いわけでもない!脚本も、ロバーツを含め出演者の演技ももちろん素晴らしいが、なんといってもキューブリック・オタクであったと自認す監督サム・エスメイルと撮影のトッド・キャンベルによる演出と映像はマジックと言っていいほどの素晴らしさであった。
 今回は、監督にカイル・パトリック・アルバレスが、撮影はジャス・シェルトンが当たっているが、この2人の力量が前シーズンにもまして素晴らしい。映画的な表現というものを熟知しているというか、見せ方も演出も抜群である。
 今回の話は、のっけからまったく方向も分からず先が読めない展開だ。森の中の釣り用ボートの上で目がさめる黒人の若い女。彼女は、携帯の着信音で目覚めるのだが、あわてて携帯を水の中に落としてしまう。周りを見回しても見覚えがない。それどころか、必死で湖のほとりに戻るが、自分が誰なのかも思い出せないのだ。
 警察官に保護された彼女は病院を抜け出し、自分を船の上に置き去りにした男を探し始める・・。
 一方ガイストでは、シーズン1の最後の方に出てきて、ホームカミング・プロジェクトの担当者コリンに責任を押し付け冷酷に切り捨てたアジア系の女が、パーティーの準備に忙しそうに動き回っている。視聴者にも、前シーズンの続きであることがここへきて初めてわかる。
 脚本/演出的に素晴らしいのは、最初の2話までは記憶を失ったヒロインが、自分を襲った男を追いかけてガイスト社にたどり着く話で、不安にかられる主人公(この時点では名前は、ジャッキーだと思っている)の視点で描かれるが、それが3話で事件以前の話に戻り、被害者だと思っていたジャッキーは実は男だと信じていたアレックス・イースタン(モネイ)という人物で、敏腕で悪辣な、訴訟回避請負人であることが判明するのだ。
 すごく冷酷無比に見えたアジア系重役オードリー・テンプル(チャウ)は、彼女の恋人であり、几帳面だが強引な人間ではない。その彼女が、上司であるコリンやロンを陥れ、開発新薬ローラーのプロジェクトを軍を利用して奪い取るのは、実は強気なアレックス後押しがあってこそなのである。
 もう一つの驚きが、ガイストの経営者レナード・ガイスト(クーパー)のキャラクター。シーズン1を見た多くの人が、自分は自然に囲まれた農場から、恐ろしい金儲けにも冷酷な指示を出している「悪者」に違いないと思い込んでるはず・・その先入観を見事に裏切り、むしろ自然を愛する飾り気のないいいオヤジとして登場するのだ。
 映像の工夫もシーズン1ほどの派手さはないが、一つ一つが素晴らしい。どのように繋いだのか映像からではわからない、手持ち撮影とドローン撮影のワンテイクなど、気をつけていると驚くようなシーンも出てくる。
 出演者では、何と言っても驚かされるのは主演のジャネール・モネイだろう。これまで、性別を超えた特殊なキャラクターで一つの世界観を作り上げた、シンガー/ミュージシャン/アーティストとして評価が確立しているが、このドラマで完全に役者としても十分な器量を有していることを世間に示した。
 シーズン1で素晴らしい演技を見せた、ステファン・ジェームズは引き続きウォルターとして登場。今回は自分のやり方で決着をつけようとする成長した姿を見せる。
 アレックスの神経質なアジア系の恋人で、もう一人の主役オードリーを演じる、ホン・チャウはベトナム系。2017年の映画『ダウンサイズ』、デヴィッド・E・ケリー制作の「ビッグ・リトル・ライズ」などで広く知られるようになった。
 ジェイソン・ボーンシリーズや『アメリカン・ビューティー』、『アダプテーション』などの名優、クリス・クーパーのガイスト氏もさすがに味がある。また国防総省のあくどい高官フランシーヌ・ブンダを演じたのは、ジョン・キューザックの姉、ジョーン・キューザックだ。

 どこへ行くのかわからないオープニングから驚くような展開を見せるドラマだが、過去と現在を前後して、納得がいく説明がされてゆく。そして最後は、さらにもう一段の驚きが待っている。
 最後の最後に交わす、ガイストとブンダの会話も実に映画的。心地よい余韻を残してくれる。

by 寅松