ロンドン警視庁コリン・サットンの事件簿 シーズン2

17年間野放しにされた異常犯罪に終止符を打った、コリン・サットンの自慢話その2!

Manhunt The Night Walker – Series 2
2021年 イギリス カラー 46分 全4話  ITV Studios/ITV AXNミステリーにて放映
クリエイター:エド・ホイットモア 原案:コリン・サットン 監督:マーク・エヴァンス
出演:マーティン・クルーンズ、クローディー・ブレイクリー、ステファン・ワイト、マシュー・グラヴェル、イアン・カニンガム、ディヴィーン・ヘンリー、スール・リミ、マット・バードック、ジュード・アクウディケ ほか

 2019年に放映された、前作が900万人以上の視聴者を獲得したということで、大変好評だったITV実話ドラマの第2作。ロンドン警視庁に所属していた主任捜査官のコリン・サットン氏の回顧録的犯罪ドラマである。
 いずれにせよ、基本的に犯罪捜査全体の指揮官を務めたサットン氏から見た物語なので、多少手前味噌な部分もあるだろうし、犯罪者の心理などはほぼ描かれない。正直、シーズン1/2とも大変異常な犯罪なので、どんな犯罪者だ!?とても気になるのだが、解決した方から見れば、「頭のおかしい犯罪者の身になって考えていたらキリがない、こっちは捕まえるだけだ!」ということなのかもしれない。
 一方で、警察内部の人動かし方の大変さや、予算や人員の獲得の熾烈さなど、これまでの警察ドラマでは描かれなかった、警察側の緻密な描写は大変興味深い。

 今回は、1992年から2009年までも17年間、南東ロンドンの住宅街を震え上がらせた、高齢者専門のレイプ強盗犯「ナイト・ストーカー」の逮捕劇を扱っている。
 いやあ、さすがにロンドン。とんでも無い奴がいたもんである。
 68代から93代の高齢者の住宅ばかりを狙って侵入し、ばあさんはレイプして、じいさんには自分のペニスを触らせて、バンクカードや現金を強奪して逃げるという奇妙で卑劣な犯行を、17年に渡り繰り返した(2009年逮捕当時)52歳の犯人デルロイ・グラントは、2011年に立件された全ての罪で有罪となり4つの同時終身刑の判決を受けている。実際にこの犯人が関わったとされる事件は、膨大で、100件以上とも、203件などとも言われるが、特定できないものも多いらしい。
 1998年には、メトロポリタン警察はこの犯罪捜査のためルイシャム警察署に、捜査チームを発足させ「ミンステッド作戦」として捜査を行ったが捜査は難航した。現場に残されたDNAから、犯人がアフリカ/カリブ系で、おそらくウィンドワード諸島(西インド諸島の一部)出身であることを割り出したため、2004年以降チームは、地元に住むカリブ系の容疑者約21,000人を選び出し、任意でDNAの採取に応じるよう説得する作業を開始。人種差別的であると批判もされたが、それ以上に多くの人手を取られて、犯人逮捕には近づけなかったようだ。

 ドラマは、ロンドン警視庁のキャンベル警視正に呼び出されたコリン・サットン(マーティン・クルーンズ)が、ルイシャム警察署の特捜チームに数週間赴いて、捜査を「新たな視点で洗い直してくれ」・・と依頼されるところから始まる。
 17年間も解決できない事件を、数週間で洗い直すなど不可能な話だし、これまでなんども同様の作業を行っていたので、それを考えると無茶な話ではあるが、キャンベルも新しい警視総監に、この事件を優先するようハッパをかけられているような様子。
 サットンの部下であるクライブ巡査(ステファン・ワイト)は、ベルフィールド事件の大金星をやっかんで、「失敗の責任だけを押しつける」つもりだと、チームへの出向に反対するが、サットンは、「断るわけにもいかないだろう?」飄々としたものである。
 サットンがルイシャム警察署に到着すると、チームの上級捜査官であるサイモン・モーガン主任捜査官(マット・バードック)は、不在である。しばらくなりを潜めていた、ナイト・ウォーカーが再び犯行を再開したらしい。出迎えてくれたサイモンの副官であるイーサン警部補(マシュー・グラヴェル)と現場に向かうと、一人暮らしの82歳の女性が自宅で被害に遭っていた。
 サットンは頻繁に捜査現場に足を運び、現場を観察。モーガンが、犯人のDNA検出にこだわるあまり、レイプが認められない事件を除外し、また民間人へのDNA提出任意協力で、多くの人員が割かれている実態を目にする。
 サットンは、手口が酷似してながら、レイプでないという理由で対象から外されていた犯罪の多くを捜査対象に加える代わりに、DNA採取や、聞き取りの手順などを減らして後回しにする、省エネ作戦を提案。容疑者の犯行が、加速度的に増加していることを突き止めた。
 サットンは、犯行現場での現行犯逮捕を目指して、大量の人員を投入して無期限で張り込みをさせるため、大予算を本庁に要求する。この予算獲得作戦は、非常にリアルで面白い。同種の事件で予算を獲得した、各部署の担当者にメールを送り、ルイシャム警察署に呼んでアドヴァイスを受ける。それに従っって、プレゼンテーションを用意するはずが、次の犯罪が発生して現場に行った先で、本庁の会議のスケジュールの関係で、明日の朝プレゼンするように伝えられる。
 資料のパワーポイントも、何一つ用意できず手書きのメモだけでプレゼンすることになるが、予算の権限がある副総監も妻の元同僚だったりして、無事予算を獲得。この辺は、サットンさんでなければできない芸当なのかもしれない。

 張り込みを始めると、初日から張り込みエリアのスレスレ外で犯罪が起こり、さらに数日後に、被害者の通報で駆けつけた若い警官が、犯人を長い間追跡するが、ついに振り切られる事件が発生する。
 そのあと、犯行は予想どおりピタリと止んでしまい、大予算をかけた張り込みプロジェクトに暗雲がたれ込めるのだが・・・。

 この恐ろしい犯罪者の人格は、ドラマの中ではあまり解明されない。ただ、犯人の息子デルロイ・ジュニア(アシュレイ・ジャナジャ)を訪ねれことになったサットンたちは、その複雑な人物像の一端を知ることになる。犯人デルロイ(ジュード・アクウディケ)は、なぜか今は多発性硬化症の女性と再婚し、献身的に介護しているという。
 完全に支配できる相手を必要としてるのか?わからないが、現実の話なので、結論は曖昧なままだ。
 今回も、サットンの自宅でのシーンでは、サリー警察の分析官である妻のルイーズ(クローディー・ブレイクリー)が、度々的を得たアドバイスをしてくれる。捜査では突っ走りがちなサットンさんだが、実在の人間なので、妻の尻に敷かれている具合は、なかなか微笑ましい。

シーズン1の評はこちら>>

By 寅松

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