海外ドラマ

弱いヒーロー Class2

だんだんクローズみたいになってゆく、競争社会韓国の残酷青春ドラマ!

약한영웅 Class 2/Weak Hero Class 2
2025年 韓国 37~44分 全8話 Shortcake、Playlist Studio/Netflix Netflixで配信
監督:ユ・スミン クリエイター:ハン・ジュニ 脚本:ユ・スミン 原作:ソパス/RAZEN「弱いヒーロー」(NAVER Webtoons/日本語版はLINEマンガ)
出演:パク・ジフン、リョウン、イ・ミンジェ、チェ・ミニョン、ペ・ナラ、イ・ジュニョン、ユン・ジョンビン、イ・ミョンロ、ユ・スビン、チョン・ペス、チョ・ジョンソク ほか

シーズン1にあたる「Class1」は、衛星チャンネルではなく、韓国のストリーミング会社Wavveが独自製作し、22年に大ヒットしたのだが、Wavve自身の経営悪化で、シーズン2の放映権がNetflix独占となった流浪の名作!なので「Class1(シーズン1)」の方はAmazon Primeでも見られたが(Neflixでも配信を開始している)、「Class2」はNetflix独占だ。
公開から程なく、日本でもドラマ部門で1位になったが、世界的にもNetflixの非英語シリーズ部門1位にランクされた。

物語は、親友になったスホ(チェ・ヒョヌク)が、昏睡状態に陥り、裏切りものとなったもう一人の友人オ・ボムソク(ホン・ギョン)は政治家である父親に海外追放されたあと、主人公のヨン・シユン(パク・ジフン)は、ソウル近郊では底辺校であるウンジャン高校に転入させられたところから始まる。

転校早々、シユンの前に立ちふさがったチェ・ヒョマン(ユ・スビン)は、寺門ジモンそっくりの番長?と思ったら、単なる「番長気取り」だったようで、同校の絶対番長である、パック=パク・フミン(リョウン)は、単に停学中であったということらしい。それで、ヒョマンがでかい顔をしていたのだ。
ヒョマンは、なんとかパク・フミンを出し抜いて、地元各校の不良を束ねている、イルジン連合に加わろうと画策していた。ヒョマンが、連合に上納するための携帯盗難の片棒を担がせていた、オタクで気弱なソ・ジュンテ(チェ・ミニョン)を助けたことから、シユンは、心ならずも校内の暴力闘争に巻き込まれてゆく。
ちなみに、Class1ではヨン(イ・ヨン)という女子キャラがいるが、Class2は、全く女っ気なしの、全編男子ヤンキー・ドラマである。

面白いのは、底辺校であるウンジャン高の番長パク・フミンは、悪党ではなく拍子抜けするほど善良なバスケ部キャプテンであることだ。
常に学内でも近隣でも「喧嘩は禁止」と宣言し、いざこざも許さない。自身が停学になったのも、自分たちに加担しないウンジャン高の生徒を狙う連合の手下たちをボコボコにしたからだ。
シユンは、助けたソ・ジュンテ、フミンの親友で相棒のコタク=コ・ヒョンタク(イ・ミンジェ)、そしてパク・フミンと不器用な友情を育むことになる。
しかし、連合を統括する優等生のナ・ベクジン(ペ・ナラ)は、ウンジャン高とパク・フミンの連合参加に強いこだわりを持っていた。実は、ペクジンとフミンに、中学時代から深いつながりがあったからだ。
結局最後には、オール・イルジン連合とウンジャン高校の一騎打ちに展開するストーリー。なんだか日本の「クローズ」をはじめとしたあまたのヤンキーもの影響を感じる展開になってゆくのだが、それでも、頭脳明晰な優等生シユンが力ではなく頭脳を使って、この大乱闘を制するアイディアを出してゆくところは、こだわりがあってよい。

