海外ドラマ

彼はサイコメトラー

あまりに多くの要素を盛り込みすぎの、SF・社会派犯罪ミステリー・ラブコメ・人間ドラマ!

사이코메트리 그녀석/He is Psychometric
2019年 韓国 カラーHD 65分 全16話 Studio Dragon JS Pictures/tvN Amazon Primeで配信(ただし、アメゾンでは「サイコメトリーあいつ(彼はサイコメトラー -He is Psychometric-)」表記で配信)
脚本:ヤン・ジナ 監督:キム・ビョンス
出演:ジニョン(GOT7)、シン・イェウン、ム・グォン、ダソム、ノ・ジョンヒョン、コ・ユンジョン、キム・ヒョジン、パク・チョルミン、サガン、イ・スンジュン、キム・ウォネ、オム・ヒョソプ、チョン・ミソン ほか

 韓流アイドルが主演でこのタイトルで・・・、期待して見始める視聴者が望むものとは、出だしはともかく最後はだいぶ違ってしまっている気がする。
 出だしはイメージ通りで、そうそうこんな感じでしょうと思っていると、だんだん登場人物の深刻な過去の秘密が明らかになってきて、風向きがおかしい!っと、思った頃にはかなりの嵐。気がつくと、とんでも無い場所にたどり着いちゃったぞー・・というドラマである。

 オープニングのCGも、出来自体はともかくイメージは二番煎じ。超能力である「サイコメトリー」を扱ったフィクションは、日本では漫画からドラマまでいくつもあるし、韓国映画にも『サイコメトリー 残留思念』(2013)があるから新味はまるでないだろう。
 しかし、出だしから高校生の主人公イ・アン(ジョナン)は、サイコメトリックとしての能力を発揮はしているもの、その見え方は不安定で、警察の捜査にはあまり役立たない。なるほど、「残留思念」が見えたからといって、必ずしも都合のいいものが見えるとは限らないな。「超能力の生育もの」というワン・アイディアかあ・・と思って見始めるが、最初の方はあまり似合わない制服を着て、高校生を演じるアンと、ほんのすこしふっくらした浜辺美波のようなシン・イェウン演じるユン・ジェインが、出会って協力する羽目になってゆく、定番の学園ラブコメである。
 そういう話なんだな・・と安心していると、なんと2話、3話で高校生活はおしまい。さすがに、似合わない制服で最後まで押し切らないのか?

 イ・アンのサイコメトリック(日本では「サイコメトラー」と呼ぶがこれは造語)としての能力は、彼の悲痛な子供時代の体験の後、覚醒したものだ。
 少し昔の日本の団地のような大規模団地のヨンミン団地に、警察官の父と母とでくらしてたアンは、団地の大火災によって両親を亡くしていた。停止したエレベーターから、アンだけを助け上げてくれた中学生くらいの少年は、今はアンと暮らしているカン・ソンモ(キム・グォン)で、検事として特殊捜査を指揮している。粗暴なソンモの相棒の女刑事ウン・ジス(ダソム)は、実は警察庁長官ウン・ビョンホ(オム・ヒョソプ)の娘で、警察内にあまり怖いものはないが、冷たいソンモには、首ったけ・・。11年前のヨンミン団地事件の担当が、父のビョンホであったことには、疑念を抱いている。
 一方、叔母オ・スクジャ(キム・ヒョジン)に引き取られ、子供の頃からなんども引越しをして苦労をしてきたユン・ジェイン。実は彼女の父はヨンソン団地の管理人で、大火災とその前に発生していた殺人事件の容疑者として収監されていたのだ。
 ジェインはその無実を信じ、いつか自分の手で真相を暴くことを心に決めていたのだが・・。

 3話の終わりに行方不明になった、ジェインは数年経って女性警官になっちゃってる。イ・アンは、警察学校を受験しているが、頭が悪すぎ。アンの親友のイ・デボン(ノ・ジョンヒョン)は、ガススタの社長業を、高校時代にデボンがぞっこんだった美少女、キム・ソヒョン(コ・ユンジョン)は、未婚の母になって、今は新任の保母さんに。住む家のことで上司ナム・テナム(パク・チョルミン)に相談したユン・ジェインが配属された、職住一体型のソフン治安センターの隣が、ソヒョンの勤める保育園だ。
 以降は、この見捨てられた郊外のソフン地区を舞台に、さらに接近する主人公2人。彼らを監視する謎の男。そして捜査を進めるたびに謎が深まる殺人事件。そしてますます謎の行動をとる、イケメンなだけでなく驚くほど冷静な検事、カン・ソンモ!のおかげで、なかなかのサスペンスが展開される。
 ラストの方に、そんな恐ろしい話だったのか!とびっくりすることは請け合いだ。
 ただ、サイコメトリックのアイディアは、自分と自分の周りの人間の過去を見て、その秘密を後から説明するのに役立つばかりで、様々な事件を解決する決め手にはならない。結局、あんまり役に立つ超能力者ではない。

 色々なアイディアが盛り込まれているのが、どれもこれもどこかで見た話で、新鮮味という点では劣るのだが、展開的には、見るべきものがある。
 アイドルドラマ、学園モノ、ラブコメ、SFドラマ、女性警官もの、犯罪ミステリー、警察と検察の不正にから巨悪ドラマ、社会から疎外された人間が引き起こす冷酷な犯罪の連鎖、サイコパスもの、壮絶な復讐劇・・・どう考えても、詰め込みすぎ!が、それでも呆れるような雑な部分はなく、一本の物語にうまく仕上げてはある。脚本家、ヤン・ジナの力技には感心する。

 演技者の方は、ジニョンとダソムはアイドル出身。「A-TEEN」でデビューしたばかりのシン・イェウンもまだ女子大生だが、演技的には十分役割を果たしているだろう。
 終始暗い表情のソンモを演じたキム・グォンと、謎のストーカー、カン・グンテクを演じたイ・スンジュン(「その男の記憶法」「ハッシュ〜沈黙注意報〜」「ある日、私の家の玄関に滅亡が入ってきた」「ディヴァイン・フューリー 使者」)が、このドラマで一番演技をした二人だ。本来笑顔がいい人っぽいスンジュンの、悪魔ぶりがそそられた。
  どのドラマを見ても出ている気がするコメディ俳優のキム・ウォネが、あの演技のまま狂った高校教師を演じるのも笑える。

子・ユンジュン(コ・ユンジュン)

  アンの相棒、デボンが憧れ続けて、最後にはついにその気持ちを射止める美人すぎる未婚の母、キム・ソヒョンを演じたコ・ユンジョンは、このドラマがデビュー作。演技的に見せ場かあるわけではないが、主演のシン・イェウンより美人で、今後に期待がかかる。

By 寅松

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