ベルファストから天国に行く方法
北アイルランド人から見ても、アイルランド人はちょっと不気味な奴らだという話か!
2026年 イギリス、アイルランド カラーHD 47~56分 8話 Derry Products、Hat Trick Productions/Netflix Netflixで視聴可能
クリエイター:リサ・マッギー 監督:マイケル・レノックス、ジョージ・ケイン、ラクナ・スーリ
出演:ローシン・ギャラガー、シニード・キーナン、キーリーン・ダン、ナターシャ・オキーフ、ブロナー・ギャラガー、ダラー・ハンド、ジョシュ・ファイナン、シアーシャ=モニカ・ジャクソン、エメット・スキャンラン、ミシェル・フェアリー ほか
アイルランド紛争真っ只中の90年代、北アイルランドの街デリー(ロンドン・デリー)を舞台に、カトリック女子校にかよう4人の女子とおまけの男子の青春を描いた、印象的な青春コメディ「デリー・ガールズ 〜アイルランド青春物語〜」。アイルランド、イギリスをはじめ、世界でヒットしたこの作品の原作者でクリエイターの、リサ・マッギーが、Netflixのために手がけた新作コメディ・スリラー・シリーズが、本作「ベルファストから天国に行く方法」である。
「デリー・ガールズ」の設定からもわかるように、リサ・マッギーの立場は(本人の生い立ち通り)、イギリス領である北アイルランドに住む、アイルランド系(カトリック)の視点である。つまり、プロテスタントのイギリス系とも軋轢/わだかまりがあるのだが、じゃあ南(アイルランド共和国)と、同じ気持ちかと言われれば、そうではなくて、なんか「南の人は、田舎者すぎて理解不能!」と思っている感じなのである。
この辺の微妙な立ち位置とギャップをわかっていないと、(日本人には)なにやらよくわからないドラマではあるかもしれない。
今回の舞台は、北アイルランドの首都、ベルファスト!ま、デリーよりは大きいが、大都市ってほどではないのだが・・。かつて、この地のカトリック女子高「悲しみの聖母女子学園」に通っていた親友4人組のうち3人にメールが送られてきたことで、3人は再会することになる。
高校を出てからすでに20年。38歳という微妙な年齢!
なんだか、サントラでスパイス・ガールズ調の曲もかかり、その世代か!と納得したが、実はかかっていたのはスパイス・ガールズそのものではなく、スパイスのアイルランド製コピーのようなビー・ウィッチド(B*Witched)と、少し後でリバプールからデビューしたアトミック・キトゥン (Atomic Kitten)の曲でした。なるほど!やっぱり細いね。
高校時代には、なぜか「離れても離れられない・・」などという謎の契を交わして、お互いに刺青を彫った4人組だったが、もはや全然違う環境で生活しているために、会うこともほとんど無い4人。
しかし、長い間会っていない仲間の一人、グレタ(ナターシャ・オキーフ)が突然死んだという知らせを受けて、今はイギリスでテレビ脚本家をしているシアーシャ(ローシン・ギャラガー)、高収入の夫と結婚したが、3人の子育てに不満爆発の主婦ロビン(シニード・キーナン)、IT関係の仕事は休業中か?敬虔なカトリックで母親の介護に忙しいダラ(キーリーン・ダン)は、意を決して彼女の葬儀に出席すべく、ロビンの夫の新車で出かける。
しかし、グレタの暮らししていたのは、ドネゴール。アイルランド共和国の中でも、最後までゲール語が残っていたほどの過疎地である。
スパがあるという触れ込みだった町の唯一のホテルは、怪しげな年代不詳のホテルで、スパは90年代に壊れてから使用は不可だという。しかも、宴会場では夜毎にディスコ・ナイトやらカントリーナイトが催されて、町中の若者が詰めかける。
実は、このへんのドネゴールの田舎っぽさは、ほとんど誇張ではなくて、本当にこういう場所である。(ドネゴールでは、クラナドもエンヤも、アイリッシュ・トラッドさえだれも聴いていなくて、アメリカのカントリーがやたらに人気がある!)
アイルランドの地理でいうと、ど田舎のドネゴールと北アイルランドは接していて、車で行くとわりとすぐである。逆に後から出てくるグレタとジョディー(セリーヌ・ヒズリ)の故郷、ヘヴンズ・ベールがあるのは南の港町コークより奥らしいので、北アイルランドから向かえば、1日ではたどり着けないのも当然の場所なのである。
長いこと会っていなかったにもかかわらず、あっという間に20年前に戻って、ずっと言い争いを続けている3人組は、グレタが母マーゴ(ミシェル・フェアリー)や夫オーウェン(エメット・スキャンラン)、娘マリア(マティルダ・フリーマン)と暮らしてた奇妙な家を訪ねるが、「絶対開けるな!」と言われていた棺をシアーシャが開けてしまったため、死体がグレタではないことがわかってしまう。(グレタの腕にあるはずの刺青がなかったのだ。)
そこから、何者かに付け狙われて怖い思いをする3人。
舞台は、ドオネコール、グレタが出かけていたことがわかるポルトガルのリゾート、そして最後は全ての始まりである、グレタの故郷ヘブンズ・ベールへと。
延々言い争いを続けながらも3人組は、秘密を暴く旅を始める。協力してくれるのは、シアーシャがちょっと好きになってしまった、ダブリンからドネゴールへ左遷されてきた年下の警官リアム(ダラー・ハンド)。
グレタの夫で地元警察の警部でもあるオーウェン、グレタにストーキングしていた変態男だと信じていた男にそっくりな、彼の息子ジェイソン(ジョシュ・ファイナン)、窮地に陥ったアイルランドの女性を国外に逃がす組織の幹部で、殺し屋のブッカー(ブロナー・ギャラガー)などに追われながらも、3人の凸凹捜査は核心に迫ってゆく。
アイルランド景色やドネゴールの田舎ぶりも楽しいが、リサ・マッギーの過剰なセリフが他のドラマには無い魅力になっている。口は悪いが、絆のある3人のキャラクターも面白い。
シアーシャは、面白くもない犯罪ドラマを描いているのだが、期待していなかったブリット・アワード(イギリスのアカデミー賞)を受賞してしまう。一方、ディレクターのセブ(トム・バスデン)との婚約も重荷に。
ロビンは、優しい夫ジム(アート・キャンピオン)の浮気を疑うが、メールの相手は中年男性の上司。それでも、忙しい夫への不満は絶えない。
ダラは、母親の介護をしているつもりだが母親の方は迷惑がっているし、レズビアンの元恋人が結婚することを知ってモヤモヤしている。
俳優としては、『ザ・コミットメンツ』でデビューし、タランティーノの『パルプ・フィクション』や『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』にも出演した個性派女優ブロナー・ギャラガーが、怪しさ爆発の謎の組織のエージェントとして登場するのもおかしいが、彼女の手下として登場するイカれた助手が、「デリー・ガールズ」の主演シアーシャ=モニカ・ジャクソンなのも、楽屋落でたのしい。
ラストで明かされる真相は、想定の範囲だが、アイルランド的な優しさのあるオチは、共感を覚える視聴者も多かろう。
By 寅松
