海外ドラマ

捜査官ヴィルヘルムセン〜吹雪に閉ざされたホテル

吹雪のすごさが半端ない!ノルウェーの冬のホテルなんてごめんだな!

Blindspår
2025年 スウェーデン カラーHD 55分 全4話 Fifth Season、Amazon MGM Studios/Amazon Prime Video AXNミステリー・チャンネルで放映
原作:アンネ・ホルト(『ホテル1222』枇谷 玲子訳:創元推理文庫) 監督:エーリク・ショルビャルグ 脚本:サラ・ヘルト、エーリク・ショルビャルグ 
出演:イーダ・エングヴォル、ポール・スヴェレ・ハーゲン、モンス・クラウゼン、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン、ファビアン・ペンジェ、エドヴァルド・オルソン、シセラ・カイル、ディラン・グウィン ほか

 ノルウェーの作家、アンネ・ホルトにより書かれたミステリー<1222>(邦題:「ホテル1222」)の最新ドラマ化作品。日本発行元創元社の推し文句が「ノルウェーミステリの女王がクリスティに捧げた」みたいな感じなのだが、これは「クリスティ」と一言入れるか入れないかで売り上げが大いに変わってくる(と、思われる)出版社の事情が大きいのではないかと邪推する。
 確かにホテルに閉じ込められた、列車事故の避難乗客たちの中に殺人者がおり、次の殺人も発生するのだが、コージーミステリーというのんびりした推理ものというより、もう少し様々な狂気が入り混じる現代的な密室劇である。
 主人公のハンネ(イーダ・エングヴォル)は、(原作者のシリーズでは)本来こういうキャラではなかったようだが、この作品では少し前の捜査で下半身不随になって、ちょっとやさぐれている。

 オープニングが秀逸だ。ハンネが目をさますと、自分は転倒した列車の中で仰向けになり、太もももには誰かのスキーのストックが突き刺さっている。その場面から時間が遡り、スウェーデンからノルウェー領に入ったあたりで側面の雪崩が烈車を襲う工程が示される。刑事であるハンネは、実は捜査中に銃撃にあって下半身麻痺の状態。しかも、相棒の刑事は運悪く銃殺されてしまい、捜査判断を問われたハンネは、目下停職中ということらしい。
 厄介払いのためか、ハンネは、上司(ヨハン・ヘデンベルグ)から亡くなった同僚の遺骨を、葬儀のためにノルウェーの実家へ届けるように命じられる。渋々、ノルウェーのナルヴィクまで急行列車に乗り込んだハンネだが、予約したはずの車両はロックされていて、車掌(モンス・クラウゼン)は何人かの若者とハンナを別の車両に誘導した。
 ところがノルウェー国境を超えると凄まじい雪崩で車両はなぎ倒される。
 ハンネはようやく、近くにいた医師マグヌス・リング(ポール・スヴェレ・ハーゲン)らに助けられて救出されるが、外は猛吹雪で当分救助隊も近づけない状態。近くのホテルからスノーモビルで救助が駆けつけ、乗客たちは全員、そのホテルで救助を待つことになる。しかしこの移動時点で、ハンナたちは車掌が殺されているのを発見してしまった。
 彼らが吹雪をやり過ごすことになったホテルは、かなりアンティークな木造の建物のホテルで、霊感のある老夫婦の妻イヴォンヌ(シセラ・カイル)は、閉じ込められている霊がいると宣言する始末。しかし妻の心配をよそに、深夜、工事中の上層階を調べてにでた夫のヴィクター(キェル・ベルキビスト)は、翌朝遺体で発見される。

 避難している列車の乗客の中に殺人犯がいることは、明らかだ。
 娘の所属する女高生ハンドボールチームを引率している医師マグヌスは、刑事であるハンナに捜査をするように迫るが、国境を超えているために捜査権がないとハンナは及び腰。
 避難客の中には、どうやら怪しげな人間が沢山いる。のちには、ナルヴィクでネオナチのデモに参加するつもりだったことが判明する、ガラの悪いヤンキー集団。ヤンキーたちを焚きつた黒幕で、極右ネオナチの活動家とその愛人らしき弁護士。
 どうにも反抗期らしいマグヌスの娘のノラ(エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン)は、ヤンキーの中で使い走りをさせられている一番年下のエイドリアン(ファビアン・ペンジェ)が気になるし、その友達はヤンキーの一人エミル(エドヴァルド・オルソン)とベッドに直行するしまつ。
 そのほかホテルのマネージャー・(マウゴルザタ・ピエチンスカ)とその息子のデニス(フリップ・ミウジェン)も何かを隠しているようだ。
 「会議に遅れるわけにいかない!」と主張する間抜けなビジネスマンがホテルのスノーモビルを盗んで脱出を図ったあと、雪の中で遭難し、遺体となって発見されるが、それと行動を共にしたらしいエイドリアンの行方は不明のまま。
 その頃、ハンネはホテルからすこし離れたリフト小屋の明かりがついていることを発見し、そこに誰かが潜んでいるに違いないと目算を立てる・・・。
 そこには、エイドリアン・・だけではなく、思いもしない人物たちが潜んでいた。

 確かに主人公のハンネのキャラクターはすこし面白いのかもしれないが、ちょっと日本人にはわかりづらい。レスビアンで女性のパートナーと結婚している美人さんだが、男に対しては完全に命令口調。
 自分は車椅子でないと移動もできないが、とにかく周りの人に命令して、なんでもやり遂げようとする。
 ただ最後の、アクションとなると、さすがにできるこが限られてくるのは、ややかわいそうではあるが・・。
 物語の方も、ノルウェーが舞台ではあるが、スウェーデンとトルコの情報部が関わる仄暗い陰謀が顔を見せ始め、ちっともコージー・ミステリー的なほのぼのしたオチではない。特に主人公ハンナのパートナーがトルコ系であることまで圧力に使われる最後は、ややダークなエンディングだ。
 多彩なキャリアを持ち、政治家まで経験した原作者、アンネ・ホルトの作品だけあって、その辺は呑気な作品でもない。

 名門スタジオのMGMが、ベゾスのAmazonに買収されてしまい、そのAmamzon MGMの名義でいち早く製作された作品になった。本国スウェーデンのみ、Amazon独占で放映されたが、世界的にはFifth Seasonが配給している。
 豪勢にお金がかかっているとは言わないが、雪崩や列車脱線のCGなども比較的頑張っているし、舞台である木造建てのホテルも、ちゃんと立て込んであるのはわかる。
 それにしても、北欧の吹雪ってやっぽすごいんやなあ!(笑)

 日本ではもはや、比較的早くアップされるマイナー映画くらいしか見るべきものないAmazon Primeのドラマ部門を、このAmamzon MGM Studioが強化することになるのか?それがすこしだけ気になる作品ではある。