キリング・イヴ/Killing Eve シーズン3/4
もはや、とても愛おしく思える美少女サイコパスの残念なエンディング!
2020~2022年 イギリス/アメリカ カラーHD 41~55分 全8話x2 Sid Gentle Films / BBC America WOWOWにて放映 Netflixで配信
クリエイター:スザンヌ・ヒースコート、ローラ・ニール 他 原作:ルーク・ジェニングス(”Codeneme Villanelle”シリーズ全4作 Amazon Kindle 日本では『キリング・イヴ』シリーズ 細美遙子訳 としてU-NEXTより) 監督:テリー・マクドノー、ミランダ・ボーウェン、デイモン・トーマス、シャノン・マーフィ、ステラ・コラーディ、アヌ・メノン
出演:ジョディー・コマー、サンドラ・オー、キム・ボドゥニア、フィオナ・ショウ、オーウェン・マクドネル、ショーン・デラニー、ジェマ・ウィーラン、ロバート・ギルバート、マリー=ソフィー・フェルダン、イングヴァール・シーグルソン ほか
リリースされてから随分とたって、なぜ今頃取り上げるかというと・・、2025年になってようやく、この怪作の全シーズンがNetflixで配信されたからである。これで、日本でも本当に広くこの名作が知られることになるだろう。
ルーク・ジェニングスという元ダンサーの作家が2014年から2016年にかけて出版したKindle版の小説(これらが2017年にまとめられて”Codeneme Villanelle”として1冊として出版された)が原作となっているが、シーズン1は、むしろショーランナーを務めた、フィービー・ウォーラー=ブリッジ(「フリーバッグ」)の優れた脚本の恩恵を受け傑作となったというのが正しかろう。
シーズン2では、このフィービー・ウォーラー=ブリッジがクリエイターから離れ、女優/脚本家のエメラルド・フェネル(女優としてはBBC「コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語」のパッツィ・マウント役。映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』を脚本/監督した)が引き継いだが、勢いは概ね保たれた。
問題は、スザンヌ・ヒースコートがクリエイターを引き継ぎ、コロナ禍中の2020年にリリースされたシーズン3とローラ・ニールにバトンタッチした2022年ののシーズン4。シーズン3はまだしも、最新シーズン4は、ファンからは評判がよろしくない。まあ、センセーショナルなシリーズの最後を飾るのは難しいと言えるだろうが、シーズン3の叙情を残したエンディングが意外によかったので、シーズン4の最後に、マンガチックなバッド・エンドをつけ加えたのは、如何なものか?という意見が多いようだ。
シーズン3では、イブ・ポラストリ(サンドラ・オー)は、MI6で仕事に嫌気がさし、イギリスの韓国料理店のバックヤードで、マンドウを包んだり、皿洗いをしたりしている。一方のヴィラネル(ジョディ・カマー)は、彼女に殺しを指導したダーシャ(ハリエット・ウォルター)に説得され、スペインで暗殺組織トゥエルヴの仕事を再開するが、現場仕事ではなく上級職への昇進を要求してダーシャとその上司であるエレーヌを困惑させる。
もう、捜査に戻る気はなかったイブだが、ただ一人彼女を気にかけてくれていたキャロラインの息子で情報部の同僚ケニー(ショーン・デラニー)が、転職先のWEB出版社のビルの屋上から転落して死亡すると、イブは意を決してケニーが見つけたというトゥエルヴの手がかりを探すことを決意。
キャロラインもオフィスを追われ、彼女が嫌う官僚主義の同僚ポール( スティーヴ・ペンバートン)が監督としてキャロラインの上に配属されて嫌気がさしていたが・・・息子を殺害されたことで、秘密裏に捜査を開始。ついには、上司のポールが、トゥエルヴの幹部であることを発見し、イブ、ヴィラネル、コンスタンティン(キム・ボドゥニア)の前で撃ち殺すことに。
