海外ドラマ

刑事カレン・ピリー 再捜査ファイル

スコットランドの弘中綾香か!?ロリ系豪腕刑事、カレン・ピリーは、やばすぎる犯人を暴きだす!

Karen Pirie
2022年 イギリス カラーHD 100〜105分 全3話 World Productions/ITV AXNミステリー・チャンネルで放映
原作:ヴァル・マクダーミド クリエイター:エマー・ケニー 監督:ガレス・ブリン
出演:ローレン・ライリー、クリス・ジェンクス、ザック・ワイアット、アリヨン・バカーレ、スチュアート・ボウマン、ボビー・レインズベリー ほか

 英国推理作家協会賞(ゴールド・ダガー賞)受賞のスコットランド、女性ミステリー界の重鎮、ヴァル・マクダミードの小説<Inspector Karen Pirie>シリーズを元に、おなじみITVが制作した最新ドラマ。
 スコットランドのセント・アンドルーズ署に務める女性刑事、カレン・ピリーが未解決殺人事件の捜査責任者に抜擢されて、期待/予想を裏切る暴走を始める姿を描く。

 主人公のカレン・ピリーが独特だ。ウエストポーチを巻いたファッションは、あぶないセンスで、おチビさんでロリ顔。外見は可愛いのだが、元気がいいだけでなく物怖じしないし、実は肝が座っている。
 うーん、こういうキャラどこかにいた・・。そうそう、顔が似てるわけじゃないのだが、雰囲気は、まさにスコットランドの弘中綾香だと思えば納得なのだ。
 未だに男社会のスコットランド警察では、カレンは鼻につく女と揶揄されたり、せいぜいマスコットだろうと軽くしらわれることもあるが、本人は一向に気にしない。
 まさに、この新世代の女性刑事カレンに対する、伝統的男社会であるスコットランド警察内の無理解が、とんでもない事態を引き起こすことになる。(笑)

 警察の無能ぶりを告発する、犯罪ポッド・キャストが地元で人気になり、セント・アンドルーズ署の上層部は対策を迫られていた。ポッド・キャストは25年前(1996)に起こった、19歳の女性、ロージー・ダフの事件の捜査が未だに進まず放置されているのは、なんらかの圧力があるのではないか!痛いところをつく指摘を繰り返していた。(図星なのだが・・)
 微塵も事件を蒸し返したくはないが、このポッド・キャストをなんとか黙らせようと考えたセント・アンドルーズ署長で警視正のローソン(スチュアート・ボウマン)は、最初から捜査は暗礁に乗り上げさせるつもりで、絶対に解決できなそうな若い女性刑事を抜擢する。女性を登用して、再捜査をしがダメでした〜!という結論なら、ロンドン警視庁も告発したことのある女性ポッド・キャスターも黙らざるを得ないだろう・・という目算なのだ。
 そこで呼ばれたのが、カレン・ピリー巡査部長(ローレン・ライリー)。
 ピリーは、早速コールドケース再捜査部署を立ち上げはするが、彼女の部下として呼ばれたのは、自分の筋肉増強にしか興味のない、間抜けなジェーソン・マレー巡査(クリス・ジェンクス)で、早くも行く手には暗雲が立ち込める。
 ピリーたちの捜査が、被害者ロージーには15歳で出産した子供がいて、その子が養子に出された可能性があることを発見。これを報告して残っているロージーの髪の毛のDNA鑑定で、その子供を特定したいと報告すると、ローソンは烈火のごとく怒り出し、そんな過去を蒸し返すようなことは、絶対許さんといきり立つのだ!
 おいおい、こいつ本当にはじめから解決する気ゼロだぞ!

 しかし、カレンの面白いところは、男社会のヒエラルキーや忖度とは無縁な、今どき女子であること。自分が、女性だからという理由で抜擢されたことを知って、内心怒りまくるが、すぐに切り替えて勝手にどんどん捜査を進める。
 DNA鑑定を否定されると、今度は情報を持つ民間の養子のルーツ探しサイトの主催者に頼み込んで、ロージーの娘の可能性がある女性を探したり、ポッドキャストの主催者にコンタクトをとって、偶然彼女の遺体を発見したと主張していた、3人の発見者兼容疑者たちとロージーが深夜のパーティーで一緒だった証拠を見つけたりする。
 一方、署内の男たちは、正直どうしようもない。
 例えば、ピリーとはプライベートでも突発的な肉体関係をもっていた元の部署の相棒、フィル(ザック・ワイアット)なんて、見た目は「シャフト」ばりで70年代風アウトロー黒人デカっぽいが、自分より先に抜擢されたのがカレンだと知って、器の小ささを露呈する。
 新しい相棒として、カレンの下につくジェーソンも、見た目はでかく、暇があれば筋肉増強エクササイズに余念がないが、カレンが上に楯突く捜査をしようとすると、そそくさと自分の心配を始める。
 地元警察の官僚社会で慣らされてしまっている男たちは、得意なのは忖度と、署内で波風を立てないことばかりで、事件を解決しようなどという気概はもはや持っていないようだ。
 このギャップは、とても現代的でリアリティもあり面白い。

 しかし問題なのがドラマの作り・・。3話しかないのだが、1話が映画並みに1時間40分くらいある。長すぎだよ!
 物語の始まりでは、1996年当時の事件の真相はほとんど説明されず、それが現在の捜査が進むにつれて、フラッシュ・バックのように当時の事情が徐々に説明されてゆく。若干、フィルターなどがかかっているが、当時の回想と現代の映像の区別がつきにくい。
 もちろん風俗などは微妙に差があるが、スパイス・ガールズやオアシスがヒットを飛ばしていた時代と現在の一瞬で違いがわかるかといわれれば難しい。
 何と言っても、舞台は何世紀も前の遺跡だらけのスコットランドの観光名所だ。警察の建物は変わっているが、パブも大学も1996年くらいでは全く違いがない。
 オープニングでは、カレンがテレビデオ=ビデオ再生機とブラウン管TVが一体となった機械(ずいぶん探しただろうなあ〜)にVHSテープを挿入するカットがあるが、このドラマがもし東京やソウル、せめてロンドンとかを舞台にしたものなら、当時と今の差が、ずいぶんよくわかったかもしれない。(でも、撮るのが大変だ!)

 要するに捜査に応じて、少しづつ当時の真相を小出しにする構成のせいで、ストーリーにはスピード感がない。
 キャラクターは面白みがあるのだが、少なくとも2話目くらいまでは、あんまり生かされていない。
 しかし、最後の方になるとようやく、カレンが自分らしさを発揮し始める。ま、要するに腹をくくって、本来の自分で行こうと思ったということなのか・・その辺の心の動きはほとんど説明はされないが、とにかく、心配しておどおどする男たちを恫喝して、本物の犯人をあぶり出してしまうのは面白い。
 最後の賭けは、ちょっとばかり冒険しすぎの気もするが・・。

 ま、なんかシーズン2も作られせそうなドラマであるが、是非2シーズン目以降は、45分で6本とかにしてもらいたい。