警視ファン・デル・ファルク アムステルダムの事件簿

オランダを舞台に描いた、英国ミステリーの21世紀版リメイク!

Van der Valk
2020年 イギリス カラーHD 90分 全3話 Company Pictures NL Film & TV / ITV AXNミステリーで放映
原作:ニコラス・フリーリング クリエイター:クリス・マーレイ 監督:コリン・ティーグ、マックス・ポルセリーン、ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ
出演:マーク・ウォーレン、メイミー・マッコイ、エマ・フィールディング、ルーク・アレン=ゲール、エリオット・バーンズ・ウォーレル、ダレル・ドゥシルバ ほか

 最近は、あまり語られることもない中堅ミステリー作家、ニコラス・フリーリング。彼の60年代から続いた代表作が、オランダの警部ファン・デル・ファルクのシリーズだ。フリーリングは英国人で小説も英国で出版されたが、育ちはフランスで、オランダに住みこのシリーズを書いていたということらしい。
 このシリーズは、英国の地上波ITVが取り上げて、『フレンジー』『ライアンの娘』『モーリス』などで知られるバリー・フォスターを主演に据えて1972年から1992年にかけて都合5シーズンが制作された人気シリーズであった。
 そのシリーズを同じITVが28年ぶりに、全く新しいシリーズとしてリメイクしたのがこの作品である。今回は、まさにヤング・ファン・デル・ファルクとでもいうべき新しい人物像を、「華麗なるペテン師たち」や「ステート・オブ・プレイ〜陰謀の構図〜」「グッドワイフ」のマーク・ウォーレン主演で再構築。ストーリー的にも現代のオランダの実情に合わせて大幅な設定変更を加えたようだ。
 主人公のピエト・ファン・デル・ファルク(ウォーレン)は、いつも機嫌が悪く、態度も粗暴な「警視」として登場し、自分のチームを率いて捜査に当る。上司は、怖いおばさまのダールマン本部長。ファン・デル・ファルクとの間には、ほかの部下たちには隠している共通の秘密があり、お互いを庇いあっているようにも見える。(最終話で秘密が明かされる)
 相棒刑事のルシエンヌは、外見はちょっと攻殻機動隊の草薙素子を思い出させるクールな美人さんなのに、やたらにファン・デル・ファルクのプライベートに立ち入るストーカー女・・なのかと思えば、実はレズビアン。しかし、デル・ファルクとはお互いの携帯に「彼氏」「彼女」という名前で電話番号を登録している奇妙な関係だ。
 そのほか、「彼にチャンスを与えてやって」とダールマンが釘を刺してチームに送りこんだ優秀な新人刑事クルーバス(バーンズ・ウォーレル)、美人に弱い、ダメ部下のブラ・デ・ブレス(アレン=ゲール)、居眠りばかりしているが秀逸な監察医、ヘンドリック(ドゥシルバ)らが、ファン・デル・ファルクを助ける構成だ。
 ドラマは各90分の3本構成で、全編英語だが舞台は完全にアムステルダムで、現代オランダの雰囲気を出そうと観光名所的なロケーションで撮影が行われている。
 全編英語でイタリアの刑事を描いた、BBC「ローマ警察殺人課 アウレリオ・ゼン 3つの事件」を思い出させる構造だが、ドラマの方はもう少し現代っぽい。下手するとTBSの「MIU404」オランダ版かー?と思わせるようなレベルの出だしだったが、さすがにクラシック・ミステリーが下敷きだけに、複雑な人間関係が徐々に解き明かされる。
 若々しいウォーレンのファン・デル・ファルクは体も動き、それなりにカッコイイのだが、もともとの古典絵画に深い教養を持っている人物などの要素は、逆に馴染まなくなっているように見える。第1話「アムステルダムの恋」に出てくる、アムステルダム国立美術館やフェルメールの絵画は本物らしいが、その絵画を見ていた美術館員の母親の心を見抜くファン・デル・ファルクの推理は、とってつけたみたいでしっくりこない。原作の設定を活かしながら、どう現代のドラマとして成り立たせるかが大変難しい作業なのが見て取れる。
 ドラマは、現代的な感覚を持たせるべく、多人種が居住するアムステルダムで、イスラム教徒の娘が無神論者になったり、オランダでも台頭しつつある極右候補と左派の対立が激化していたり、オランダならではのエコ・ファッションブランドが、V-loger(日本でいえばユーチューバー)評論家を巻き込んでバトルを繰り広げていたりと工夫が凝らしてある。
 フェルメールを愛し、古典絵画の教養の深い警視が、オランダに実在する宗教神秘主義図書館で出会う官能的な趣味をもつ修道女と奔放な女性の関係を疑う・・などというと、非常に古典的で筋が通ったシークェンスではあるが、一方ではクールバスのSNSの解析から双子の入れ替わりを見つけたりするのだから、方向性がぶれているように見えるのは致し方ない。
 ドラマ自体は、90分という時間もあまり感じさせないテンポで、十分見るに値する。しかし古典的な英国ミステリーの雰囲気と、オランダの最新の日常が両方楽しめる・・というよりは、両方の要素を無理やり一つに押し込んだドラマと言うべきだろう。

by 寅松

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