ザ・チーム ヨーロッパ大捜査線

シリア難民とテロ組織の暗躍に、官僚的なヨーロッパ人も本気の協力体制か?

The Team Series 2
2018年 デンマーク、ドイツ、オーストリア、ベルギー、スイス カラーHD 57分 全8話 Fernsehproduktion、Nordisk Film ZDR/DR2 ほか Amazon Primeで視聴可能
脚本:イェスパー・ベルント、ドナ・シャープ 原案:ペーター・フォロスボエ、マイ・ブロストーム 監督:カスパー・ガードセウ、ジャニク・ヨハンセン 出演:ユルゲン・フォーゲル、マリー・バッハ・ハンセン、リン・ファン・ローエン、ナヴィド・ネガーバン、サラ・プルス ほか

 本作は2015年にデンマークで最初のシリーズが放映された、EU域内で起こる事件にユーロポール(欧州刑事警察機構)の枠組で各国の警察が協力して事件解決に当たるサスペンス・ドラマのシーズン2にあたる2018年のドラマである。シーズン1とタイトルは同じで、プロデューサーも同じだが、出演者もまったく違うので、別のドラマと考えていいのだろう。(アマゾンではこのドラマを「シーズン1」として表示しているが、間違いである。)

 雨の夜、デンマークの湿地帯にある農家に、イスラム系の若い男女が辿り着く。2人はFacebookで調べて、そこが違法難民を援助してくれるNPOだと調べてたどり着いたのだ。イギリスに渡るはずの2人だったが、船に間に合わず、匿ってくれる場所を探していた。家主は、渋るがそれでも2人を迎い入れる。
 そこには、他にも同じような境遇のイスラム系の若い難民たち数人が滞在していた。
 しかし、その夜、侵入者により、保護施設ペンション・ヴェンクにいた滞在者とスタッフ計7人が惨殺されてしまう。プロフェッショナルの犯行だ。
 犯人はまるでわからないが、施設を主催していたドイツ人のボブ・ケルナー(サッシャ・アレクサンダー・ゲアサク)は逃走した模様で、被害者の中にはベルギーの情報局の情報提供者であった女性マルワが含まれていた。そして現場には、シリアなどで活動しているテロ組織CU(カリフ連合)のコインが残されていた。(一応名前が変えてあるが、完全にISのことである。)
 現地に急行したコペンハーゲン警察のネリー・ウィンター(マリー・バッハ・ハンセン)を責任者として、ユーロポールの枠組みで急遽デンマーク警察、ドイツ警察、ベルギー情報部の合同捜査「チーム」が結成され、捜査が始まった。ドイツからは、警官のグレゴール・バイス(ユルゲン・フォーゲル)、ベルギーからは情報部で(のちにこの現場で殺されていたことが判明する)協力者のマルワを担当していたポーラ・リーケンズ(リン・ファン・ローエン)が集まってそれぞれの分野で捜査を開始する。
 監視カメラによれば、施設からはケルナーともうひとりの女性が逃げ出していた。当初この女性は、CUに参加すると言って行方不明になり、マルワが探していた妹のサファではないかと思われたが、サファも現場の地下室で殺されていたことが判明する。しかも、翌日近くの草原で警察に発見されたケルナーは、証言する前に犯人に狙撃され、ネリー達は、その逃走車も逃してしまう。
 逃げ出した女性マルー(サラ・プルス)は、実はシリア国立博物館の館長の娘で、シリアで歴史上最も価値がある美術品で「イシュタルの庭」と呼ばれる4枚綴りの黄金のプレートを、夫ともに2枚づつ身につけて、戦禍の間、大英博物館に預けるために持ち出していたのだ。
 大量殺人は、地元のネオナチの若者で現場近くに巨大な鉤十字を署名として残した男、ラスムス(アンドレス・ヒンリックセン)の犯行に思えるが、DNAは一致値しない。
 ポーラの粘り強いシリアの衛星監視と、サファがCUから持ち出してきた書類の解析などから、今回の事件も徐々にCUがシリアから持ち出した美術品をヨーロッパで武器に交換している取引に関係していることがわかってくるのだが・・。

 最初の方は、よくありがちな出だしで期待感は高まらないのだが、テンポもよく、ヨーロッパにおけるヘイトクライムや困惑する地方の人々などが丁寧に描かれていて、面白さが増してくる。事件も複雑だが、それだけでなく、たまたまチームを組むことになる、まったく人格の違う3人の背景や描写も面白い。
 キュートな外見で、若くして情報部で活躍するポーラは野心家で上昇志向が強すぎる。同棲する彼氏は外交などには無関心な自然食推進派で無農薬野菜の生産者。現場で突っ走りすぎる彼女を、陰にひなたに、助けてくれるのは優しい年上の同僚のヤン(トム・フェルメイル)だ。
 修羅場をいくつも潜ってきたごっついネリーは、見た目通り軍人みたいで現場ではさすがの能力を発揮するのだが、シングルマザーであるにもかかわらず一人息子は、両親に預けっぱなし。「今度こそ、一緒に住む」と宣言しても、息子の方に拒否される始末だ。
 ドイツ警察のグレゴールは出だしから女に弱そうで、問題がある振る舞いばかり。実はバツ2で、今の妻との間に3人も子供がいるのに、前妻との間の長女、クラウディア(ルナ・ウェドラー)は、エコテロリストに参加していて、仕事中にも次々と問題を起こす。
 粗暴で感情的になりがちなので、ダメダメなのかと思うと後半で、人の感情に寄り添える性格ゆえか、犯人の説得や証言の引き出しなどが、ネリーよりずっと上手いことが判明する。

 「クロッシング・ライン」など、ヨーロッパでの越境捜査を題材にしたドラマはいくつかあるが、これまでは国際刑事裁判所やユーロポールの官僚的な対応で、一向に捜査が進まないパターンばかり見せられてきた気がする。さすがに官僚的なヨーロッパ人も、域内でネットワークを作る犯罪が増えて、現実にも迅速に対応する必要性にかられているのだろう。このドラマでは、だいぶ迅速に「合同チーム」が動き出す。
 しかし、最後の最後にデンマーク政府は、外交上の難儀を避けたい一心であり得ない決定を下すのだが・・・、そのためにも暴走しがちな男がチームにいるわけだ。

 グレゴリーを演じるユルゲン・フォーゲルは、この中で出演者の中ではダントツに大物で、ドイツでは大俳優らしいが、驚くような演技ではない。暴走しがちな男を実に自然に演じているので、上手いのは確かではあるが・・。演技の上では、むしろ元シリア情報部で、凶悪な殺し屋サイードを演じたイラン人俳優、ナヴィド・ネガーバンの迫力に恐れ入る。「ホームランド」でテロリストの首謀者アブ・ナジールを演じた俳優である。(「ザ・ホワイトハウス」、「ザ・シールド 〜ルール無用の警察バッジ〜」「LOST」「24」「CSI:マイアミ」などアメリカドラマに多数出演)

 別にものすごく不自然というわけではないのだが、背が高く、ごっついネリーと、とても背が低いグレゴールの無理のあるベッドシーンは不要だったと思います。(笑)

By 寅松

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