ケタリング・インシデント〜森に消えた少女

ドラマの最後のセリフが「オー、マイ・ゴット!」って、おいおい、そりゃこっちのセリフだよ!(笑)

The Kettering Incident
2016年 オーストラリア カラー 48-54分 全8話 Porchlight Films/Showcase Hulu、Amazon Primeで視聴が可能
クリエイター:ビクトリア・マッデン、ヴィンセント・シーン 監督:トニー・クラウィッツ、ローワン・ウッズ
出演:エリザベス・デビッキ、マシュー・レ・ネヴェズ、ティルダ・コバン=ハーヴィー、ヘンリー・ニクソン、シアノア・スミス・マクフィー、ダミアン・ガーヴェイ ほか

 「ロンドンで医師として働くアナは、ある日、目覚めると故郷のタスマニアにいた」とアマゾンの解説には書いてあるので、なにか超常現象でレテワープするSFなのかと思っていたら、まったく関係ない。主人公のアナ・メイシー(デビッキ)はロンドンで医師として勤務している美人さんなのに、どーもやらかしてしまうたちのようで、ちょくちょく記憶をなくして、見知らぬ場所で起きたりする。(最初はそうとしかおもえない)ロンドン市内の話ならともかく、次に気づくとなんとオーストラリアの南の果て、タスマニア島のレンターカの中で目を覚ます・・という出だし。ロンドンからタスマニアじゃえらいことだが、実はこのケタリングの町は、アナの故郷なので、無意識のうちに里帰りしたというお話なのだ。なーんだ!って。(笑)
 もちろん、彼女は帰りたくもなかったんだし、ロンドンでの病院勤務はほっぽり出しで、えらいっこっちゃだけど・・、この話はこのままスルー。オーストラリアのドラマだし、オーストラリア出身で『華麗なるギャツビー(2013)』、『コードネーム U.N.C.L.E.』、「ナイト・マネジャー」、『ロスト・マネー 偽りの報酬』と活躍著しいオーストラリア人のスーパーモデル級・美人女優、エリザベス・デビッキをメインに据えて、タスマニアの驚異的に美しい自然をふんだんに見せようという企画(だと思う・・)なので、最初以外ロンドンが出てくることはないし、最後まで帰りません。
 アナは、ケタリング出身なのに、父親のいる実家へ帰ることも乗り気でない様子。それもそのはず。彼女には15年前に一緒に森に入った年下(のちに腹違いの妹とわかる)の娘、ジリアン(ミランダ・ベネット)が行方不明になり、自分だけが生きて発見されたという過去があった。当然、彼女に疑いがかかるが、彼女は森の中の異常な光(初期の予算がないころの「X-ファイル」で多用された、森の向こうからバッテリーライトを照らすだけの「あれ」です)を見ただけで、何も覚えていない。地元警察署長の父親、ロイ(アンソニー・フェラン)が、彼女を発見した知恵遅れの若者を逮捕して、彼女をさっさと英国へ留学させてしまったのだ。(アイルランドのドラマ「ダブリン 悪意の森」とまったく同じような設定だなあ。)
 地元では、事件は<The Kettering Incident>(ケタリングの大事件)として記憶されており、アナが突然里帰りしたことに、不快感を隠さない地元民も多い。
 ところが、アナを快く迎えてくれた数少ない地元のティーン、クロエ(スミス・マクフィー)(父親ロイの友人である地元の製材所オーナー、マックス・ホロウェイ(ガーヴェイ)の娘)と、自然保護派が主宰する森のレイブ・パーティーに出かけると、今度は、クロエが行方不明になってしまう。これじゃ、アナはまったく立場が悪い。このミステリーに集中するドラマなのかと思ったら、SFの要素は捨てていなくって、ケタリングから少し離れた私有地リッジ(マザー・サリバンズ・リッジ)の森に近づくと、何十年も前の飛行機事故の時のSOS通信がラジオを通じて聞こえたり、大昔の帆船の破片が突如海で発見されたりと、ほのめかしが続くがどこにも行き着かない。最後まで説明はない。
 その上、まずは登場人物が複雑で関係がよく分からない。とにかく、小さな町なので、みんなが知り合いで、それぞれいろんな意味でつながっているのだが、そこが全くわかりにくい。それを自然な形で説明してゆくのが、脚本家の腕だが・・・正直これだと顔写真入り登場人物表でも最初に出してもらわないとお手上げだ。多くが、地元のエキストラなので区別がないのかもしれないが、対立する地元製材所の従業員と、森林開発に反対する環境保護団体(グリーニー)もファッションがまるで同じで判別不能。(笑)
