海外ドラマ

ホステージ:陰謀の行方

政治的にも追い詰められている英女性首相と仏女性大統領が、驚きの協力でテロリストに対抗!

Hostage
2025年 イギリス カラー 38~46分  全5話 Teammakers Productions Binocular Productions/Netflix Netflixで視聴可能
監督:イザベル・シーブ、エイミー・ニール クリエイター:マット・チャーマン 
出演:サランヌ・ジョーンズ、ジュリー・デルピー、コーリー・ミルクリースト、ルシアン・ムサマティ、アシュリー・トーマス(バッシー)、ジェームズ・コスモ、ジェニー・ベス、マーティン・マッキャン、ソフィー・ロバートソン、イソベル・アクウディケ、サラ・パウエル、アミ・オクムラ・ジョーンズ ほか

 『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015 スーティブン・スピルバーグ監督)の共同脚本や、2014年のBBCドラマ「チェスター動物園を作ろう」、さらには2016年の『フランス組曲』などの脚本でも注目されてきたイギリス人脚本家マット・チャーマンがクリエイターを務める、ネットフリックスのオリジナルドラマ。
 米CBS作に同名のドラマ(2013)があるが別ものだ!
 チャーマン以外は、主演の2人も、演出した監督もみな女性であることも面白い。
 
 英国の首相と、フランスの大統領が両方とも女性になっているという設定だ。最初の方では、2人の立ち位置は表面上わかりにくいが、英国の女性首相の支持基盤は脆弱で、しかも長年つづくNHSの危機を回避することを公約に掲げている首相にとっては、まずいことに英国内で医薬品不足が危機的状態になっており、英首相アビゲイル・ダルトン(サランヌ・ジョーンズ)は、フランス大統領ヴィヴィエンヌ・トゥーサン(ジュリー・デルピー)との会談で、なんとか医薬品の緊急輸入を取り付けたいと考えている。
 一方の大統領ヴィヴィエンヌは、当選前の評判とは裏腹に、今では議会で大きな力を持った極右の主張にすり寄っていて、フランスに流入する難民を阻止するために、英仏海峡トンネルのイギリス側にフランス国境警備軍を展開しろという極右の要求を叶えるために会談に臨んでいた。なんとしても、目前に迫った選挙を勝ち抜く必要があったからだ。
 しかし、そんな2人の会談中に、アビゲイルの夫で、国境なき医師団のメンバーとして仏領ギアナで活動していた医師アレックス(アシュリー・トーマス(バッシー))、武装集団に連れ去られるという異常事態が発生する。犯人側の要求は、ダルトンの首相退陣。
 首相官邸は、即座に現地にMI6のエージェントを派遣。拘束されている場所を特定し、あとはフランス領内であるために、来英しているヴィヴィエンヌと即座に交渉し、フランスの外人特殊部隊を送り込んでもらうことで解決を図ろうとするのだが・・。
 なんと、攻撃直前に携帯に送られて来た映像を見て、ヴィヴィエンヌは作戦は作戦中止を命令する。その映像は、あろうことか自分と義理の息子であるマテオ(コーリー・ミルクリースト)のベッドでのツーショットだった。送り主は、ダルトンを退陣させるために、仏大統領をも脅迫しているのだ。
 抜き差しならない状況に追い込まれた2人だが、この事件がリークされたのを機に、アビゲイルが国民に向けて演説したことで、状況が変わり始める。
 ヴィヴィエンヌの方も、選挙を支配している強権的な夫でフランスのメディア王のエリアスが、先手を打って映像をメディアで公開する暴挙に出たことで、自らの信念を取り戻し、アビゲイルの夫の救出に協力することを決心するのだ。
 しかし、誘拐犯たちの目標は、英国内でのアビゲイルの直接の殺害にシフトしつつあった・・。

 冒頭で、首相指名を悩むアビゲイルと夫のアレックスの心温まるやりとりが描かれる。現代的とも言えるが・・、こんな安っぽいといったら失礼だが、普通のアメリカ黒人みたいな夫をもつ妻が首相?って・・・雰囲気になる。まあ、あとで夫は「国境なき医師団」で、英国支配階級とは無縁そうな人だというのはわかるが、政治ドラマとしてはチープな感じのスタートだ。
 ちなみに夫を演じたアシュリー・トーマスは英国人だが、バッシーという名前でラッパーとして活動していた俳優。なるほど、どーりでアメリカ人風。
 同じ黒人ではあるが、アビゲイルを首席補佐官として支えるコフィを演じる(タンザニア系イギリス人)ルシアン・ムサマティは、非常に重みがあってリアルである。
 アビゲイルのスタッフは、本当に少数で、特に内通者がいることがわかると頼れる人がいなくてハラハラさせられるが、「他に頼める人がいない」とアビゲイルが頼る首相広報官のザディも、ちょっとアジア人が入った顔。
 ザディという名前だから、インド系か、マレーシア系とかかと思っていたら、ザディ・ニシムラという名前で日系??という設定らしい。演じているのは、ロンドンで「となりのトトロ」をミュージカル化した<My Neighbour Totoro>などにも出演している、イギリス人女優アミ・オクムラ・ジョーンズだ。
(しかし、いくらイギリスだからって、そんなめちゃくちゃな名前の人、たぶんいませんぜ!イギリス人から見たら、アミ・オクムラがいるなら、ザディ・ニシムラもいるだろう・・くらいの感覚だろうが・・)

 最初から美人すぎて怪しいが、反乱軍の一人であることがわかるマテオの恋人サスキアを演じたソフィー・ロバートソンや、いろいろ面倒を起こすアビゲイルの娘、シルヴィーを演じたイソベル・アクウディケらも、これからの女優だがなかなかいい。

 政治ドラマとしてリアリティ、重々しさはともかくとして、サスペンスとしては展開も早く、惹きつけられる。(2025)8月21日にNetflixで公開されると、59カ国で首位を獲得するなど、予想以上に好調なスタートを切ったのもうなづける。
 定番のスリリングな駆け引きだけでなく、とにかくダウニング街10番地を吹っ飛ばして見せるという、とんでもアクションもやってのけた。
 ホワイトハウスが吹っ飛ばされたことはあったが、ダウニング街がめちゃくちゃに吹き飛んだのは初めてかもしれない。(笑)
 結局のところ、アビゲイルを狙っていたのは、NHS改善のために予算を削られた軍であったという構図も、ありそうで恐ろしい。

 クリエイターのマット・チャーマンは、続編に意欲を見せていると話もあるが、基本単発ドラマだし、あんまり引っ張らない方がいい気もするが・・・。

By 寅松