体当り殺人狂時代

発明オヤジと黒塗り浮浪児の冒険……かな!?

『体当り殺人狂時代』
1957年 新東宝 白黒 69分 昭和32年3月3日公開  
監督:斎藤寅次郎
出演:池内淳子 和田孝 大宮デン助 清川虹子 坊屋三郎 ジョージ・ルイカー

 
 花園アパートでバーのマダムが殺された。マダムは連合軍の黒人兵士との間に子供を産んでいたのだが、その日、孤児院を抜け出してマダムの部屋に隠れていたジョージ(富松千代志)は謎の男に追われて逃げ、立派な家の煙突の中に隠れる。つまった煙突掃除を頼まれてた真空式煙突掃除屋をしている善太(大宮デン助)が、ジョージをみつけて引き取ることに。川原の掘立小屋に発明品を詰め込んだ善太の家で2人は共同生活を始める。
 実は、ジョージはアラビアかどっかのアラメニア王国のパイポ皇帝(ジョージ・ルイカー)の孫だった。謎の男はジョージを捕まえて大金をせしめようとしていたのだ。いろいろあって、最後は善太の煙突潜入術がモノをいって悪漢をやっつける。めでたし善太には皇帝から勲章と1000万円が贈られるのだった――。

 昭和32年といえば、大蔵貢新社長の肝入りで製作されて大ヒットを記録した『明治天皇と日露大戦争』が4月末に公開された。前年に製作開始されたときには「日本初のシネマスコープ大型映画!」と宣伝されていたが、東映がさっさと『鳳城の花嫁』をシネマスコープで作って4月2日に公開してしまったので、“日本初”の冠は使えなくなった。そんな中で製作され、おそらく東映が「日本初のシネマスコープ」を奪ってしまったことがわかったあとなのだろう、デン助の掘立小屋にはなんと「日本初のシネマスコープテレビ」があって、そのユースでパイポ皇帝の来日を知るのである。小屋には、発電装置(仕組みは不明)、自動湯沸かし器、自動調理器などがあり、壁に描かれた鶏の絵からは卵、牛の絵からは牛乳、ミカンの木からはミカンが採れるのだ。ティム・バートンもびっくりの未来的善太ハウスだが、悪漢たちのトラックに載せられて運ばれる途中で転落して崩壊。「まあ、いいや、また作ってやるよ」とひたすら前向きなのが気持ちいい。
 善太は、マッサージ治療院をしている妻(清川虹子)とケンカして別居しているのだが、そっちも電気マッサージやガスマッサージ(?)を取り入れた未来的医療を売りにしていて皇帝からも肩こり治療に呼ばれるのだ。
 さりげなく時事ネタを入れるのは斎藤寅次郎らしいところで、混血児を助けようとする善太に妻が理由を訊く。「ヒューマニズムだよ」「だったら国連へ頼みな」「なんだそれ」「国際連合だよ」「はくさい れんこん?」
日本は前年の1956年に国連に加入している。

 出演者のクレジットでは最初に出る池内淳子は、善太の娘・京子役で、寛平(和田孝)と結婚したいので両親に仲良くなってほしいと願っている。寛平は殺されたマダムの第一発見者なのだが、そんな関係性はいつのまにかあっさり無視。カップルがどうなったのかもよくわからないのがすごい。(いちおう、最後に皇帝と謁見するときに同席してるのでうまくいったんだろうけど)。まだ池内淳子が、久保菜穂子、三ツ矢歌子と共に「新東宝現代劇の女優三羽烏」と呼ばれて新東宝の期待のスターだったころなのだ(後に池内は結婚退職した後、新東宝に復帰するがその映画は『花嫁吸血魔』だった)。

 それにしても、黒塗りのジョージ君を風呂に入れてこすっても黒いのが変わらないと困ってるさまなど、今では絶対できないギャグだろう。しかし、煙突屋なので黒くてもかまわないというのはいいアイディア。
「♪朝から晩まで煙突だ 煙突掃除は真っ黒け〜 たまにはきれいになりたいな〜」とかなんとか呑気に歌っていて楽しそうだ。
 それにしても、題名と内容がまったくあっていないのはさすが大蔵=新東宝だ。

by 無用ノ介

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