世界一不幸せなボクの初恋

キスをするとERに担ぎ込まれる男が美女と出会った・・・、不幸でないと生きられない男のニューヨーク下町初恋物語

Ode to Joy
2019年 アメリカ 97分 ソニー・ピクチャーズ スター・チャンネルで放映 (現在、Amazon Prime/GYAO/Paraviで有料配信中)
監督:ジェイソン・ウィナー 脚本:マックス・ワーナー
出演:マーティン・フリーマン、モリーナ・バッカリン、ジェイク・レイシー、メリッサ・ローチ ほか

 「喜び」を感じると硬直して失神してしまう病気=キャプレクシー(情動脱力発作)患者のチャーリーは、毎日「適度に不幸せ」な状態を保つように努力しながら暮らしている。通勤時はヘッドフォンで「葬送行進曲」を聴き、幸せそうな人々は視界から追い出し、何でもいいから哀しいこと・・・シリア問題やドレッドヘアの白人やブライアン・ウィルソンとか・・・を考えながら歩いている。病気のリハビリは、回転木馬に乗ることだが、毎度失神するので安全ベルトが常備されている。

 ある日、図書館で男にふられて大騒ぎした美女フランチェスカをなだめたチャーリーは、彼女とデートすることになる。ふたりはすっかり意気投合するが、、フランチェスカに家へ誘われたチャーリーは、幸せのあまりに失神転倒、病院に担ぎ込まれる・・・。

 なんだか、少女マンガにありそうな設定だが、シカゴのラジオ局に寄せられた視聴者の体験談をもとにしているらしい。
 イギリス人で「シャーロック」の(さえない)ワトソンことマーティン・フリーマンと、ブラジル人で「V」の宇宙人、「HOMELAND」のテロリストの妻役が印象深い超絶美女モリーナ・バッカリンがカップルというのも、ニューヨークならでは。意外なことにモリーナはリオデジャネイロ生れながら7歳からニューヨークで育ったそうで、ほとんど本物のニューヨーカーなのだ(ただし劇中ではロサンゼルスから来たことになってる)。この映画ではいつもの「キリっとした」美女ぶりを封印し、ヒールの靴をはかず太めの脚をみせてガニ股気味に歩く、いかにもニューヨークの下町にいそうなナチュラル美女を楽しそうに演じている。

 セックスしたくてたまらないチャーリーの弟や、チャーリーにぴったりの変人オタクとして紹介されるベサニー、おせっかいな図書館の同僚や警備員など、ラブコメに欠かせない個性的な脇役たちも充実している。特に、「ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則」のメリッサ・ローチが演じるベサニーは、チェロの弾き語り(!)でクランベリーズの「ゾンビ」を歌うという衝撃的な芸をみせて場をさらっている。

 ほとんどの場面がマンハッタンではなく下町ブルックリンで実際にロケ撮影されているのも嬉しい(アメリカ国内での撮影は経費がかかるのでニューヨークの代わりにカナダで撮ることが多い)。近年、演劇や美術関係の施設が増えたブルックリンの個性的な街並が印象的だし、ブルックリン•ブリッジ•パークで兄弟が語り合う場面でカメラが左右にパンを繰り返すカメラワークは、まるで背景のニューヨークのビル群がふたりの会話に聞き耳を立てているみたいでおもしろい。一見、自分勝手で意地悪で攻撃的なようでいて実は気はやさしくて素朴なニューヨーク人への愛に満ちている、ある種「ニューヨーク物語」的おとぎ話で、ウディ・アレンやポール・マザースキーにファレリー兄弟を少し足したような味わい。キャプレクシー(情動脱力発作)患者ってのも、まあ、オタクや引きこもりの一種と考えれば、そんなに突飛な設定ではないように思えてくる。
 だた、そのうち日本のテレビドラマにパクられるんじゃないかと嫌な予感がするのは、僕だけだろうか。

by 無用ノ介

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