 見る人がいるかどうか分からないが人物を整理しておくと、警察官は、アナの父親ロイが所長だったが引退を迎え、今は彼の下にいた真面目な警官でアナにも優しい、ファーガス・マクファーデン(ニクソン)と、都会から来た悪そうなイケメン刑事ブライアン・ダッチ(レ・ネヴェズ)がいる。ダッチは、消えたクロエとそのボーイフレンド、デイン(ディラン・ヤング)にドラッグを流している悪徳刑事で、しかもよく意味が分からないが製材所のオーナー、マックスの妻で、クロエの母親バーバラ(サシャ・ホーラー)と浮気までしているが、殺人については真面目に取り組んでいて、人格がわからない。
 製材所のホロウェイ家には、クロエの他に間抜けだが乱暴者の長男、アダム(ブラッド・カネギーセル)もいる。15年前にアナと一緒に森で消えた、ジリアンの母親、レネ・バクスター(スージー・ドハティ)は、バーバラの姉でアイリッシュ・ダンスの教師だが、今は年下のジゴロのような男トラヴィス(ケヴィン・マシザック)と暮らしている。実は昔、アナの父親、ロイと浮気をしていて、森に消えた娘、ジリアンは、ロイの子供でアナとは腹違いの姉妹であることは、後の方でわかる。
 製材所のナンバー2?らしき、クレイグ・ギャリソン(ベン・オクセンボールド)は、美人さんだがアル中の妻とは離婚。クロエの親友で、ギャリソンの娘のイライザ(コバン=ハーヴィ)は、母親とケタリングからフェリーで渡る向かいのブルニー島に住んでいる。
 イライザは、親友のクロエを取られた腹いせに、アナが不利になるような嘘ばかりついて困った娘だが、父親からも母親からも実質的にネグレクトを受けていて居場所がなく、不幸な一面がある。
 製材所のマックスとクレイグ、そしてアナの父親、ロイの3人は15年前に何かの秘密を抱え、問題のあることを知りながら、なんだか得体の知れないものをリッジの森に隠して、そこを買い取って立ち入り禁止にしているらしい。
 その秘密のおかげでリッジの森に近づく人間は、首に斑点ができて、血球に異常を生じ、性格が変わる。それだけでなく、町場でもがんが多発して、飼い犬がおかしくなり、森の苔が異常繁殖したり、牡蠣の養殖が毒でやられたり、ロイもマックスも自分たちの娘まで犠牲にするのだが・・・よほど大事な秘密らしく、最後まで3人は隠し通すことに専念する。その理由もわからない。
 そのほか、ドラマには森林伐採に反対している「グリーニー」と揶揄されている活動家たちのリーダーで、怪しすぎる男イエンス(デイモン・ガモー)や、かつての南極観測隊に参加していた科学者で、南極で観測された異常電波がこのケタリングでも観測されていると主張するドミニク(ニール・ピゴット)などが登場し、方向はますますわからなくなる。
 とにかく、タスマニアの自然自体が素晴らしいので、映像自体は実に美しい。けれど物語は何をほのめかすだけで、何一つ説明せずにいたずらに進行してゆくのである。かといって、決して「ツイン・ピークス」型の不条理ドラマにもなりきれているわけではない。ほんと始末に負えない。
 ドラマの頭から象徴的に出てくる、ケタリング地域の固有種植物で、雌雄を持たず単体で増殖できるというクリムゾン・フラワー(創作だろうが、タスマニアには固有種も多い)。大気中の塵に反射して、この時期だけ月が二つになるという異常な風景(『1Q84』か!)。自分で何か、卵のようなものを吐き出している、ツノが出た球状の機械などなど・・記号的に配置されれば、正直この場面は想像できるが・・・、かつて南極で不審死を遂げたと思われていた科学者、オーウェンが事件背後にいると突き止めたアナが、そのダミー企業らしい場所に踏み込んで見せられた真実に、彼女が「オー・マイゴット!」と叫んで終了してしまうのだ!
 

正直「オー・マイゴット!」は、こっちのセリフだ!

 全ての黒幕らしき男が説明する内容も、まったく具体性がなく「人類は、もう救えないが、救える人はいる」とかなんとか、とぼけた言い分である。いろいろ想像で補っても「人類補完計画」(by エヴァンゲリオン)の類似品なのか?ぐらいにしか思えない。
 ものすごく好意的に理解すれば、大ヒットシリーズとなり10シーズンくらい引っ張って、少しづつ説明するつもりだったのかもしれないが、当然のことながらFoxtelはシーズン2をキャンセルしました。というわけで、最後の最後にみんなで叫ぶしかないのです!「なんじゃ!こりゃあ!」

 あと、もちろんドラマの中のはCGなんだけど、いくら自然が美しくとも、あんなに蛾がデカイところには絶対行きたくありません!!!