海外ドラマ

エリス〜覚悟の警部

いまだに粗野で女性に対する差別の残るイングランド地方暑に出向いて、田舎者を黙らせる、強烈な特捜女性警部!

Ellis
2024年 イギリス カラーHD 105分 全3話 Company Pictures/チャンネル5、Acorn TV ミステリーチャンネルにて放映
クリエイター:ポール・ローグ、シアン・エジウンミ=ル・ベール(シアン・マーティン) 監督:ニック・ハラン、ライアン・トヒル、アンディ・トヒル
出演:シャロン・D・クラーク、アンドリュー・ガワー、アリソン・ハーディング、サム・マークス、アオイブハン・マッキャン、ジョッシュ・ボルト、ボウ・ガドスドン、フレイヤ・ハンナン・ミルズ、リナ・マホーニー、チャーリー・デ・メロ、アマンダ・ドリュー ほか

 「シェトランド」「ヴェラ〜信念の女警部〜」で名高い、ポール・ローグと、シアン・マーティンとして女優としても活動しているシアン・エジウンミ=ル・ベールが、クリエイターとして手がけた2時間ドラマ。 「ヴェラ〜信念の女警部〜」の黒人女性版とも言えそうだ。
 北イングランドのピーク地方の<Hanmore>、チェルトナム、コッツウォルズから近いカローウェルを思わせる<Callorwell>、さらにはキャンプに適した森林の景勝地<Brindleton>と3話とも街の名前がタイトルだが、どれも架空の街であり、実際の撮影は気を使ってか?わざわざ北アイルランドに行って行われているので、なんだか意味がない。
 地方警察の人種偏見や女性差別、怠慢、警察ぐるみのパワハラなどなど、これまでも色々見せられてきた問題をオンパレードで見せてはくれるが、その本物感は、英国でもあまり評価されていないようだ。確かに正直「覚悟」のある作品では無いなあ。
 ストーリーのいテンポはいいが、謎解きの方も想定の範囲で、あちこち行った挙句に、そんなに大した話ではなかったなあ・・という結論ばかりである。

 ただし、ローレンス・オリヴィエ賞を3度も受賞しているシャロン・D・クラークが演じた、鬼瓦のような黒人女性(主任)警部エリスが、(いかにもな男性優位社会である)地方警察にロンドンから出向してきて、おっさんたちを黙らせる設定は、若干期待は持てる。うまくすれば、面白いのかもしれないが、今のところありがちなレベルと言えるだろう。

 シーズン1では、真相は何も語られない謎の 「園芸休暇 」を終えて現場に復帰したエリスが、上司であるアリソン・ハーディング(この人はACC<Assistant Chief Constable>=訳せば「警視長」ということになるということになっているのでかなり偉い!)からの電話で、北部イングランドのピーク地方にあるホンモア暑所轄で発生した殺人事件と女性失踪事件を解決してくるように申し付けられる。(第1話)
 水没した車から発見された青年は、将来を嘱望されていた水泳選手で、同乗していたと思われるガールフレンド・マギー(フレイヤ・ハンナン・ミルズ)も行方不明になっていた。田舎警察の捜査責任者ベルモント(クリス・ライリー)は、はなからマギーは殺されていて、マギーの継父であるスティーブン(マイケル・ワイルドマン)が犯人だと決めつけて、まともに捜査する気など毛頭ない。
 ベルモントの部下で、日頃から上司のダメぶりにあきれていたハーパー(アンドリュー・ガワー)は、この事件を機に初めて上司に縦をついて、エリスに協力したためにこの署にはいられなくなり、(ちゃんと説明もされないが)その後、エリスの助手として各地に出向くことになる。
 2話目の設定は、キャロルウェル署(カローウェルという地名があるが、警察署が置かれるような町ではないので架空の署)の女性刑事ジェニーが行方不明となり、署内でも不正があった可能性があるので、そこを仕切りなおしてくるように命じられる。
 ジェニーは、エリスとハーパーの到着早々、遺体で発見されてしまうが、ジェニーは署内でもパワハラを受け、暴力的な夫には支配され、さらには捜査中の地元マフィアの女ボスの息子となぜかラブラブになっていたという複雑な事情が判明してくる。
 3話目は、結婚を間近に控えた大金持ちの娘レイチェルと、オーストラリア人の若者オズが、森深い景勝地で行方不明になり、観光地の警察署の手に余る事件となっているために、エリスとハーパーが派遣される。
 話は、あっちへ行ったりこっちへ行ったりするのだが、正直こんな真相なら暴かなくても良かったような結論である。
 最後にようやくリラックスしたエリスとハーパーが、パブで1杯やることになり、3話を通じてずっとエリスが心配して連絡を取ろうとしていた娘からの返信が、3話目にしてようやくきたところで、終了する。

 犯罪の真相は、いろいろなことが疑われる挙句に、意外な真相であったりすることは現実にもあるだろうし、リアリティを確保する上で、そういう筋書きがあってもいいのだが、なんだか、この二人が出動する犯罪は、いつも結果が大変しょぼい。
 その上、最初のホンモア署の担当刑事(DCI主任警部)ベルモントは、人種差別的に黒人が犯人だと最初から決めつける上に、女性警部が中央から送られたことに単純に怒りを表すようなダメ刑事だが、最後はこいつに華をもたせてやることに。バカを見たのは、エリスに協力したハーパーの方ということに。(まあ、中央に転属になったのだろうが)
 警察署全体が、高圧的な主任警部ヘイン(ティム・ダットン)の元で、女性刑事を差別し、その部下モリソン(サム・マークス)の悪質なパワハラが野放しになっているキャロルウェル署も、ハーパーが妙に優しく、失踪したジェニーの同僚刑事リア(アオイブハン・マッキャン)を慰めたりはするものの、悪質なモリソンが降格になるくらいで、署内の環境は改善されたようには見えない。
 最後のブリンデルトン暑は、もともと観光客のいざこざぐらいしか対応したことのない田舎警察ではあるが、すっかり自信を失って、自分の評価が下がることばかり気にしている女性主任警部コットンを、エリスは励ます羽目になる。

 地方警察の多くの問題点を指摘しながらも、最終的には警察を信頼し、その努力を讃えるドラマを作ることが、クリエイターたちの意図ではあろう。しかし、どう見てもこれらの地方警察に、十分なレジリエンスがあるようには見えないのだが・・。

 一応シーズン2までは、製作が決定いるようで、2025年の6月に撮影予定となっている。

By 寅松