ザ・スプリット 離婚弁護士 シーズン1

女性の制作チームが女性の側から描く、女性にとっての離婚と家族

The Split Season1
2018年 イギリス カラーHD 60分 全6話 Sister Pictures/BBC One Amazon Prime、Huluで視聴可能
クリエイター:アビ・モーガン 監督:ジェシカ・ホッブス
出演:ニコラ・ウォーカー、アナベル・スコーリー、フィオナ・バトン、スティーヴン・マンガン、バリー・アトスマ、デボラ・フィンドレイ、アンソニー・スチュワート・ヘッド ほか

 なかなかの傑作である。「チェルノブイリ」を製作したジェーン・フェザーストーンの<Sister Pictures>が製作。クリエイター/プロデュースは、映画『SHAME -シェイム-』や、「刑事リバー」などで名高いアビ・モーガンが。そして「ブロード・チャーチ」「刑事リバー」「アップルツリー・ヤード」などにも参加したニュージランド・出身のジェシカ・ホッブスが、ディレクションを担当。主演は、「刑事リバー」「埋もれる殺意」のニコラ・ウォーカー。音楽をフィービー・ウォーラー・ブリッジの実のお姉さん、イソベル・ウォーラー・ブリッジが担当している。
 ドラマのテーマは女性が描く、女性視点の家族と結婚とその亀裂<Split(分裂、仲たがい)>と言うべきだろう。分類としては、ローファームものだ。ローファーム(リーガル・ドラマ)ものといえば「グッド・ワイフ」、「グッド・ファイト」、少し前の「ボストン・リーガル」などを思い浮かべるかもしれないが、アメリカの馬鹿でかい弁護士事務所を舞台にしたドラマとは若干ニュアンスが異なる。
 ロンドンの離婚専門弁護士事務所、デフォーは母親のルース(フィンドレイ)を筆頭に娘たちでやってきた一流ながら家族経営の弁護士事務所。ところが、この事務所を支えてきた長女のハンナ(ウォーカー)は、元からの友人でロンドンで働くオランダ人弁護士クリスティー(アトスマ)のいる、もっとアメリカ的な大手法律事務所<Noble & Hale>に移籍したばかり。
 ハンナは、家庭では良き父親に見える法廷弁護士ネイサンと結婚しており、3人の子供がいる。ネイサンは、ハンナの判断には理解を示しながらも、かつてハンナを競ったクリスティーには未だに反感を抱いている。
 支配的な母親に疲れたハンナは、新天地でキャリアを積み上げ始めるが、同じ分野なので敵味方で古巣のデフォーと当然のように対面することに。母と共に、デフォーを支える次女ニーナ(スコーリー)は、気の強い美人で男には縛られないが、酔うと本音をぶちまけすぎて全てをぶち壊してしまう常習犯。母と2人の姉を見て育った、三女のローズ(バトン)は、弁護士の世界に興味を持てず、子守のバイトを続けるモラトリアム派だが、インド系の金融業界の若者と結婚が間近。そこに、29年前に子供たちの子守の女性と出来てしまい、娘や母親を捨てて出て行った父親オスカー(ヘッド)が突然戻ってくる!
 登場人物は「離婚」を飯の種にしている弁護士でありながら、自らの恋愛や家族の問題からも逃れることはできないという構造だ。3話くらいまでは、ある意味ありがちな家族ものであり、これはこれで十分面白いドラマであるが、あのアビ・モーガンがそんな凡庸なドラマで締めくくるはずもない。実は4話で話は突然過激に!イギリスの大手不倫出会い系サイト、インディアナ・レイが宗教保守派にクラックされて、そこに登録されていた人物名簿が流出したのだ。
 外務・英連邦大臣のエマ・グレアム(クレア・ラッシュブルック)に呼び出された、ハンナは、このスキャンダルで名前が出ることになっている夫ととの離婚を相談される。しかし、大手の不倫サイトの名簿流出するという事態は、現代社会では深刻な問題だ。名簿がマスコミにリークされる頃には、離婚弁護士界では空前の稼ぎどきを予測して、もはや祭りの状態に!そして、なんと思いもしなかった災難も、自分たちの家庭に降りかかる。

 ストーリーだけでなく描写も特徴的だ。あくまで女の視点で描かれていて、男たちの立場や内情はほぼ説明/描写されない。女の側から見た男だけが描かれている。
 自分の家庭のあるハンナ。アメリカもののリーガルドラマでは家庭内の描写は最初に少し描かれて、あとは省略されがちだが、このドラマでは何度も家庭の日常は描写されている。子供が3人もいるハンナ(そして夫のネイサンもだが)いかに仕事や個人的に問題で悩んでいても家族から逃れられないことが、実感として伝わってくる。
 ニコラ・ウォーカーは不思議なおばさん顔なのだが、アビ・モーガンはよほど彼女が好きなのだろう。モーガン脚本では、ウォーカーはいつもけっこうモテモテだ。そこは演技力なのか、見ているとなんとなく、モテぶりも納得してしまう。
 コメディアンでもあるスティーヴン・マンガンは、悲しそうな夫、ネイサンの「人がいい」感じをよく出している。
 2回目のみだが、バリー・アトスマ演じるオランダ人弁護士クリスティの元妻で、敵方についている嫌味な美人弁護士ローレンとして、スコットランドのクライム・ドラマ「ギルイティ」で見たルース・ブラッドリーが、全く違う印象で登場するのも楽しい。
 三女の結婚式の美しいシーンと、そのあとの苦い現実の対比で終わりを締めくくるのは、モーガンの得意技のようにも思えるが、さすがにここまで出来がいいと1シーズンでは終わらないようだ。
 英国では今年すでにスーズン2が放映されている。

by 寅松