新人捜査官とプロファイラーの落ちこぼれ殺人捜査
こんな深刻な連続殺人ものなら、もう少しそれらしいタイトルを!
2024年 フランス カラー 50~55分 全4話 Atlantique Productions、 Be-FILMS/M6 ミステリーチャンネルで放映
脚本:アミ・コーエン、エレーヌ・ロンバール 監督:ルノー・ベルトラン
出演:エリック・カントナ、ティファニー・ダヴィオ、カトリーヌ・ホスマリン、キャシー・ミンンジュン、ヴィニー・ダルゴー、アリエル・ドンバール ほか
そもそも、タイトルがあまりよろしくない。原題も大変ダサいのだが、邦題は、まるでドタバタ喜劇で、事件自体が大した事件でもなさそうな印象を受ける。(原題も当初は<Serial Hunter>で進められていたが、結局<Murder Club>になったという経緯がある。)
味付けがコメディーなのは確かだが、何しろ事件は、男女のカップルを狙った連続殺人で、男は首を切られて放置されるが、同時に連れ去られた2人の少女(男が二股をかけていたため)を探すと言う、緊迫した物語だ。しかも、その背景には長期にわたり捜査もされなかった、未解決の大量連続殺人も潜んでいる。
日本ではあまり馴染みがないが、フランスの欧米ドラマを多く扱うチャンネルM6で、放映されたミニシリーズ。主人公のダニエル・ハンセンを演じているのが、マンチェスター・ユナイテッドの元スター・サッカー選手でのちに俳優に転身したエリック・カントナ(キング・エリック)というのも話題であろう。
ティファニー・ダヴィオが演じる、もう一人の主役アメリアのキャラクターが、フランスっぽくなくて、とても特殊だ。
刑事部に配属されたばかりの新人だが、やる気がありすぎて空回り気味。見た目も小柄で、大丈夫か?と思わせるが、実は武道の達人で腕っ節が強い!犯罪ミステリーが大好きな母親に育てられて、その期待を裏切りたくない一心で暴走してしまうのだ。元サッカー選手のカントナが演じる、運動音痴の頭脳派プロファイラーとのコンビは、かなりマンガっぽい!
アメリアは、連続殺人犯「シェークスピア」の証人を保護チームのオペレーションについてきたが、間違えて同僚ファーブル(ヴィニー・ダルゴー)を捕まえて証人を逃してしまう失態を演じることになる。
一方、以前はTVなどでももてはやされ、著作も多いプロファイラーのダニエル・ハンセンだったが、5年前に大きな失敗を犯して名声を失った。新しい著作のプロモーションで、久々にTVに出てはいたが、「シェークスピア」について意見を求めらて、「興味がないと」言い捨て放送中に逃げ出してしまう。
実は、どうやらダニエルには、「シェークスピア」らしき男から、挑戦状として失踪した被害者の手がかりが送りつけられているようなのだ。
このままでは捜査から干されたままの塩漬けにされる新人刑事と、連続殺人犯から挑戦状を受けたプロファイラーは、それぞれにまだ事件化されていない17歳のジュリエットの失踪事件が「シェークスピア」と関連していると目星をつけ、仕方なく、お互いを利用して独自捜査を進めることになってゆく・・。
コメディ部分はB級だが、意外にも事件は奥深く、見てしまう。現代の連続殺人鬼「シェークスピア」を追求していくと、死体も証拠もないために警察が今まで立件していない、マニアの伝説的連続殺人犯「幽霊男」の存在に行きついて、その幻の男は、ハンセンに深い関係があった・・。
被害者の首を切り落とした刃物が、警察から流出した過去の犯罪の証拠品であったことから、2人は、パーティーを装ったマーダーアビリア(殺人関連品)の競売に潜入するが、そこで誰よりも熱心なマニアが、富豪のユミ・マサコという日本人(なんと『ホーリー・マウンテン』『海辺のポーリーヌ』の米人女優アリエル・ドンバールが演じている)・・だが絶対に日本人には見えない・・というあたりもツッコミどころ満載。
現在、58歳のカントナが演じる息子と、ディディエール・デ・ネック(73歳)が演じる、その父親のユーグが、まるで親子には見えない!とか・・、満を辞して登場するシェイクスピアことブリューノ・カステロ役のローラン・カペリュートが全く怖いやつに見えない!とか、いろいろ難はある。
その辺を割り引けば、周囲の言うことは全く聞かない唯我独尊のプロファイラーながら、大きな苦悩を内に秘めた男ハンセンを、現役時代には大いに喧嘩っ早かったカントナが演じていて、欧州の人には納得できるニュアンスがあるのだろな、と思える部分はある。
ティファニー・ダヴィオの演技はまあまあだが、欧州ドラマのイベント<Series Mania 2024>に出品された本作で、主演女優賞を受けたらしい。
By 寅松