海外ドラマ

刑事ウルリケ 〜連続猟奇殺人事件〜

東ドイツの森が派手に恐ろしが、焦点が定まらないダークサスペンス!

Die Quellen des Bösen/The Roots of Evi
2023年 ドイツ カラー 48分  全6話 Wüste Medien/RTL Amazon Prime (FOD/Huluでも)で視聴可能
原作:エイダ・フィンク(「Blütengrab」2021 Rowohlt E-Book) 脚本:カタリーナ・ユンク、エルケ・シューフ 監督:ステファン・リック
出演:ヘンリエッテ・コンフーリウス、ファーリ・ヤーディム、フィリップ・シュナック、アンゲリーナ・ヘンチュ、クロエ・ハインリヒ、ニナ・ペトリ、ソーニャ・ジョアン・ゲラー ほか

 ドイツの民間放送局RTLで2023年に製作放映された、ちょっとばかりいろいろ盛り込みすぎたダークサスペンスだ。おそらく架空の地名だろうと思われる舞台は、ドイツ第2の都市、ハンブルグからほど近い旧東ドイツの北部地域で、郊外は深い森に覆われている。
 そして時代は1993年。ドイツ統一から非常に時間も浅く、発展してる西ドイツに比べると、旧東ドイツ地域は時間が止まっているかのようだ。
 この地域にある「烏森」と呼ばれる深い森で、暴行、虐待されたことが明白な14歳の少女の遺体が発見される。少女は、ナナカマドの花を敷き詰めた上に寝かされ、身体中にルーン文字が刻まれた状態だった。

 同僚のホルガーと現場に駆けつけた地元署の刑事、ウルリケ(ウリー)・バンドウ(ヘンリエッテ・コンフーリウス)は、傷とは別に少女の腕についた拘束の跡が、同じ孤児院にいたかつての親友クリスタ(アンゲリーナ・ヘンチュ)が、暴行されたと訴えた時に腕にあったものと同じだと気づく。
 その場に駆けつけた、ハンブルグからの応援の刑事、コーレイ・ラーセン(ファーリ・ヤーディム)とともに、ウルリケは事件の捜査に当たるが・・・少女の誘拐には、郊外のガソリンスタンド「ガスニッツ」を営んでいるクリスタの夫で、ネオネチ右翼グループのまとめ役フランク(カルステン・アントニオ・ミールケ)らが関わっていること、さらには自分の弟マルク(フィリップ・シュナック)が、クリスタの娘のサブリナ(ソーニャ・ジョアン・ゲラー)と恋仲になり、フランクの仲間になっていることを知ることになる。
 
 前半は、なかなか人間関係が見えないが、テンポは良く、恐ろしげで暗い雰囲気もあって見てしまうのだが、結局のところ6話の内容に、既視感のある要素をてんこ盛りにした挙句、ほとんど全部が消化不良か説明不足で、残念な状態で終わるドラマである。
 まず話の本筋は、ドイツらしい暗い森で起こる猟奇事件で、それ自体は童話的でもあり、恐ろしげで良いだろう。森に住む狼が、少女をさらっては傷つける・・それ自体はよく分かる。それの説明が、どうやらゲルマン神話に出てくる片目の神オーディンと、その息子ヴィーザルの話を体現しようとする狂人というのまではギリギリわからないではない。

 でも、それだけなら、この話をわざわざ1993年という東西ドイツ統一間もない時期の旧東ドイツ地域にするほどの理由があったのか?

 東西格差で、旧東側では多くの軍事関係者なども職を失って大変だったし、統一されても力を温存する役人も多く、シュタージや旧政権の非人道行為が隠され続けたこともあるだろう。(ドイツの国営放送が製作した「カロとペーター 統一ドイツ捜査チーム」では、このことが、時間をかけてちゃんと描かれている。)

 このドラマでも、ガソリンスタンド一家は、ネオナチ風の極右家族だったりするが、なぜ極右なのかの説明もなく、服装も中途半端で、単に粗暴なだけである。
 現代の少女の事件を追うウルリケは、自分の記憶から、20年前に自分の親友クリスタが強姦され、脳一人の少女が殺された事件へたどり着き、それを追っていたのが、自分の父と、今は父親代わりのように自分をかばってくれている所長のドゥッペ(ヨルグ・ヴィッテ)であることを知ることになる。
 事件捜査自体がブランド次官と彼が送り込んだ管理官により中止の圧力を受けるのだが、少女の暴行事件の方には、20年前の事件も、現代の事件もメッツェンバッハという実業家と元シュタージのブランドが関わってたというオチになる。

 自分の母親(ニーナ・ペトリ)は、危険すぎると言って言葉を濁すし、ドゥッペも衝撃の自殺をとげたりするので、シュタージが関わる組織的で巨大な悪行があるのだろうと期待していたら・・、なんだか変態2人の個人の仕業だったようだ。
 しかも、連続猟奇事件の割に、少女レイプも20年前に2人で、1993年にまた1人ということで、なんでそんなに散発的なのかの説明もまったくない。

 主人公のウリリケは、同居する弟が、極右の仲間になっていることで悩むが、一方では、自分がレズビアンであることに目覚めてしまったようで、唐突に昔から好きだった相手にキスしてしまい、悔やんだりする。この要素も、実のおざなりで、意味がない。

 ハンブルグから来たトルコ系出身らしい刑事コーレイの方は、以前潜入捜査中にテロリストの女性と恋仲になっており、追われる彼女と、彼女が生んだ自分の息子ジーモン(ヨナタン・ヴェルツ)と一緒に、事件を放り出して逃げようともがく。おいおい。この設定も本当に必要だったのか?

 ストリー全体の中で、もう一人大きく扱われているのは、森で最初に少女の遺体を見つける同じ年頃の少女イングリッド(クロエ・ハインリヒ)。彼女は、つい1年前に森の中のあばら家に一家と越して来たのだが、この一家が奇妙。
 おそらく、アメリカのアーミッシュのように、文明を拒否して昔ながらの生活をする宗教的な一家なのだろうけれど、最後まで何の説明もない。
 このイングリッドは、いつもロビンフッドのような服装で、森にの中を疾走し、大きなカラスと話したり、閉じ込めていたカラスに左目を突かれて失明したりしても、一向に動じない。不思議すぎるが、彼女は、要するに少し神話的存在なのだろうか?
 一家が暮らす家は、実は20年前に変態達が地元シュタベノウの孤児院から少女を連れ込んでれいぷした現場であったようだ。

 とにかく、何処かで見たような要素が漏れなく盛り込まれていて、ほとんど消化されないままなのだが、最後の犯行だけは、規則も無視して突っ走ったウルリケのおかげで食い止められた。
 多くの男達が立ち向かえなかった事件を、ウルリケとイングリットという怖いもの知らずの超美人さん2人が解決したところだけは、ちょっと気持ちがいい。

By 寅松