警視グレイス シリーズ4
妻失踪の真相って、そんなことでよかったのかい!
2024年 イギリス カラーHD 105~110分 4話 ITV Studios/ITV AXNミステリーにて放映
クリエイター:ラッセル・ルイス 脚本:ベン・コート&キャロライン・イップ、エド・ウィットモア、ジェス・ウィリアムズ、トニー・マーチャント 監督:ブライアン・ケリー、ケイト・サクソン、ビリー・エルトリンガム、ダン・ゼフ 原作:ピーター・ジェイムズ(「ロイ・グレイス警視」シリーズ)
出演:ジョン・シム、リッチー・キャンベル、クレイグ・パーキンソン、ローラ・エルフィンストーン、ゾーイ・タッパー、クレア・カルブレイス、サム・ホアー、ロバート・グレニスター、ローラ・ハドック ほか
ジョン・シム主演の「警視グレイス」シリーズの、第4弾。実は、すでにシリーズ5も進行してるらしい。
そもそも、ある時、妻が神隠しのように失踪して、それ以来やる気を失って、ダウンジングを頼りに捜査をしたりする、あぶない陰鬱警視であったはずなのだが・・・途中、新しい恋人クレオ(ゾーイ・タッパー)ができて、人が変わって明るいやる気まんまん警視になってしまったという、ロイ・グレイス(シム)のお話だ。それにしても、そもそも「警視」(Superintendent)って、そんなに現場で捜査に当たるのか?
いずれにせよ、本作は、日本では2作しか翻訳されていないものの既にシリーズ19冊を超えている、作家ピーター・ジェイムズのれっきとした原作「ロイ・グレイス警視」シリーズがある。本ドラマは、ほぼこの原作に従って忠実に制作されているのだ。
シリーズ4では、2013年に刊行された<Dead Man’s Time>「時計の暗号」から、2014年の<Want You Dead>「殺人の魔術師」、2015年の<You Are Dead>「殺しの烙印」、2016年の<You Are Dead>「迫る毒牙」の4作がドラマ化された。
シリーズ3の最後に、行方不明中の妻らしき人物が、グレイスの留守に家に入るシーンが描かれて、どーなるの?と思われたが、いよいよ本シーズンではその妻サンディ(クレア・カルブレイス)が登場!失踪の真相が語られたりします。しかし、えーっ、そんなこと??と、なるのでした。
最初の方では、主人公のグレイスは、妻の失踪という人生の闇を、次第に自分の中で消化してゆく・・文学的部分のあるお話なのだろうと予想していたのですが、まったく予想は裏切られました。最後はかなり実質的に、妻問題が終結する。
しかも、グレイスさんの方は、新しい恋人ができちゃったので、正直言ってあれほど騒いでいた妻の発見には、少々迷惑気味。
本シリーズの最後に妻は本当に消えますが・・・、失踪時妊娠していて、8歳になる息子が「あなたの息子だから、面倒みてね!」とおまけの爆弾が落とされます。
シリーズ3の最後で、暮らしているドイツからブライトンに戻り、ロイの留守中に家に入ったのはDNAを採取する目的だったようです。
実は、失踪していた妻サンディは、グレイスの天敵で、今は警察本部長補佐にまで出世しているキャシアン・ピューと浮気をしていたので、妊娠した子供が誰の子かわからずに、パニックになったというのが真相だったようです。かわいそうなグレイスですが、このことはまだ知らされていません。
まあ、妻問題の方はともかく、毎回の事件の方も派手さが増している気が!
1話目は、老婦人アイリーン(キャロリン・ピックルズ)が殺されて、高価なアンティークの時計が奪われた事件。その背景には、実は40年も前に彼女とその兄ギャビン(あの、「ライフ・オン・マーズ」でのジョン・シムの相棒役フィリップ・グレニスターの実兄、ロバート・グレニスター「刑事シンクレア シャーウッドの事件」「華麗なるペテン師たち」が演じる)が、目の前で連れ去られた時計職人の父の秘密が、時を超えて明らかになるという話。
2話目は、過去の事件で、被害者たちや警察にも恨みを持っているゲイの元奇術師の男ウィットロック(スコット・ハンディ)が計画した、劇場型の不思議な犯罪に警察が翻弄される話。
3話目は、舗装道路を掘り返す工事を行なったために、偶然発見された30年前の遺体と、最近発生した誘拐事件が、<You Are Dead>という同じ焼印から関連が推測され始める事件。3人の関係者の名前が上がり、描き方の方も3人組の犯行のように見えるが、実は残りの2人、高校の同級生たちはすでに犯人であるモール(キア・チャールズ)に殺されている幻想だったというトリッキーなややホラーなサスペンス。
4話目も、最初に登場する、夫がフランスのシャトーで急死して怯えている妻、キャシー(ローラ・ハドック)が、実はなかなかやばい女の上に、精神的にも病んでいる爬虫類マニア/連続殺人鬼であることがわかってくるというサイコ・サスペンス!彼女を狙う、米マフィアに雇われたプロの殺し屋トーゥス(ジェームス・コリガン)も登場するが、女に翻弄されてあわや殺されかけるというていたらくに・・。
冒頭のシャトーは、字幕では「バスク地方のシャトー」となっていたが、ヴィンヤードらしいので、サンテミリオン(ボルドー)に実際にある、<Chateau du Basque>をモデルにしているような気がする・・。撮影自体は、英国内イースト・サセックスの邸宅で行われているようだ。
とりあえず、このシリーズに関しては事件は大変派手で、それぞれが大変技巧的。どう考えても凡庸な捜査官には手に余りそうな事件ばかりだが、新しい彼女クレオとラブラブで、かなりやる気があるグレイスは、長年探していた妻の目撃情報にも惑わされることもなく、大活躍でテンポよくなぎ倒してくれる。
前のシーズンでは、夫婦の危機に陥った相棒のブランソン(リッチー・キャンベル)の方は、今シリーズは子育ての大変さはあるもの、妻の大変さを理解して耐える夫としてやり遂げる。
なぜか、全シーズンで急接近した同じチーム内の女性刑事ベラ(ローラ・エルフィンストーン)とたたき上げのベテラン、ノーマン(クレイグ・パーキンソン)は、このシーズンでは付き合っているものの、ノーマンに前立腺癌が見つかって、危機が。ベラは毅然と「別れるつもりはない」と宣言して、関係は続くへ。
そして、もう十分な感じもあるのだが・・・、シリーズ5へと続くのであった!
By 寅松