海外ドラマ

マクドナルド&ドッズ 窓際刑事ドッズの捜査手帳

ダメそうなおじさん刑事が、細かい観察で実力発揮の英国風逆転劇!

McDonald & Dodds
2020年 イギリス カラーHD 105分 全2話 Mammoth Screen / ITV AXNミステリーで放映
クリエイター:ロバート・マーフィー 監督:リチャード・シニア、ローラ・スクリヴァーノ
出演:ジェイソン・ワトキンス、タラ・グヴェイア、ジェームズ・マーレイ、ロバート・リンゼイ(1話目)、スザンナ・フィールディング(1話目)、エリー・ケンドリック(2話目)、ジョアンナ・スカンラン(2話目) ほか

 『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』などの有名映画から「ライフ・オン・マーズ」のようなドラマでも個性な脇役をこなしてきた、小役人のような風貌のおじさん、ジェイソン・ワトキンス。彼を主役に据えた、最新(2020)刑事ドラマである。英国メディアからも「現代のコロンボ」と称されているらしいが、コロンボほどの含みもなく、見るからにイギリスの役所にでもいそうなオジサンってところがイイ。
 ワトキンス演じるドッズは、11年間内勤に回されていたがひょんなことから実際の現場に出向くことになった刑事。物珍しそうに歩き回り、現場でも明らかに周囲から浮いている。そこへさっそうと現れるのが黒人女性警部のローレン・マクドナルド(グヴェイア)。ロンドン警視庁から、このバースの地に赴任してきた上昇志向の塊のような生え抜き刑事だ。
 自分の相棒として、任命されていたドッズが明らかに事務屋のようなおっさんなのに呆れた彼女は、現地警察の責任者、警視正であるホースマン(マーレイ)に食ってかかるが、やんわりと「ドッズを早期退職に追い込むんだ」と吹き込まれてなんとなく納得してしまう。ローレンは、すごいやり手に見えるが、根は人がいいところがあるようだ。警視正のホースマンは、自分の評価しか気にしていない薄っぺらな男で、目障りなドッズが自ら早期退職を願い出て、ついでにロンドンから乗り込んできたローレンが失敗して、バースを追い出せれば好都合と考えているらしい。そこはありがちなコメディおちで、いつも事件を解決され、手柄を立てられてしまうのでした。(笑)
 バースというのは温泉が湧くので有名な西部イングランドの観光地。古代ローマに支配されていた時代から温泉地だったらしいから、まさに古代都市であった。イギリスでは珍しいくらいの古都なので、やはり京都の人みたいに街の人たちのプライドが高いようだ。ロンドンから来たローレンに対しても、皆異口同音に「ここは、バースですからね。ロンドンとは違います」などと嫌味を言う。
 バースを舞台にしたものとしては、考古学研究所の学者が骨から歴史の事実を解き明かすミステリー「ボーンキッカーズ 考古学調査班」(BBC/2008)があったが、街の描き方は、実在の風景より幻想的で、遺跡跡の絵ばかりだったように思う。
 それに比べると、この作品はバース観光協会協力だけのことはあって、ドローンを使った街の景観が観光PVのように美しい。反面、古代都市としてのロマンはまったくないが。
 いずれにせよ、現代の観光地の風景とぼけたオジサン刑事がこのドラマのすべてである。事件の方は、1話目「The Fall of the House of Crockett」が、ジェームズ・ダイソンを彷彿とさせる地元の大金持ちの発明王の家で殺人が起きた事件。2話目「Wilderness of Mirrors」は、地元にある高級リハビリ施設から抜け出そうとした患者が殺された事件をめぐるミステリーで、毎回ドッズ刑事が、他の刑事は気にも留めないような、細かい齟齬を掘り返しながら突破口を見つけ出してゆくストーリー。正直105分は少々長いが、暇があってほのぼのとした気分になりたい時にはいいだろう。
 2話目の最後の方には、ドッズとローレンがどうやら信頼関係を築きはじめた様子が描かれるので、少々ほっとする。ちなみに2話目に出てくる、まるでイギリスの上沼恵美子のような、リハビリ施設の強烈なカウンセラー、ケリーを演じているジョアンナ・スカンランは、イギリス(オリジナル)版の「ゲティング・オン」の主演の一人。一人だけ、存在感がすごーいです!

by 寅松

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