ライフ シーズン1

国民の健康対資本主義、人の命と金儲け・・新自由資本主義が侵食する基本的人権とそれを守ろうとする医師の個人的な戦いを描いたドラマ!

라이프/Life Season1
2018年 韓国 カラーHD 60分 全20話 Signal Entertainment/JTBC Netflex、Amazon Prime、TELASA などで配信
脚本:イ・スヨン 監督:ホン・ジョンチャン、イム・ヒョンウク
出演:イ・ドンウク、チョ・スンウ、ウォン・ジナ、イ・ギュヒョン、ムン・ソングン、ユ・ジェミョン、ムン・ソリ、チョン・ホジン、チェ・ユファ、ヨム・ヘラン、キム・ウォネ、オム・ヒョソプ、テ・イノ  ほか

 全16話版と全20話版があるようだ。DVDもレンタルは20話版、セルは16話版になっている。米国での放送も16話版だが、なぜか日本語のNetflixもAmazon Primeも20話版が配信されている。本稿は、20話版の視聴感想である。
 韓国トップ5に入る巨大大学病院を舞台に、病院を手中に収めた財閥が送り込んだ経営者と医師たちの病院経営をめぐる攻防・・みたいな説明がされるドラマであるが、テーマのスケールはもっと大きいような気がする。
 イ・スヨンと言う人の脚本の特徴だが、この人のドラマは、実にテーマが明確でかつ奥深い。急激な新自由主義が進行しつつある現代の韓国が抱える問題、ひいては全人類にとっての資本主義と人の命の公平性の問題を見据えていると言ってもいいだろう。
 韓国は、もともとは日本を手本とした国民皆保険制度を敷いたが、1997年のアジア経済危機の際にIMFが介入したのを契機に、健康保険や医療の分野において新自由主義的な改革(改悪)が行われて以降、保険医療の格差は広がり、医療の平等性は危機に瀕している。もちろん、高齢化に伴い増大化する保険財政の問題は世界共通の問題だが、韓国の状態は典型的で極端だ。一方で儒教思想的と同族関係の強固な絆から財閥寡占が続く国で、表面的に資本主義が極度に進行し、しわ寄せはすべて社会的弱者に向けられることになる。

 イ・スヨンは、そのような韓国社会の病巣に淀みなくメスを入れる。前院長イ・ボフン(チョン・ホジン)が自殺とも事故とも取れる死に方をした直後、サングク大学病院に、新しい経営者ク・スンヒョ(チョ・スンウ)が着任する。サングクは大学ごと財閥グループのファンジョンに買収されたのだ。
 韓国でも大病院は営利企業になれない法律は存在するが、ファンジョンの会長チョ・ナムヒョン(チョン・ムンソン)の目的は、最終的に医療関連事業全体をグループの収益の柱に据えること。そのためには、サングク大学病院を企業化し、健康産業の関連企業の収益に寄与させることは必須である。その先兵として送り込まれたのが、グループ内の流通企業で、強引な組合つぶしを断行した実力者、ク・スンヒョなのだ。
 ク・スンヒョは着任するなり、病院を企業として扱い、赤字運営の不採算部門として、救急救命センター、産科、小児科の3つの科を骨抜きにして、医師を地方病院へ排出してしまう構想を発表する。
 総合病院としての使命を全く理解していないその発想に、普段はバラバラな医師たちも危機感を抱き、対抗しようと考え始める。
 特に前の院長に息子のように可愛がられてきた(そこには寡婦であった美しい母親に、院長イ・ボンフが思慕を寄せていた経緯があるために、本人としては素直に受け止められない)救命救急科のイェ・ジヌ(イ・ドンウク)と、イ・ボンフに乞われて、唯一の他大学出身者として胸部外科センター長に就任したチュ・ギョンムン(ユ・ジェミョン)の2人は、保身と目先の野心で揺れ動くほかの医師たちとは違い、イ・ボンフの志を守ろうと決めている。

 ストーリー自体は、韓流ドラマの主力視聴者である、おばさん層にはまったく向かない代物だが、そこに絡めるように人間ドラマがまぶされる。
 主人公、イェ・ジヌとその弟で健康保険審査評価会の公務員となったイェ・ソヌ(イ・ギュヒョン)(兄と同じサングク大学卒で、整形外科医だが、子供の頃の事故で下半身が不随である)の複雑な関係。
 女性ながらジヌ、ソヌと学生の頃から幼馴染のように接してきた、小児科医イ・ノウル(ウォン・ジナ)は、病院内ではソヌの恋人だと誰からも思われている存在だったが、なぜか皆が冷徹な悪人だと信じている新社長ク・スンヒョに特別な感情を抱き始める・・。
 冷酷な人間であったはずのク・スンヒョも、動物に優しい一面があったり、医療業界にはびこる不正には毅然と腹を立てたりと・・、人間性が小出しにされて・・。
 さらに、左翼系のリベラルメディア、セグル21の記者として、ジヌが知り合う超美人さんチェ・ソヒョン(チェ・ユファ)との、ちょっとしたドキドキするおまけも。
 しかし若干のホラー風味にはなっているものの、ジヌには罪悪感から自分の脳が作り出した、ちゃんと立てるソヌの生き霊のような幻が、常に見ええているという設定は、本当に必要だったのか・・・少々疑問が残る。

 イ・スヨンの人物描写のリリアティーは、ある程度役者の人間性を熟知し、そこに当て書きしている部分があるように感じられる。その意味でも、息のあったチームというのは大事なのだろう。
 かなりの出演者が、「秘密の森」と重複しているのもうなずける。若い主演級の2人、「トッケビ」で有名になったイ・ドンウクと、ウォン・ジナを除けば、ク・スンヒョ役のチョ・スンウ、チュ・ギョンムン役のユ・ジェミョン、イェ・ソヌ役のイ・ギュヒョンも「秘密の森」チーム。癌センター長のイ・サンヨプも実は、「秘密の森」で殺されるパク社長を演じていたオム・ヒョソプだ。
 病院所属の肝臓移植コーディネーターで、実はスンヒョと同じファンジョン奨学金を受けた後輩にあたり、裏で医師たちの動きをスンヒョに報告しているソヌ・チャン役のテ・イノは、このドラマの後「秘密の森 2」にも出演している。
 そのほかの役者としては、やたらにどこにでも出てくるキム・ウォネが、相変わらずの演技で救急医療センター長、イ・ドンスを。
 少々腹黒い副院長、キム・テサンを演じたムン・ソングンは、もと政治家で李明博政権時代の最大野党だった民主統合党の代表もつとめた人物。李明博(イ・ミョンパク)政権時にはブラックリストに載せられ、ドラマや映画への出演ができなかったという。政治的な立ち回りをする、副院長の演技は抜群にリアルだ。

 ドラマのラストは、普通ならここで終わるという・・新社長の登場のあと、韓国ドラマ特有の登場人物そのその後紹介を引っ張る。何れにしてもシーズン2はあるのだろうなあ。

By 寅松

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