警視ファン・デル・ファルク アムステルダムの事件簿 シーズン4
いつのまにか絆の強いチームになっているが、構成も変わっちゃったぞ!
2024年 イギリス カラーHD 105分 全3話 Company Pictures NL Film & TV / ITV AXNミステリーで放映
原作:ニコラス・フリーリング クリエイター:クリス・マーレイ 監督:ミフィウ・ヴァン・ヤースベルト、エッフェ・ジャンガ、パウラ・ヴァン・ダー・オスト
出演:マーク・ウォーレン、メイミー・マッコイ、エマ・フィールディング、ダレル・ドゥシルバ、アザン・アーメド、キム・リードレ、ルス・ハーフェコート、マイク・リバノン ほか
もはや原作の影は微塵もない。長続きしすぎたオランダ舞台のイギリス人による、イギリス人のための刑事ものである。
元は60年代に、イギリス生まれのニコラス・フリーリングのミステリーで、70年代からITVがドラマ化してきたストーリー。マーク・ウォーレン主演で2020年にドラマ化され、まさにヤング・ファン・デル・ファルクとでも言うべきシリーズとして続いてきた。ついにシーズン4が、お目見えした。
ジョン・シムの「警視グレイス」もそうだが、ITVものは、シリーズが長続きしすぎると、初心を忘れ去ってやたらに事件のミステリー部分をひねくる傾向があるのか?このドラマも、どんどん設定がおかしい事件が連続してしまっている!派手かもしれないが、そんな必要ありますか?という変な犯罪も多い。
1話目「アムステルダムの安全」<Safe in Amsterdam>が今回のシーズンでは一番まともな話。警察が用意したセーフハウスで、裁判の証人であるグレゴールが殺される。その警護をしていたのは、どうやらかつてファン・デル・ファルク(マーク・ウォーレン)の恋人だったらしい王立保安隊の将校カリー(キム・リードレ)だった。どうやら、2人は因縁があるらしく、ファン・デル・ファルクは、彼女が情報をもらしていると言わんばかり。
しかし、もう一人の証人である、アムステルダムの麻薬女王ビビ・フランケン(アナスタシア・ヒル)の息子であるダーン・フランケン(ベン・バット)は、ファン・デル・ファルク自身が裁判所に送り届けたにも関わらず、裁判所の目の前で車ごと爆殺されてしまうのだ。
息子たちを殺したのは、ビビ・フランケン自身なのか?しかし、ファン・デル・ファルクをカフェ・シェルティマに呼び出した彼女は、逆に「誰が息子を殺したのだ!」と逆上していた・・。
2話目は「アムステルダムの希望」<Hope in Amsterdam>は、希少な鳥の不正取引に反対する活動をしていた環境運動家のヘルタ・シャリクが、環境会議の会場で遺体となって発見される話。近くの防犯カメラには、2年前に失踪して死んだとされていた有名歌手のコビー・ステヘンハ(ラティーシャ・フォールヴェイ)が写り込んでいた。コビーの父親であるアーチストのマルクス(デニース・ラッジ)は、今も娘が生きていると信じて、ファン・デル・ファルクらの捜査を妨害する。
一方、殺されたヘルタの恋人であったフリン・ボーフェンス(マティアス・フォンデ・ヴァイザー)は、希少鳥類の密輸業者、ミートボールと繋がっていることがわかるが・・。
3話目、「アムズテルダムの秘密」<Secrets in Amsterdam>も、クラブで環境映像を流しにきた男が、殺されてビルの上から突き落とされるという話。しかし、殺されたティホ・ボス(キーファー・ズワルト)は、生命学者で遺伝子組み換えによる画期的なガン治療薬を開発してそいの答えを見つけたらしい。映像の方は、ティホの恋人アリスが作っていたもので、そこにはティホによって多くのキー画像が追加されていた。
ファン・デル・ファルクたちは、ティホが死ぬ直前に会った元研究指導者のレイ・メスマン(ローミン・コーネン)、メスマンが以前に雇われていた世界的富豪(イーロン・マスク的な変わり者)フレディ・クリンク(サム・クレイン)、クラブでティホに絡んでいた髪の毛がピンクの女インゲ・ポルムベルク(アムリタ・アチャリア)らを追跡するが、連絡してきたメスマンは、ファン・デル・ファルクとルシエンヌの目の前でバイクの狙撃者に銃殺されてしまう。
この回にも、クリンクの情報をもらうという口実で、警護担当のカリーがちょっとだけ登場する。
全てが、「張り出し」として特殊な状況で殺された被害者が登場し、それぞれがまた必要以上にヘンテコな舞台設定である。3話とも、金が絡む巨大な犯罪がバックにあると思わせておいて、犯人が意外にも全然関係ない私恨で動いていたというのも同じだ。
2話目と3話目は、無理やり感があり、かなり厳しい。クリス・マレーさんもお疲れなのだろう。
まず2話目では、環境保護と野鳥の輸入は、最終的に何の関係もないし、失踪したコビーが、有名な人気歌手である必然性も全くない!
3話目の方も、画期的な治療薬を(製薬会社の株を持つ)大富豪が潰そうとしてるという見立ては無関係(民主主義の脅威である、ガチキチガイ・イーロンとは違って、オクスフォード出身のサム・クレインが演じるクリンクは、意外にいい奴として描かれている)で、意外な人物と、クリンクと破局した元王立保安隊出身の女性殺し屋が関わっているという落ちだが、だったら、治療薬を世間に発表させないように葬る理由は、ほとんどないように見える。盗んで自分の手柄にしたいだけなら、ギリギリで阻止する殺人は無意味すぎる。
しかも最後に見つかる、ティホが残した創薬の手がかりってのは、正直中学生が考えたミステリーかよってくらい馬鹿らしい。
ミステリーの馬鹿らしさはともかく、今シーズンは、孤独を愛するはずの主人公ファン・デル・ファルクは、恋人レナ(ルス・ハーフェコート)に骨抜きにされて人が変わったのか。チームを家族のように愛する男として描かれている。
しかし、前のシーズンで強引にチームに加わり、過去の因縁がありそうな描かれ方で、このシーズンでは「縦糸として活躍するはず!」と思われていた、シトラは頭からいなくなっている。どーゆーことだ!会話の中で、「シトラは、いまギリシャだ!ユーロポールに移ったんんだ」の一言で済まされました。その関係で、突然、以前の恋人で因縁のある女としてカリー・ティンカースが登場。
チームで代わりにこき使われるのは、エディ(アザン・アーメド)一人。犯人グループに拉致されても、結構な時間、まともに探されもせずに、自分で脱出するくらいである。
さらに今回、チームの心配事として浮上するのは、検視医である偏屈なヘンドリック(ダレル・ドゥシルバ)が、自己診断で自分が咽頭ガンであることを知るが、皆が説得しても、病院での診断治療を拒否するという事態。
皆で協力してヘンドリックを酔っ払わせて、救急車で診断しようと運ぶが、採血中に飛び起きて逃げ出す姿はなかなか傑作。当然最後には、皆の熱意に負けて病院に行くところで終わるのだが・・。
ま、人気はあるのかもしれないが、正直このへんで限界ではないですか?ほんと。
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By 寅松