MO/モー

リアルで辛辣な、自虐ネタパレスチナ移民コメディー!

Mo Season1
2022年 アメリカ カラーHD 23~31分 全6話 A24/Netflix Netflixで視聴可能
クリエイター:モー・アマー、ラミー・ユセフ 監督:ソルヴァン・”スリック”・ナイーム
出演:モー・アマー、テレサ・ルイズ、オマール・エルバ、トベ・ンウィーグウェ、ファーラー・ブシェソ、マイケル・Y・キム、リー・エディ、シェリーン・デイビス ほか

 最近は、移民の境遇をめぐるドラマは珍しくはない。しかし、アメリカのパレスチナ難民のコメディはさすがに初めて。本国アメリカでも絶賛された、笑えるドラマだ。
 そもそも主演でクリエイターも務めているモー・アマー自身、パレスチナ人移民のコメディアンであり、ストーリーのほとんどは彼自身が体験した、テキサス州ヒューストンのアラブ人コミュニティの日常から着想を得たものと思われる。
 ちなみに、「モー」とはモハメッド<Mohammed>を略したもの。とにかくイズラム系/アラブ系にはモハメッドは実に多いので色々な略しかたがあるらしい。

 パレスチナ人であるモー(モー・アマー)の家族、ナジャール家は、イスラエル/ユダヤ人による迫害で、クウェートに逃れていたが、そこでも追い立てをくらい、イラクからアメリカへ逃れてきた。イラク軍は、パレスチナ人の難民から金品をすべて巻き上げる悪辣な奴らで、母親と兄、姉、モーらを先にヒューストンへ送り出した父親(モハメド・ヒンディ)は、現地で拷問も受けたらしい。
 小学生でテキサスにやってきモーは、今や、りっぱなデブのラッパー風。まさにテキサスっぽいオヤジ体型。しかし、アメリカに来て22年になるが、未だに難民申請が受理されず、合法的な職にはつけない。

 しょっぱなから、携帯ショップをクビになったモーは、生活のために駐車場で偽物ブランドを売る稼業に逆戻りだ。(偽物を売る才能は、抜群にある!)
 付き合っているメキシコ出身のガールフレンド、マリア(テレサ・ルイズ)と結婚すれば、国籍問題はすぐにでも解決するのだが、そのことについては彼女に迫られても、のらりくらりと腹をくくらないモー。実は厳しい母親ユースラ(ファーラー・ブシェソ)から、「カソリックの嫁など絶対ダメ」と頑強に反対されているからだ。
 母親には、「マリアは改宗するから大丈夫」と言い訳する一方、マリアに怒られて、カウンセリングに行く代わりに、こっそりカソリック教会で懺悔したりするテキトーさが、モーの真骨頂だ。
 それでも、スーパーでチョコレート味のフムス(フムスは、パレスチナ/レバノン料理のひよこ豆のペーストのこと)を勧められて「俺のおばあちゃんを冒涜するのか!」と怒るモー。店員は、これ、メキシコ料理じゃないの?と意に介さない。自分もほぼアメリカ人ながら、アメリ人の無知さには、苛立つばかりだ。

 アメリカでありながら、もはやアメリカを逸脱した後進国的な側面のあるテキサス。その大都会ヒューストンの特殊な人種的な関係性も見所(いや、笑いどころ)だろう。
 モーの小学校からの親友は黒人(といってもナイジェリア系)のニック(ラッパーのトベ・ンウィーグウェが演じる)で、恋人マリアはメキシコ系。向精神薬を横流ししてくれるチェンは中国系(実際は韓国系のYキムが演じる)ということだろう。
 同じパレスチナ系であるという理由で、詐欺師のような弁護士ロンダ(シンシア・イエール)に依頼しているものの、難民申請は一向に進まない。
 頭にきて新しく依頼したユダヤ人の弁護士リジー・ホロウィッツ(リー・エディ)の態度に、ユースラは不機嫌だが、22年も進まなかった申請は一気に審問へと進展する。(もちろん、あっと驚くような理由で先延ばしにされてしうまうのだが・・)
 パレスチナ人にとってもちろんユダヤ人は天敵なはずだが、アメリカではそう簡単に割り切れないところがリアルでおかしい。

 毎日が、サバイバルではあるが、それでもモーの一家は、最下層の移民ではない。おそらくパレスチナでは裕福だったと思われる父親は、遅れてアメリカにたどり着いた後、地元の99セントストア(100円ショップ)を買い取って商売をしていた。10年前に死んでしまったが、家族には遺産もあるし、ちゃんとした家もある。モーの兄サミール(オマール・エルバ)は、自閉症スペクトラムの症状があり家族も諦め気味。乱暴な姉ナディア(シェリーン・デイビス)は、国籍のためにヘンテコなカナダ人と結婚している。

 後半では、パレスチナの文化であるオリーブ・オイルを手作りしたい母親の策謀で、ヒューストン郊外のオリーブ農家と知り合い、モーは結局そこで働き始めるのだが・・。オリーブ苗木泥棒を追ってメキシコに渡ってしまい万事休すに!
 シーズンの最後は、まさにシーズン2に続く勢いで、ベタすぎるコメディのエンディングでした。(笑)

By 寅松