ロンドン 追う者たち、追われる者たち

黒人と美女のカップルが、それぞれ犯罪者と刑事の新感覚クライム・サスペンス!カップル版・キリング・イヴの登場か?

We Hunt Together
2020年 イギリス カラーHD 60分 全6話 BBC Studios/Alibi AXNミステリー・チャンネルで放映 Amazon Primeで視聴可能
クリエイター:ギャビー・ハル 監督:ジョン・ジョーンズ、カール・ティベット
出演:バボー・シーセイ、ハーマイオニー・コーフィールド、イヴ・マイルズ、ディポ・オラ ほか

 モリー・ウィンザー(「証拠は語る〜誰が母を殺したのか?」)が主演したITVのサスペンス<Cheat>の脚本を書いていた、若い女性クリエイター、ギャビー・ハルが手がけた、新たなサウペンス・ドラマシリーズ。制作はBBCスタジオで、英国内では傘下のAlibiで2020年に放映され、アメリカではShowtimeで放映された最新作だ。
 確かに、安直に訳せばそういうことになるだろうが、驚くほどセンスのない邦題に騙されない方がいい。「ロンドン 追う者たち、追われる者たち」では、まるで昭和初期の喜劇映画にか思えないが、ドラマは非常にキンキーでシャープ、一言で言えばカップル版の「キリング・イブ」と言った方がわかりやすい。犯人が被害者を狩る、刑事が犯人を狩る・・だけではなく、パートナー同士もお互いを本質を追求(Hunt)する話でもある。
 出だしは、少々ピンとこない状況だ。クラブのトイレでソープ係をしている実直そうなアフリカ系のババことバベニー(ディポ・オラ)は、若い女をトイレ連れ込んで、彼女に迫る、凶暴そうな男を見かける。男が若い女に無理やり薬を吸わせてレイプでもしているように見えたのだ。「大丈夫」と女に制止されて、その場では思いとどまるが、店の外で再びその女を男がレイプしようとしてるのを見かけて、男を殴り倒してしまう。すぐに去るように、女に言われてその場を立ち去るが、その男は数日後に自分のアパートでSM拘束具で縛られたまま、脳髄にナイフを刺された状態で見つかった。
 女の名前はフレディ=フレデリカ(コーフィールド)。セックス・チャットのサクラで生活している。殺されたサイモン(ナイジェル・ハートマン)に、しつこく迫られていたが、彼女にはそれ以外にも問題があった・・。
 移民とは言え、トイレのソープ係などという職業をしているババは一瞬不思議に見えるが、実は彼は難民申請中の身。自国のコンゴで、子供の時に家族を殺され少年兵として武装集団で虐殺の手伝いをさせられてきたという、まさにNetflixの映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』で描かれたような少年時代を過ごしてきた。今は、ロンドンでボランティアの老夫婦の家に寄宿して、労働ができないためにチップのみのこの仕事をしていたのだ。
 フレディは一目惚れしたようで、自分を助けてくれたババの元を訪れる。
 一方、まさに不自然な格好で殺された男の殺害現場にやってきた、仕事中毒のやり手女性刑事ローラ(マイルズ)。その前に、まるで素人のような風体でのんびりやってきた人のようさそうなアフリカ系の男が声をかける。「やあ、今日から相棒になる警部のジャクソン・メンディだ!聞いてない?」男が反汚職課から転属になったと聞いて、ますます絶望的な顔になるローラだが、彼女には実は仕事中毒になる心の痛みが・・。2人の子供と、弁護士の妻と中産階級的に幸せそうな家庭を営むメンディにも、次第に夫婦間の問題を抱えていることがわかってくる。
 フレディとババのコンビが成り行きで重ねてゆく殺人を、ローラとメンディの2人がしつこく追い詰める物語ではあるのだが、とにかくフレディ(実は本当の名前はリリーであった)のキレっぷりが見ものである。とてつもなく頭がいいが、その思考回路は実に独自で自己中心的。しかし、初めて出会ったタイプのババに惹かれていく姿は、可愛げがある。若いが『トリプルX:再起動』、『ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション』、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』と映画の実績もあるハーマイオニー・コーフィールドのフレディ(リリー)は、ジョディ・カマーのヴィラネルに次ぐキャラに成長する可能性も感じるほどだ。
 もう一人の女の主人公、「秘密情報部トーチウッド」などで知られるウェールズの女優、イヴ・マイルズが演じるローラも性格がネジ曲がっていて味があるキャラだ。この2人の対決には期待できる。
 一方、2人の男は両方ともロンドンで生きてはいるがコンゴとガンビアというアフリカの出身。両人共、許容力が非常に大きい男の度量はという点で頼もしいが、現代のイギリス人の男では、もはや難しいということかもしれない。
 ドラマの最後には、それなりに驚くような結末も待っている!

 音楽もセンスもいい。フレディは、年にはまったく似あわず60年代の音楽が趣味という設定なのだろうか?イギリスの最近の傾向なのだろうか?
 1話のエンディングにはカヴァー(Hannah Cartwrightによる)ながら、シュレルズが歌ったキャロル・キングの60年代の名曲「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」が唐突にかかって驚く。
 ちょっとだけ、ナンシー・シナトラの「にくい貴方」<These Boots Are Made for Walkin’>が流れたりするのは、まあありそうな気もするが、4話でフレディーがカラオケを熱唱して喝采を受ける曲が、ジーン・ピットニーが60年代にヒットさせた「心はいつも君のもの」<Something’s Gotten a Hold of My Heart>でびっくり!70年代のヒットメーカーとして知られるクック&グリーナウェーの曲で、確かに89年代にもマーク・アーモンドがピットニーとデュエットして再ヒットさせたが、それでも20代のフレディにははるか生まれる前の曲のはずである。

by 寅松

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