ハップとレナード〜危険な2人〜 シーズン 2

プア・ホワイトとゲイ・黒人の親友同士がテキサス東部で毎度冒険!

Hap and Leonard Season2 “Mucho Mojo”
2017年 アメリカ カラー 42~44分 全6話 AMC Studio/SundanceTV Amazon Primeで視聴可能
原作:ジョー・R・ランズデール クリエイター:ジム・マイクル、ニック・ダミチ、ジョー・R・ランズデール 監督:モーリス・マラブル、エイブ・シルビア、ティム・ソーサム
出演:ジェームズ・ピュアフォイ、マイケル・ケネス・ウィリアムズ、クリスティーナ・ヘンドリックス、ブライアン・デネヒー、クランストン・ジョンソン、ジョン・マコーネルほか

 非常に原作の雰囲気が出ていて感心した!日本でも翻訳が出ている、テキサスの作家、ジョー・R・ランズデールの代表作で、テキサス東部で暮らすプア・ホワイトのハップ(ピュアフォイ)と、黒人でベトナム帰りの退役軍人ながらゲイのレナード(ケネス・ウィリアムズ)という2人のコンビが、いやいや巻き込まれた事件を解決するミステリーシリーズのドラマ化作品である。よく見れば、作者自身がプロデュースにも参加して、このシリーズでは脚本も書いている。なるほど!道理で。
 実は、最初のシーズン1が公開された時に、設定に見覚えがあったので見てみたが、話は知らない話だったので、「単なる偽物か?」と少しがっかりして、ほっておいた。(笑)シーズン2が出たので、念のため見てみたら、そうそう見覚えがある!これこそ、ランズデールのシリーズの中でも傑作と言われている『ムーチョ・モージョ』ではないのか!・・・そうでした。実は、ハップとレナードシリーズの最初の作品<Savage Season>は、邦訳が出ていなかったのだ。
 シーズンは3(2018)『罪深き誘惑のマンボ』まで製作されているがその後は、キャンセルされたようだ。
 ドラマとして地味だという評価が多いようだが、このドラマは、一応80年代を時代として設定しており、徹底してアメリカの中でも保守主義の牙城であるテキサス東部を舞台としてることを前提に見ないと理解し難いようにも思う。
 とにかくテキサスというのは、すさまじいところだ。もともとメキシコの領土であったことは、知られているだろうが、メキシコ政府が奴隷制度を禁止したことに腹を立てた白人たちが、メキシコから独立しようと反乱を起こしてアラモ砦で制圧される。アラモの話はその後も西部劇にして、延々と恨みに思ってるような奴らなのだ。特にテキサスの東側は、まさに人種差別主義の中枢の一つだろう。
 もちろん、テキサス人(白人のことだが)は、人当たりもいいし、ユーモアもあり個人的にはいい人が多い気がする。しかし、ほぼ全員が銃の所持には大賛成ですぐそれをぶっ放すことにも大賛成、テキサスは独立国だと信じていて、連邦法などというものは糞食らえだと思っている。そして今でも心の中では「黒人どもは奴隷から解放するべきじゃなかった!」と信じているに違いない。
 このドラマでも、テキサスの田舎が舞台にもかかわらず弁護士はすぐに駆けつけてくれる。ドラマとは直接関係ないが、東テキサスの田舎の裁判所は、世界中の特許紛争の中心地となっていて、田舎に関わらず弁護士の数はすごいし、裁判周辺産業もすごく潤っているのだ。なぜかというと、アメリカには休眠特許などを買い取って、大手相手に訴訟を起こす特許ゴロ<patent troll>が多く、その言いがかりに近い訴訟が東テキサスで訴えれば、ほとんど勝訴になるからだ。今は、米国内のIT大手などの標的が多いが、少し前は日本、中国、韓国などの会社も盛んに標的ににされた。しかし、地元から選ばれる陪審は、基本的に全米規模の大企業や、外国企業に反感を持っているので、なんでも「原告が正しい!」ということになるらしい。
 ともかくテキサスで起こることは、先進国アメリカで起こることとはまったく違うし、ましてや80年代であればその野蛮さ加減は十分後進国と呼ぶに価する土地だ。
 テキサス出身で、この地を愛する作者のランズデールは、この地の差別意識やシステムの問題から目を背けることなく、しかし一方で、このような絶望的な日常の中でも、何よりお互いの絆と人間としての最低限の正義を大事にする、真のテキサス魂を持つ2人組を創造した。
 物語は全編が、原作通りでもないが、非常に雰囲気は良く出ている。とくにハップとレナードが幼馴染として育った雰囲気が、短い回想シーンで出てきて、小説よりもその関係がわかりやすい。レナードが相続することになる叔父の家や、隣に住む黒人のゴッドマザー、ミーモウ宅などのイメージも再現度がすばらしい。
 事件は、叔父が亡くなりレナードが相続した家の床下から、白骨になった子供の屍体が発見されるところから始まる。通報したにもかかわらず否応なく疑いをかけられるレナードとハップが、(レナードの叔父が目をかけていた)黒人美人弁護士のフロリダ(ヘンドリックス)の力も借りながら、事件の真相を暴いてゆくのだ。呆れるような警察の差別主義、司法制度のデタラメぶり。現代においてもなお<Black Live Matter>のようなムーブメントが起こる背景を、まんま説明しているような物語である。
 ただし、事件の真相はいずれにせよ身近にあり、胸塞ぐ結末である。決着のつけ方も、非常にテキサス的だ。
 面白さは十分。とくに今見る価値のあるドラマである。

by 寅松