30年後の同窓会

アメリカ版バイプレーヤーズか?3人の名優が演技力だけで引っ張るほろ苦い海兵隊後日談。

Last Flag Flying
2017年 アメリカ 124分 アマゾン・スタジオ/ライオンズゲート Amazon Primeで視聴可能
監督:リチャード・リンクレイター 脚本:ダリル・ポニクサン、リチャード・リンクレイター 原作:ダリル・ポニクサン
出演:スティーヴ・カレル、ブライアン・クランストン、ローレンス・フィッシュバーン、J・クイントン・ジョンソン 、ユル・ヴァスケス ほか

 ダリル・ポニクサンといえば、何と言っても名匠ハル・アシュビー監督『さらば冬のかもめ』<The Last Detail>の原作小説と、『シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛』の原作/脚本という米海軍を舞台とした70年代の名作で知られる小説家。彼が2005年に発表した、ちょうど『さらば冬のかもめ』に登場したような若者たちが、30年後に味わう苦い邂逅を描いた小説<Last Flag Flying>の映画化権を取得したのがアマゾンスタジオである。
 監督に指名したのは、『スクール・オブ・ロック』や『6才のボクが、大人になるまで。』で評価の高い、リチャード・リンクレイター。なるほど!なかなか良さそうな話だ。
 そして主演としてキャスティングされたのが、名コメディアンのスティーヴ・カレル、「ブレイキング・バッド」『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のブライアン・クランストン、『マトリックス』シリーズ、『ジョン・ウィック』シリーズのローレンス・フィッシュバーン!これなら信頼できそうである。
 確かに、出来が悪い映画ではない。(日本語タイトルは酷いが)
 でも、すごい名作か?と言われると・・・、ちょっと厳しい。よく言えば、安心できる、悪く言えば、予定調和な感動作。もちろん泣ける。
 スティーブ・カレルが演じるドクは、今回は実におとなしい。ドクは雨降る夜トボトボと、とあるバー&グリルのネオンのある店に入ってゆく。そこには迷惑そうな客と、少し酔っ払った饒舌な店主サル(クランストン)が。サルは、元海兵隊員でベトナム帰りだが、戦争は政府に騙された愚かな体験だったと今夜もクダを巻いている。カウンターに座ったドクに呼び止められて、訝そうにその顔を眺めるサル。二人は、30年前にベトナムでバカをやった仲だった!一晩飲み明かしたあと、ドクはサルに車を出させて、「見せたいものがある」と郊外にやってきた。慎ましい教会に入ると、黒人のパワフルな牧師ミューラー(フィッシュバーン)が説教中。それを見て、サルは、爆笑しはじめる。「こいつは、とんでもない奴だぜ。アル中でギャンブラーで・・」ミューラーとサルは同じ部隊のコンビ。二人は別の部隊後輩で、衛生兵のドクを巻き込んでつるんでいた仲だった。そして、彼らは所属中にある事件を起こし、ドクは責任をとらされて3年間服役した過去があったのだ。
 しかし、ドクが2人の仲間を見つけ出して打ち明けたのは意外な頼みだった・・。2日前に戦死した息子が、明日アーリントン墓地で埋葬されるのに、一緒に立ち会ってほしいというものだ。ドクは、出所後は結婚し幸福な生活を送っていたが、妻も1年前に癌で亡くなっていた。サルは行きがかり上、ミューラーは妻に命じられて渋々、ドクの息子の埋葬に立ち会うことになるのだが・・・。
 スートリーは、その後アーリントンで息子の死の真相を知ったドクが、息子の遺体をそこに葬ることを拒否して、地元ニューハンプシャー(ポーツマス)に埋葬するといい出したために、3人が遺体を運ぶ羽目になるロード・ムービーの体裁である。
 アメリカのロード・ムービーといえば車での旅が当然なのだが、車を借りた3人がテロリストと間違われ通報される事件もあって、アムトラック鉄道で延々と遺体を運ぶことになるというのが、ちょっとしたアイディアだ。『オリエント急行殺人事件』、『シベリア超特急』など他の国ではあるが、アメリカで電車の長旅を描く映画というのも珍しいだろう。
 リンクレイターの監督なので、確かにソツはないし、ドローンで撮影したアメリカ東部をアムトラックが走る景色もなかなかに美しい。しかし、展開は想定の範囲で、新鮮味は乏しい。会話の面白さも、それこそ30年目ならかなり新鮮だったろうが・・現代では十分保守的なレベル。
 大義もなく行われたイラク戦争に対する批判は込められいないわけでもないが、軍の身内から見た、痛し痒しの苦味でもある。
 それでも作品を救っているのは、3人の名優の演技の手堅さだ。
 ブライアン・クランストンは、元海兵隊員にはあまり見えないが、それでもその後にダメになった酔っ払いの演技はすばらしい。ローレンス・フィッシュバーンの方は牧師ぶりはともかく、海兵隊にいた感じはバッチリ。スティーブ・カレルの内気な衛生兵もうまい。3人そろうと、まるで日本の「バイプレイヤーズ」シリーズのように、互いを信頼して楽しげに芝居をしているのがわかって、その辺はなかなかよい。
 上官のウーリッツ大佐(ヴァスケス)に、「どこの墓地であろうと、お前の戦友は必ず軍服を着せて埋葬してやれ」と、厳しく言い渡されて3人の輸送についてくることになる、ドクの息子の戦友ワシントンを演じたJ・クイントン・ジョンソンは、若いながら存在感もあった。
 エンディングは、予想どうりボブディラン(Not Dark Yet)で手堅い締めでした。(笑)
 
 中西部や南部の文明社会を拒否したようなエグいアメリカではなく、アメリカ東部のアメリカらしい文化を見て、少しほっとしたい向きにお勧めである。

by 寅松

日本語トレーラー

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