名刑事コールマンの捜査と子育て両立奮闘記
途中から相棒が、ぜんぜん違う女優になってしらける子育て刑事!
2022年 フランス カラー 90分 全3話 Episode Productions、Be-FILMS、France Télévisions/France 2 ミステリーチャンネルで放映
脚本:アレクサンドラ・エシュケナージ、トマ・ペリエ 監督:二コラ・コパン、サンドラ・ペリン
出演:ジャン=ミシェル・ティニヴェリ、ロマーヌ・リベール、ラファエル・アゴゲ、フラヴィ・ピアンス、アリカ・デル・ソル、テッド・エティエンヌ ほか
出だしは、麻薬組織の取引現場始まる銃撃戦で、主演のジャン=ミシェル・ティニヴェリ演じる刑事コールマンは、危ういところで犯罪組織を大量逮捕して、(すごくとは言わないが・・)ほんの少しだけ硬派なところを見せる。そういうドラマなのかと見せかけて、それ以降は完全にグタグタのおじさん子育て奮闘記になってしまう・・フランス版2時間ドラマシリーズだ。。
最初の1本目はパイロット版なのだろう。細かいところはともかく、パリでは、ハードボイルドに仕事に没頭していた武闘派警部コールマンが、妹夫婦が二人とも事故死したのち、妹夫婦の残した3人の子供を育てるために、のんびりした観光都市エクサン・プロヴァンスの警察署に転勤し、慣れない子育てと、ローカル色満載の事件に振り回されるという当初のコンセプトは、それなりに描けているように見えた。
しかし、大きな問題があって、事情はわからないが、コールマンをエクサン・プロヴァンス署で待ち受けていた地元の女性警部、オードリー・カスティヨンを、1話目では地元ニーム出身のラファエル・アゴゲが演じていたが、2作目からはこの役割が、役名もクロエ・ベッカーとぜんぜん違うものになり、女優もフラヴィ・ピアンスに変更になってしまっているのだ。
彼女たちの位置は、犯罪ドラマとしては主役のティニヴェリとともに、ほぼ主役級なので、なんとなく忘れろと言われても非常に戸惑う。この二人は、ぜんぜん雰囲気も違うし、コールマンへの態度もだいぶ変わってしまっている。
1作目は、一応雰囲気はでているのだが、2作目以降は、事件の方も深刻さは薄れ、要するにおじさんと、親を亡くした可愛い3人の子供たち(長女、次女、一番下の長男)のホームコメディ化してしまうのだ。
ホームコメディとしては、まあそれなりにツボを押さえているだろう。フランス的かどうかは別として、現代的だし、突然両親を失った子供たちは、日常元気そうに見えても、とても複雑な感情を内に秘めていて、大人からするとその対処は、実に難しい。
一番下の弟サム(ノウム・コルドゥーリ)が、姉の携帯を手放さなかったのは、何度も父親の留守番電話の声を聞いて自分を落ち着かせるためだったり。長女ヴィオレット(リリー・サスフェルド)が店でミラーボールを万引きしたのは、みんなに祝われるはずだった誕生日をあきらめきれないからだったし。次女クレア(ロマーヌ・リベール)がキックボードで怪我したふりをしたのは、毎年父親とペアを組んで出場していた、学校のバトミントン大会を回避するためだった・・。
女性にも手が早いコールマンは、早くもクレアの担任の女性教師といい仲になり、週末の旅行にウキウキだが、実はその日は、亡くなった妹夫妻の結婚記念日で、家族でカラオケに繰り出すのが慣例となっていたり・・。
脚本家は、その辺のエピソードは、抜かりなく用意しているので、ティニヴェリのコールマンのてんてこ舞いぶりは想像に難くない。
しかし、事件の方はフランスらしく「犯行の動機」に関しては、さすがに文学的でひねってはあるのだが、ほとんど偶然に起きてしまった犯罪で、「名刑事」のコールマンにとっては、簡単なものばかりのようだ。なんとなく、子供の世話の合間に、片付けてしまえるのがトホホである。
深刻でダークな事件は、昼間の太陽があまりに煌々としているプロヴァンスの風景には似合わないから仕方がないか?
それにしても、コールマンの刑事としてのハードボイルドさがなければ、ドラマの本質は、60年代から続くアメリカの家族ものホームコメディものとなんら変わりがないという問題がある。その辺を、作り手の側が十分理解していないようなのは残念だ。
以前、(英国)ITVが製作したプロヴァンスが舞台のミステリーは、半分くらいはスタジオに作ったレストランや部屋の中での撮影で、少々間抜けな観光ドラマだったが、さすがにフランス製作なので、ロケーションは全て現地で行っているようだ。
ただ、逆にフランス人から見たプロヴァンスなので、イギリス製作ドラマほど観光視点は強調されていない。
ただひたすら、天気が良いだけである。
By 寅松
1話目トレーラー
3話目トレーラー