シティ・オブ・シャドウズ
いろいろなもの表現したいのはわかるのだが・・いかにも中途半端!
2025年 スペイン カラー 45分 全6話 Arcadia Motion Pictures/Netflix Netflixで視聴可能
脚本:ホルヘ・トレグロッサ、カルロス・ロペス・ガルシア、クララ・エスパラク 監督:ホルヘ・トレグロッサ 出演:イサック・フェリス、ベロニカ・エチェーギ、アナ・ワヘネル、マノロ・ソロ ほか
毎回オープニングにクレジットで、「ベロニカ・エチェーギに捧ぐ」と毎回出てくるとおもったら、なんと主演女優さんのベロニカ・エチェーギさんが、42歳という若さで癌で急逝されたらしい。本作が彼女の遺作になってしまった。
ドラマ原題そのままだが、「影の街」って言われてもなんだかなあ・・。華やかな国際都市として、またガウディの芸術的建築物が市内のいたるところに保存されている芸術文化都市でもあるバルセロナが舞台である。原作があるようで、アロ・サインス・デ・ラ・マーサという作家の<El verdugo de Gaudí>(ガウディの処刑人)という小説を基にしたシリーズだ。
ガウディの遺跡で次々遺体が発見される構造なので・・どうせなら、小説どうりのタイトルの方がよほどわかりやすかった。
バルセロナが一躍国際都市として、評価されるようになるのは1992年のバルセロナ・オリンピックの成功と、その開催に先立って行われた大規模な都市の再開発のおかげ・・と、一般的には言われているが・・・、地元の人たちにとっては、このオリンピック再開発の陰で、多くの人たちが家を失ったり、土地を無慈悲に接収されたりした一方、汚職に手を染めた有力者たちが私腹を肥やした事実があるようで、その国際都市の陰の部分が噴出して恐ろしい連続殺人事件に発展するという物語である。
単純な観光ドラマではなく、街の発展の影の部分を強調したかったのだろうが・・その意図自体がドラマの行く先を暗示している。
オープニングからバルセロナの中心地のグラシア通りにある、ガウディの有名作品カサ・ミラの窓から吊り下げられた男が火をつけられて焼死する。バルセロナ警察に呼び戻されたのは、暴力事件で停職中の敏腕刑事ミーロ(イサック・フェリス)。彼と長い付き合いの、カブレラ検事(アナ・ワヘネル)が、警察の上司と話をつけて現場に戻したのだ。
この人が、特別すごい人なのかと思うと・・・なんだか全然ダメで、がっくし。(笑)
まあ、ミロはつい最近、可愛がっていた甥が自殺してしまい、そのことで深く傷ついているのは確かだ。徐々にわかってくるのだが、甥の父親に当たる自分の兄は、2人の父親と同様に統合失調症で手が焼ける。自分にも同じ血が流れているので、精神的なことでも心配があり、ドラマ中ずーっと暗い雰囲気なのである。そういう精神的傾向があるので、逆にそれが捜査で何か役立つのかというと、捜査の方は至って平凡でトロい。
ま、彼の所属するバルセロナ警察は、署長まで汚職に手を染めている内通者なので、その意味では数少ないまもとな刑事ではある。
ミロの上司が、ミロを復職させるのにあたって、彼を監視させる意味で相棒につけたのが、マドリードの国家警察から出向しているレベッカ・ガリード警部補(ベロニカ・エチェーギ)。
彼女の方も、律儀ではあるが、あんまり役には立たない。ま、最後の力を振りぼって撮影していたとおもわれるので、少々影が薄くても仕方がないだろう。ご冥福をお祈りします。
ドラマの出だしは残忍な殺人と、続けての有力者の誘拐と、さらにはスクープを狙うあこぎなブロードキャスターへ情報提供が行われるなど、前半はこれでもミステリアスな展開だが、それが後半に入ると犯人側も描かれて、視聴者には、ネタバラシが行われる。
サスペンスとして視聴者をドキドキさせるエンタメが主題ではなく、もっと深みのあるドラマにしたい・・という製作者の意向は明白だが、それもまた中途半端になってしまっている。
このドラマに詰め込まれている要素は、確かに複雑だ。
1)バルセロナという都市の魅力、オリンピック前のノスタルジーも含め魅力を語りたいようで、多くの当時の映像が挿入される。
2)ガウディの偉大な建築物。サグラダ・ファミリアだけでなく、グエル公園、グエル邸、カサ・ミラ、コロニア・グエル教会など、一通り登場する。
3)主人公ミロの苦悩。自分を慕ってくれた甥の突然の自殺。(結局、真相もわからない)その父親である兄は、統合失調症で、最後には病院に入れる決断をしなければならない。(早くしろ!)
4)オリンピックによる再開発で、表面上綺麗になった街とは裏腹に、虐げられた人々や影の部分があったこと。(ちょっと中途半端)
5)カタローニャ社会の腐敗の実態。警察内部まで腐敗している。誰がまともか、なかなかわからない!
6)視聴率競争のために、手段を選ばないブロードキャスターの自業自得。
7)オリンピックの再開発で自宅と父親を奪われ、歪んだ権力者の孤児院で性的にも虐待された犯人兄妹の怨念。(まあ、このへんも直接的な表現はほぼないが)
と、いうことで、すぐにわかる通り盛り込みすぎであり、当然のように失敗しているようにおもう。それぞれの要素、全てが正直中途半端に描かれる。
要素は詰め込まれているのに、間接的で曖昧な表現の繰り返しなので、45分6話の短いシリーズにもかかわらず、大変ながく感じられた。
設定が、現代(2025年)ではなく、2010年という微妙な年になっていて、「なんで?」と思っていたら、事件のハイライトがサグラダ・ファミリアにローマ教皇がやってきて献堂式を行うという大イベントに合わせて、犯人が大きな惨事を引き起こすつもりであたことがわかるのだが、ノスタルジーが感じられる時代でもなく、一方、やや昔なの捜査の手順や、技術も遅れていて、すっきりしない。
BBCもののように、実際に起こった事件を基にしたドラマなのであれば、致し方ないが、フィクションでこの設定は、ちょっと気持ちが悪い。
何れにしても、全てが、少しだけ「ヌルい」という感想を逃れないドラマである。
By 寅松
