埋もれる殺意〜6年の封印〜 (吹き替え版)
サニーがひたすらかわいそうなシーズン5!
2023年 イギリス カラーHD 55~60分 全6話 ITV WOWOW/ミステリーチャンネルで放映 Hulu/U-Nextで配信
クリエイター:クリス・ラング 監督:アンディ・ウィルソン
出演:サンジーヴ・バスカー、シニード・キーナン、ジョーダン・ロング、キャロライナ・メイン、イアン・マッケルヒニー、ヘイリー・ミルズ、マルティナ・レアード、マックス・ライハート、リース・イエーツ ほか
前シーズンで、なんと主役のキャシー(ニコラ・ウォーカー)が交通事故で突然死するという、とんでもない終りかたをした、ITVの看板シリーズの第5シーズンである。
クリエイターのクリス・ラングと監督のアンディ・ウィルソンは引き続き担当しているので、雰囲気はいままでのまま、オープニングも変わらずで続行だが・・、いかんせんこちらのモティベーションは、なかなか難しい。
それでも、慕っていたい親分キャシーがいなくなって、個人的な問題でも振り回され続けるかわいそうすぎるサニー(サンジーヴ・バスカー)は、「見てやらないとな〜」という気持ちにさせる1本だ。
本国でも多少視聴率は下がったものの、壊滅的というほどではなく、すでに2025年にはSeries 6も放映されているので、まだ続くということでしょう。
いつも脚本はいいですが、今回は特によくできている。本作は、一貫してのちに犯人であることがわかる人物であることがわかる人間の日常も並行して描かれるため、いわゆるミステリー的犯人探しは主題ではない。
イギリス社会のなかで、それぞれの地位や境遇で生きる人が、自分史の中で忘れ去ってきた過去の過ちに向き合うのが、テーマであり、結果として常に様々な階層、人種、地域の人物を扱ってきた。
しかし、今回は保守党の元政治家で、新自由主義的な政策で行政の福祉予算をカットしてきた人物が、彼が若い頃に起こしたレイプにより、その後4世代に渡って不幸を背負うことになったアフリカ系移民の事件に向き合うという構図により、社会問題点を如実に浮き彫りにすることに成功している。
しかも単純な対比ではなく、そこにポーランド系ユダヤ人の元カウンセラーの苦悩と、自らもインド系のサニー、アイルランド系の新担当警部ジェシカ・ジェームズ(シニード・キーナン)が事件を追うことで、より複雑な現代英国社会を投影しようとしているのはさすがである。
物語は空き家となっている屋敷の煙突の中から発見された、女性のミイラ死体から始まるが、着任したばかりのジェシカ(ジェス)・ジェームズ警部は、自己中心的な上に高圧的態度で、過去の事件への対応に驚くほど後ろ向き。キャシーをなくしたばかりのサニーとチームは、初めから彼女へは信頼を抱けない。
ジェスは、着任数十分前の出勤間際に、夫スティーブ(アンドリュー・ランセル)から、浮気をしたと告白されたばかりで、仕事どころではなかったのだ!
一方の優しいサニーの方も、キャシーを失った喪失感は大きく、婚約者のサル(ミシェル・ボナール)が思わぬ妊娠をしたことで、さらに私生活でも追い詰められる結果になる。
捜査過程と並行して描かれるのが、元保守党の大物政治家であるトニ・ヒューム卿(イアン・マッケルヒニー)の日常。もともと新自由主義的な福祉切り捨てを掲げてきた政治家だが、今はなぜか心変わりして地域の福祉に尽力しているが、担当医師からは癌の末期であることを伝えられている。
並行して描かれるのは、女性のバッグをひったくり、そのカードを売り払って日々の薬を手に入れるヤク中の若者ジェイ(リース・イエーツ)と、個性的な料理人デイビッド(マーク・フロスト)のパートナーとして事業を成功させようとしているエベレ・ファラデ(マルティナ・レアード)、そしてフランスで倉庫の仕事とウーバータクシーを掛け持ちして、恋人エリス(クレア・ガナイエ)との生活の基盤を築こうと努力しているカロル・ウォイスキー(マックス・ライハート)のエピソード。
被害者の名前がプレシャス・ファラードで、売春を繰り返していた地中海系の麻薬中毒者の女性であったことがわかり、それぞれの人物との接点が次第に明らかになってゆく。
プレシャスは、エベレがウェールズのカルト集団の創始者ベルとの間に設けた娘で、カロルはプレシャスを担当していたソーシャルカーカーであったが、ヒュームらの政策で予算をカットされ、思うようなサポートもできず離職していた。
今回は、ジェスとサニーは最後まで個人的な問題で振り回されるが、お互いの苦境を思い切って告白することで、ようやく5話目にして和解し、真相に近いづいてゆく。
スイスに安楽死のために出国する空港機内で、ようやく逮捕することに成功したヒューム卿と、ようやく出頭してきたエベレの口から語られた真実は、驚くべき物語であった・・・。
結局、事件を当日目撃していた当時15歳のジェイの証言が決め手となるが、最後の最後にジェイは、祖母であるエベレと初めて出会い、証言が嘘であることを打ち明ける。ヒューム卿は、なぜかジェイの証言を認め、自ら殺人を求めるという不明瞭な結末になるが、それはある意味、ヒューム卿なりの精算と贖罪なのだろうと思わせるエンディングだ。
もちろんヒューム卿自身は、安楽死を選ぼうとしていたので、自分が収監されることへの不安はないだろうが、普通であれば家族の名前を汚すことに躊躇を覚えるだろう。しかし、脚本的に早い時期に、ヒューム卿が高校で女子をレイプするという問題を起こしてた孫を叱咤するシーンや、妻であるエマに秘密を打ち明けようとして、「いいえ、知りたくないわ!やめてちょうだい」と拒否されるシーンを盛り込んで、その決断の背景をうかがわせる周到な構成は、さすがである。
トニー・ヒューム卿を演じたのは、「ゲーム・オブ・スローンズ」などでも知られる北アイルランドの俳優イアン・マッケルヒニー。
役としてはチョイ役だが、トニー・ヒューム卿の妻、エマを演じているのは、なんとヘイリー・ミルズ!ポール・マッカートがジョージ・マーティンとともに音楽を全面的に担当したことで有名な、67年のコメディ映画「ふたりだけの窓」<The Family Way>の主演として知られていますが、20歳でアイドル的存在であったにもかかわらず、本作を担当した映画監督ロイ・ボールティング(53歳で既婚)とのちに略奪婚をしたことでも名を残しました。
そして、今回からドラマを牽引することになったジェシカ・ジェームズを演じているのも、アイルランド出身のシニード・キーナン。
最新出演作は、この間Netflixで公開された「ベルファストから天国に行く方法」で、不満爆発主婦ロビン役を、イメージ通りに演じている。とにかく「厳しい妻」って、誰もが思うようなタイプなんでしょう!
※(本サイトでは通常、全て字幕版を紹介しているが、本作に限っては、ほぼ字幕版が供給されていないため、吹き替え版視聴による感想であることをお断りしておきます)
By 寅松
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