刑事ジョン・ルーサー シーズン5

アリス・モーガン・イズ・バック!大変だあ!

Luther Series5
2019年 イギリス カラーHD 120分 全2話 BBC One AXNミステリーで放映
クリエイター:ニール・クロス 監督:ジェーミー・ペイン
出演:イドリス・エルバ、ルース・ウィルソン、ダーモット・クロウリー、ポール・マッギャン、マイケル・スマイリー、ウンミ・モサク、エンゾ・シレンティほか

 BBCが手がける刑事ジョン・ルーサーは、非常に野心的な刑事ドラマで近年の刑事ものに大きな影響を与えた作品だ。ストーリーも、ドラマとしてのタッチもシーズンごとにややばらつきがあり、えっ?と思うような展開があったりして、その意味ではいろいろ批判もされているが、なんといってもイドリス・エルバがこの作品の成功で次期ジェームズ・ボンドに取りざたされるまでになったことを想えばいかに魅力的な作品かはよくわかる。とにかく、ルーサーはかっこいい!ロンドンっ子らしくちょっと長めのコートを翻して、まさに類人猿的にのしのしと闊歩する。
 マッシブ・アタックのアンニュイなテーマ曲にのせて、アフターエフェクトのパーティクル満載の動く絵画のようなオープニングも、2010年に登場した時はなかなか鮮烈で以降のオープニングの流れを作った感があった。
 シーズン1の始めは、ルーサー自身は神経衰弱の状態でスタート。どうやら、その命を助けられるような場面で、故意に凶悪犯の手を離してビルから落としてしまったことで葛藤がうまれたようだ。なるほど!内なる良心との葛藤で悩みつづける主人公なのかと思ったら、その後は全然そんなそぶりは見せない。シーズン2からは、やや性格が変わっている。
 とにかく、ルーサーは非常に官僚的な警察機構のなかにあって異質な存在だ。手続き通りの捜査にはこだわらず、手段を選ばず犯人検挙に取り組んでいく。腕っ節はすごいが、だからといって馬鹿な乱暴者でもない、教養も持ち合わせているし会話は面白い。なにせ最初の奥さんはゾーイは人権派の弁護士だ。
 ルーサーは犯人の心理に共感出来る特殊能力を持ち合わせているようで、捜査に関しては天才的だ。担当する事件は、これまた世界の先端、ロンドンだからこそ許されるようなとんでもなく変態で歪んだ凶悪事件。しかし、ルーサーはんほとんど迷いなくそれを解決してゆく。問題は、ルーサーには能力がありすぎて、事件だけでなく、他の厄介ごとも同時に抱え込んで、常に両方を解決しようと奮闘すること。そのために、ルーサーは必ず自分の周りの大事な人間を巻き込んで、次々失ってゆく運命も背負わされている。
 ルーサーは、必ずしも法律遵守にこだわっているわけではない。もちろんどうでもいいと思っているわけでもないが、倫理観というより独自の法体系を守ろうとしているように見える。無実の市民はもちろん、ルーサーは多少悪い奴だろうが、人殺しだろうが、なんとかなりうそうな人間なら少しでも多くの人の「命」を助けるという方針のようだ。犯罪組織だろうとなんだろうと、常に殺し合いを避けるオプションを探そうとする。それは官僚的なルールに従うことが最大の命題になっている現代人とくらべると、(差別的な表現かもしれないが)のしのし歩きの外見とも重なって、原始アフリカの部族長のような不思議な男らしさを感じさせにはおかない。それがルーサーの特別な魅力の一つなのだ。
 このルーサーに反応をしてしまったのが、13歳で大学に入り18歳で天文学博士号を取得した天才で、外見はモデル並み(もちろん演じたルース・ウィルソンは元モデル)のアヒル口美女。両親を、自分で殺害してしまったシリアルキラーでもあるアリス・モーガンだ。このアリスは、ルーサーにとっての最大の厄介ごとになる。
 ルーサーに恋してしまったアリスは、実質的なストーカーとなってしまうし、超頭がいいから実に厄介だ。ルーサーは初めは相手にしないが、逮捕はしない。アリスはルーサーのために罪をかぶったりと、危ういところで助けてくれる。次第に関係は怪しさを増して、シーズン3ではなんと2人一緒に海外逃亡?という場面で終わっている。
 日本では2時間の1話(本国では1時間2話)として2015年に放送されたシーズン4では、最初からルーサーは警察を休職して、海辺の崖の上に立つ別荘で隠遁生活をしている。しかもアリスが、盗品のダイヤを売りさばこうとしてベルギーで殺されてしまったという情報が入ってくのだ。それもそのはず。アリスを演じているルース・ウィルソンは、2014年に始まったアメリカShowtime配給の「アフェア 情事の行方」でブレイク。ゴールデングローブの主演女優賞を受賞してしまうので、イギリスに戻ってこちらに登場できるわけがないことは、だれの目にも明らかだった。今後、このシリーズがあるとしてもアリス抜きの展開になるに違いないと、多くのファンが思ったに違いない。
 で、忘れた頃のシーズン5が登場だ。驚いた。なにしろBBCさんも情報を制限しており、これがシーズン5の目玉だったことはあきらかだろう。予告編でも、最後の最後ちらりと顔がでるだけで、半信半疑にさせる演出。しかし、実際にはがっりとアリス・モーガンが戻ってきたのだ!こりゃ、大変だ!(笑)
 今回の殺人鬼は、これまでの中でもとびきりヤバい。その殺人手法には、一貫性が乏しくとんでなく残忍、防犯カメラが捉えた犯人は、顔が光に覆われていて見えない。黒いタイツのもじもじくんのような奴が顔を上げると、透明の仮面をかぶった顔の周りはLEDライトのテープで縁取りされ不気味に光っている。夢に出てきそうな奴だ。手がかりはほとんどないが、ルーサーは犯人は自分の患者かもしれないと通報してきた美人精神科医に目をつける。
 ルーサーの下に出世コースの腰掛として配属されてきた、黒人の女性巡査部長ハリディ(ウンミ・モサク)は、頭も良く思ったほど非協力的ではないが、更にもう一つのヤバい問題がルーサーを襲う!どうやら、ロンドンを牛耳るギャング、ジョージ・コーネリアス一味が誰かを探してるらしい。どうやら、嫌な予感に襲われたルーサーは、ジョージの手下を脅して、その話を盗聴させようとするのだが・・。そして、・・・突然に彼女は帰ってくるのだ!
 さすがに、登場した時点で20代だったアリス(ルース・ウィルソン)も37歳。小悪魔美少女も、多少おばさん化してはいるが、調子が出てくるとその格好良さは健在だ。今回も豪快にキラーぶりを発揮する!
 そして、やっぱそういう結末!!予想はしていても、とても悲しいのだ・・。
 本国では60分もの4回の放映だったようだが、日本のAXNミステリーは2時間もの2本として放送した。Netflixでは公開終了してしまったが、シーズン1~4までを公開しているHuluでは、5月24日シーズン5を公開の予定らしい。

