海外ドラマ

リドリー〜退任警部補の事件簿

昭和感たっぷりの、歌うオヤジ刑事!

Ridley
2021年 イギリス カラーHD 60〜65分 全8話 ITV/All3Media AXNミステリー・チャンネルで放映
クリエイター:ポール・マシュー・トンプソン 脚本:ジョナサン・フィッシャー、ポール・マシュー・トンプソン、ジュリア・ギルバート 監督:ポール・グレイ、ブリン・ヒギンズ、ノリーン・カーショウ
出演:エイドリアン・ダンバー、ブロナー・ウォー、ジョージ・ブハーリー、テレンス・メイナード、ジョージー・グレン、ジュリー・グレアム、エイダン・マカードル ほか

 「ヴェラ〜信念の女警部〜」シリーズを手掛けたポール・マシュー・トンプソンと、ジョナサン・フィッシャー(「バーナビー警部」)のコンビが手掛けたITVの最新2時間ドラマシリーズ。日本では1話を前後編で8話にして放送されたが、オリジナルは4話。それぞれが2時間越えの、まさに2時間ドラマである。
 主演は、自らも一部制作を手掛けた、エイドリアン・ダンバー(「ライン・オブ・デューティ 汚職特捜班」や「ライフ・オン・マーズ」のスピンオフ「キケンな女刑事 バック・トゥ・80’s」などで知られる)。
 ロケーションが、なかなかに素晴らしく。イングランド北部、特にランカシャーとヨークシャーの境目あたりの荒涼とした景色が素晴らしい。
 主人公のリドリー(ダンバー)は、元やり手の警部補。なんか、のんびりしちゃって、湖のほとりの自然豊かなコテージで一人暮らし中。街では妙齢の熟女に任せっきりながら、ジャズクラブを共同経営していて、時々店で歌ったりする余裕綽々の人生だ。(笑)
 ま、ダンバーさんの演技力の問題か、諦めの良いキャラなのか、あまり深刻そうには見えないのだが、実はリドリーは18ヶ月前に自宅を放火され、妻子を同時に亡くしたショックから立ち直れずに、地元警察を早期退職。今は、ボロボロのボートを買い取って、いつか湖に出るべく毎日修理に余念がない。
 そこへ、かつての部下で、今は捜査責任者に出世したキャロル(ブロナー・ウォー)がやってくる。森の中で、農場主ジェシー(ロブ・マイケル=ジェームズ)が撃たれた事件で知恵を借りたいというのだ。殺された農場主は、リドリーが14年前に担当した少女失踪事件で、容疑者としてマークていた人物だった。しかしこの事件は、容疑者も絞りきれず、少女の行方も未だにわからない未解決事件となっていた。
 キャロルは、上司のグッドウィン(テレンス・メイナード)を説得し、民間アドヴァイザーという名目でリドリー捜査に駆り出した・・。(1話目「やり残した事件」)
 キャロルはイギリス人らしいごっつい女性だが、家庭では高校生の息子ジャック(タリク・アル=ジェダ)をパートナーの女性ゲーリ(バヴナ・ジャヤンティ)と一緒に育て得ているレズビアンでもある。
 まあ、殺された農場主には、学校にも行かせていない17歳の娘がいたりして、まあわりかし早めにオチはわかってしまうのだが、それなりに細かく事件に関わった人物たちの事情が描かれていて納得できる。
 2話目「過去のない死体」は、風力発電タービンのそばで死体で発見されたホテルの客室係ガブリエラ・バルドーニ(ケリー・バンラキ)を巡り、搾取される不法移民の問題や、犯罪暴露でSNSの脚光を浴びようとするユーチューバーを絡めた犯罪を解決。
 3話目「届かぬ声」では、地元の大物興行主の葬式のために帰国した、美熟女ジャズ歌手イブ(ジョアンナ・ライディング)と、たまたま自分の店で知り合ったリドリーが、鼻の下を伸ばして、30年目に失踪した彼女の弟を探す手助けを始めたことで、闇に葬られてきた児童虐待事件を掘り起こす。
 そして4話目「残酷な真実」では、ようやく縦糸となってきたリドリー自身の妻子が放火で殺された事件の真相が明らかになる。

 どの物語も、凄みがあるほどではないが、そつなくできていて最後まで気持ちよく見られる。

 正直、エイドリアン・ダンバーの演技は、あまり真剣味が感じられないが、多分日本で言えば船越 英一郎の刑事ぶりを見ているようなものなのだろう。
 事件が解決すると、自分のクラブでジャズバンドをバックに唄う歌は、ジャズではなくむしろイギリスらしい俗謡をジャズアレンジした感じだが、ミュージカル俳優でもあるダンバーさんは、さすがに下手くそではない。
 たとえば有名番組で、実際歌手としても歌声を披露しているくらい。

 ちなみに、リドリーを惑わせる美魔女ジャズ歌手役で登場するジョアンナ・ライディングさんもミュージカル女優である。

 一言で言えば、現代的なシャープさはないが、ちょうどいい昭和感が漂う英国サスペンスというのが正解だろうか?
 ダンバーさんの中年2枚目ぶりを楽しむドラマなのだろうなあ・・、きっと!

By 寅松