「反日」などというレッテルでドラマを見たりはしないつもりだが、このドラマと、近年の韓国映画の話題作を比べると、視聴層の年齢の差なのか?日本に対する感覚に「違い」があるのも面白い。
例えば、Netflixドラマ「悪縁(アギョン)」がよかったイ・イルヒョン監督の前作映画『復讐の記憶』(2023)は、占領時下に父親も姉も殺された80歳のおじいちゃんが、半ボケになりながらも旧日本軍への協力者と旧日本軍将校を抹殺してゆく物語。
Amazon Primeで視聴が可能になった『オオカミ狩り』(キム・ホンソン監督 2022)は、マニラらから極悪人を運ぶ貨物船内でくり広げられる、悪人vs警官の死闘劇・・・と見せかけながら、実は主演のはずのイ・ソングクもチョン・ソミンもパク・ホサンもすぐに殺されてしまい、最後は旧日本軍が密かに人体実験でつく出していた、人間殺人兵器が蘇って全員を殺すという、無謀なSF映画。
同じくAmazon Primeで見られる2024年ヒット作『破墓』(パミョ)に至っては、先祖の墓に呪いがかかっているという富豪の先先代の墓を掘り返した、ムーダン(巫堂)2人、風水師、葬儀師たち(チェ・ミンシク、キム・ゴウン、ユ・ヘジン、イ・ドヒョン)が、強い呪いと怨霊を超えた化け物と対決・・。その化け物の真相は、旧日本軍の陰陽師により、日本軍協力者であった先祖の墓に埋葬されていた戦国時代の武将の兜の怨念が精霊となったものだった・・って!なんだそれ?

「反日」そのものではないにせよ、サスペンスやホラー映画の場合、最強の悪の権化は、すべて日本から来たもので、韓国人は戦後80年、あいも変わらず日本に苦しめられ続けている・・・という構図。これは、実際韓国で最も受け入れやすい物語設定で、国内映画の視聴層では、今日でも間違いのない「安定の筋書き」なのである。

一方「弱いヒーロー」で面白いのは、高校生のレベルになると、少なくとも「日本=悪」の構図が感じられなくて、普通の生活に日本文化が溶け込んでいるところだ。ソ・ジュンテが入っているらしい、ウンジャン高校のアニメ研究会の仲間は、全員、日本アニメおたくらしく、(隠語のように)日本語で励まし合うほど。
コタクとシユンがヒョマンの仲間に襲われている所に、パックが登場する場面では、わざわざスラムダンクの(韓国版)テーマ曲を、自分で携帯で流して登場する。さすがにバスケ部キャプテンらしい。
おそらく、脚本を担当したユ・スミンや原作者のソパスが、特に親日的なわけでもなくて、高校生の日常感覚はこのようなものなのだろう。
全体のストーリーが、日本のヤンキー文化の影響を受けていたといても、驚くにはあたらない。

パク・フミンにちょっとゲイ的な執着を見せるナ・ベクジンは、まるで歌舞伎役者のような風貌だが、「D.P.-脱走兵追跡官-」のシーズン2で、性同一性障害のミュージカル志望の歌手ニーナとして『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』からの曲を歌っていた、ミュージカル俳優ペ・ナラが演じている。
Class1では、シユンは父親と暮らしていたはずなのだが、その父親を演じていたキム・ソンギュンは、「悪縁(アギョン)」が忙しかったか?登場しない。
代わりにシユンに関わるのは、Class1で別居していた母親(コン・ヒョンジュ)の方だ。
キム・ソンギュンが出てこないのは、なんとなくさびしいが、その代わりと言ってはなんだが、各種父親役がおなじみののチョン・ペス(なんといってもウ・ヨンウのお父さんで有名)が、フミンの父親で粗暴なチキン店店主として登場する。
ナ・ベクジンの副官で、やたらに喧嘩が強いイケメン、クム・ソンジェが、どここかで見た顔だと思っていたら、つい最近も「おつかれさま」「恋するムービー」と立て続けにNeflix話題作に出ているイ・ジュニョン(元K-KISSのジュン)であった。「マスクガール」や「D.P.-脱走兵追跡官-」にも出ている。

特別出演ではあるが、「賢い医師生活」「魅惑の人」のチョ・ジョンソクも、ナ・ベクジンのケツ持ち(本物のヤクザ)として、ちらりと登場する。そんなに悪そうには見えないやつだが・・。Class3があれば、がっつり登場しそうな役だ。

Class2は、意外にも、シユンにとってはハッピーな終わり方を迎えるが、どうやらこのエンディングだとClass3を作る気は、満々のようだ!
うーん。

By 寅松