by 寅松

 少し前に次のジェームズ・ボンドとして名前の挙がったイドリス・エルバ。実現すれば史上初の黒人ジェームズ・ボンドだが、むしろルース・ウィルソンに始めての女性ジェームズ・ボンド(ジェームズじゃないな、ジェーンかな:笑)をやってほしいのである。なにせ、ルースの祖父で作家でもあった、アレキサンダー・ウィルソンは元MI6の本物のスパイだった。人生に4回重婚し、7人の子供をもうけたアレキサンダーの人生は多くの謎に包まれているが、2018年には、この祖父とルースの実の祖母にあたる3番目の妻アリソンの関係を軸にしたTVドラマ<Mrs Wilson>がBBCで制作された。このドラマでルースは祖母アリソンを演じ、プロデューサーに名前を連ねている。アレキサンダー役は、「ゲーム・オブ・スローンズ」や「リッパーストリート」「ジャック・テイラー」のイアン・グレン。

【追記 2019/6/15】
 どうやら、ミセス・ウィルソン<Mrs Wilson>が、Super! Drama TVで放送される事が決まったようです!やるとしたら、AXNミステリーしかないと思っていたので意外です!(笑)全3話の実話に基づいたミニシリーズですのでお見逃しなく!

2019年7月17日(水)22:00より放送開始
くわしくは↓
http://www.superdramatv.com/lineup/SN0000001162.html

【追記 2019/8/1】
 放送されました!ミセスウィルソンの感想コラムはこちら>>