また、このシーズンの中頃では、ヴィラネルがコンスタンティンから入手した情報を元に、自分を捨てた母親の家族を訪ねるエピソードが挿入される。母親は、幼いオクサナ(ヴィラネル)の悪魔性に気づいており、夫がなくなるとオクサナ一人を孤児院に入れ、オクサナの弟を連れて再婚していた。
結局、母親は再度オクサナを拒絶するし、当然のようにオクサナも(実の)弟と、数日の間オクサナになついた一家の末息子2人をのぞいて、家族全員を焼き殺すことに・・。
このロシアへの里帰りは、シーズンの中でも寓話的な作りだが、ヴィラネルの複雑な人格を描いていて面白い。
(シーズン4の結末に関するネタバレが含まれます)
シーズン4ではなんと、(全シーズンで完全に元夫ニコ絶縁され割り切った)イヴは肉体派の警備員として勤務し、元軍人で現在の同僚兼セフレでもあるのユスフ(ロバート・ギルバート)の協力を得て、トゥエルヴの上層部を追っている。
同様にキャロラインも、スペイン駐在局員の閑職に追いやられながら、ロシアへの亡命してまで、トゥエルヴの幹部が連続死を遂げた事件を捜査すしているのだが、ヴィラネルの方は、熱心なキリスト教徒になるというへんな自己実現に没頭中。
洗礼式にイブを呼んで、変わった自分を見せたいのだが、イブには拒否され、結局住み込んでいた教会の牧師(スティーヴ・オーラム)とその娘メイ(ジンズィ・ハドソン)を殺してしまう。
死んだかと思われたコンスタンティンは、ロシアの地方で市長をやっているが、トゥエルヴの上司であるエレーヌ(カミーユ・コッタン)に脅され、エレーヌが見出した新人パム(アンジャナ・ヴァーサン)のハンドラー/教育係を押し付けられる。
このシーズンには、キャロラインの若き日の苦い経験、そしてそれこそがトゥエルヴの始まりであったことや、トゥエルヴの幹部で当時の恋人ラース(イングヴァール・シーグルソン)とコンスタンティンの因縁などが描かれ、歴史が暴かれる一方で、現代のインド系の孤独な遺体処理技術者のパムが、殺人者としてコンスタンティンに訓練されるエピソードも描かれる。
実は、トゥエルヴ幹部の殺害は、幹部の一人であるエレーヌが、組織の強奪をはかるためにトップを探していたことが判明するが、その殺害を行なってきたヴィラネルの先輩格に当たる大女の殺人者でスコットランドの孤島に住む、ガン(マリー=ソフィー・フェルダン)が登場し、物語の中盤では、ガンとヴィラネルの心の交流まで描かれるので、大忙しになる。
結局、最後の最後にヴィラネルとイブはお互いの絆を確認し、いよいよトゥエルヴ幹部の壊滅を実行に移すのだが・・・。ほぼそれが成功したあとに・・取ってつけたような悲劇的なエンディングが付いてくるのだ。
水中でイブの腕の中で撃ち殺されるヴィラネルって、必要でしたかね〜!!しかも、なぜキャロラインがそれを命じる必要が??うーん。
シーズン3/4も、相変わらずセンスのいい音楽は満載。と、いうか、もうここまでくると、最後なので好き勝手やっていいか!?と思ったのか・・加速度的に選びかたが過激になってきたように思う。
シーズン3で頭のムーディー・ブルースの<Dear Diary>とか、ヴィラネルが里帰りするとロシアでかかりまくるエルトン・ジョンの<Crocodile Rock>(母親が再婚してできた家族の末っ子が、エルトンの大ファン)はともかく、60年代イギリスのおしゃれディオ、ザ・カラベルズの<Forever>、同じくイギリスの60年代を代表する女性ヴォーカル、シラ・ブラックの<Anyone Who Had a Heart>。シーズン4の4話の後半、然圧倒するように流れるヴィッキーの「恋はみずいろ」<L’amour Est Bleu>など、かなり狙っていて笑える。
イブとヴィラネルが、キャンピングカーを盗んでトゥエルヴ壊滅に向かう中でラジオに合わせて2人が盛り上がるのが、ヒューマン・リーグの<Don’t You Want Me>というのも爆笑。
もちろん、全体の雰囲気を統一している<UNLOVED>のダークなサントラも冴えている。
By 寅松
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