The Blueberry Hunt

アマゾン・プライムのケモノ道

The Blueberry Hunt<N>
2016年 インド・カナダ カラー 115分
監督・脚本:アヌップ・クリアン
出演:ナセールディン・シャー、アシャナ・クムラ、ヴィピン・シャ―マ 

 アマゾン・プライムで偶然ぶつかった謎の映画だ。イメージイラストはなんだか「デルス・ウザーラ」風で、解説にはこう書いてある。
“名前のない男が、ケララ州のジャングルに接する遠隔地で、「ブルーベリースカンク」と呼ばれる非常に有力なマリファナを育てる。貴重な作物が収穫の準備ができたら、彼の人生は逆さまになります。「TBH」は、象徴的な俳優のNaseeruddin Shah”(原文ママ)
 前半はともかく、後半はほとんど暗号のようだ。予告編を見ると、男は白髪のドレッドヘア、小柄だが筋肉隆々で銃身の長いショットガンを持って自衛しているようだ。で、「字幕と音声」をチェックすると、「字幕なし」「音声 日本語」とあるではないか! ということで鑑賞を始めるが、もちろん、それは「日本語」ではなかった……。『ブルーベリー・ハント』と邦題をつけるでもないのに、わざわざ日本語吹替版を作ってくれるわけないよな。
 
 インド映画といえば、最初に出てくる手書きサイン入り書類(上映許可証か?)、神経症のようなリズムの音楽と歌と踊り、シネスコ画面を埋め尽くす数えきれないほどの出演者と大量のセリフの洪水だが、この映画はブルージーなエレキギターとドラムで静かに進んでいく。セリフはヒンディー語なのかタミル語なのかもわからないが、意外に英語が出てくるので15%くらい理解できる。主人公の“男”は飼っている相棒犬シェパードに英語で話しかけるし、電子メールのやり取りも英語なのだ。

 男(ナセールディン・シャー)は人里離れた山の中に住み、大きなビニールハウス数棟でマリファナを栽培し、敷地内には監視カメラを設置している。家では3台のモニターを並べて監視、折り畳み式のスマートホンでも監視カメラの映像をチェックできる。セリフがわからないので細かい事情は不明だが、(おそらく「ブルーベリースカンク」を狙って)定期的に殺し屋が襲ってくるが、男は頭脳的に迎撃し、死体は穴に埋めてしまう。ひょんなことから誘拐された若い娘ジャヤ(アシャナ・クムラ)を預かることになる。初めは嫌がっていたジャヤも次第に心を開き、犬を含めて楽しい食事をしたりするが、またしても殺し屋が襲ってくる。敵を倒したものの銃弾を受けた男はジャヤを逃がし、3人の女の来訪を待つ……。

 なんとなくだが、ジム・ジャームッシュみたいな映画を狙ったのだろうか。少なくともインド映画の本流とは違う、欧米の映画作家的な作品を目指していることは確かで、字幕があれば普通に楽しめるだろう。テレビでアニメを見るのが好きな犬、みみずや象にも丁寧に以後で語りかける主人公はなかなか魅力的で、夕闇迫る丘の上で焚火を炊いて酒(ブランデーかな?)のグラスを傾ける場面などはなかなかしみじみする。近くの町へ出かけるときは大型バイクでノーヘル・ライドの主演ナセールディン・シャーは1949年生まれなので60代後半だが、なかなか精悍でかっこいい。調べてみたら『渡河』(84)でヴェネチア映画祭男優賞を受賞しているインドを代表する名優らしい(なにしろ、三船敏郎が『用心棒』でもらったのと同じ賞だ)。ハリウッド映画の『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い 』(03)ではネモ船長を演じている。惜しむらくは、囚われの美女アシャナ・クムラが、悪くはないのだが、今どきのインド映画美女らしくスタイル抜群すぎで情感にかけることか。スーザン・ジョージあたりだと良かったのに。
 
 アマゾン・プライムには、数合わせのように膨大な謎タイトルがやたらにある。タイトルも紹介もすべて英語のマイナー作品やテレビ番組から、70〜90年代にビデオ発売されたB・C級外国映画がビデオ画質も字幕もそのままで配信されていたりする。とにかく数とバラエティでネットフリックスに負けないぞといいたいのだろうか。
 解説にあった「TBH」は、どうやら題名の頭文字らしいが、そんなの誰も知らないよ! なにゆえにアマゾンが日本で配信しているのか、何故わざわざ「音声=日本語」と表示しているのか、謎は多いが、アマゾン・プライムのケモノ道には、なかなか面白い映画もあることが少しわかったような気もする。

by 無用ノ介

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