アウトブレイク ―感染拡大―

ありえないほど正確な未来予言ドラマ!なんだこりゃ!

Épidémie
2020年 カナダ カラーHD 45分 全12話  TVA Amazon Primeで視聴可能
クリエイター:ベルナール・ダンセリュー、アニー・ピエラール、エチエンヌ・ピエラール=ダンセリュー 監督:ヤン・ラヌエット・チュルジョン
出演:ジュリー・ルブレトン、メリッサ・デゾルモー=プーラン、ガブリエル・サブラン、ギョーム・シール、ナンシー・サンダース、ユリヴィア・ユヴィルク、ローランス・デシェーヌほか

 いやあ、こんな凄いドラマがあるのだろうか!?ドラマとしての出来のことではない。フィクションなのに、あまりに現実の予想が的中してしまっていて、今となっては「恐怖の予言ドラマ」としか呼びようがない。
 カナダの(フランス語地域)地上波TVAが、新型コロナ禍の直前である2020年の1月に放映したドラマであるが、放送が開始されると35.5%という驚異の視聴率を記録したらしい。そりゃ、そうだろう。このドラマは、まるでその後、世界で起こることを完全に予見したような内容なのだ。物語はケベック州モントリオールの郊外で、闇でペット用のフェレットを繁殖させている農家の爺さん、その病気のフェレットをプレゼントにもらう少年、ペットショップから逃げ出したフェレットを可愛がるホームレスがそれぞれ肺炎のような症状を呈し始めた所から始まる。
 主人公はモントオールの緊急衛生研究所の美人所長アンヌ=マリー(ルブレトン)とたまたま彼女と知り合うことになるイヌイットで、今は生物学の博士課程で勉強しているネッリ(サンダース)。研究所を統括する公安大臣のローラン(シール)。そしてそれぞれの家庭にメロドラマが。アンヌ=マリーの夫、マルク(サブラン)は、救命医で奔放な美人の同僚の医師クロエ(プーラン)と不倫中。公安大臣のローランはゲイで、パートナーのパスカルと同棲しながら、友人のフランソワーズ(イブ・ランドリー)に代理母になってもらって、子供を育てようとしている最中だ。ネッリのいとこは、最初に感染したホームレスのアラシー(ユヴィルク)である。
 最初は、夫の不倫問題がここで必要か?と思うけれど、最後の方ではそれぞれのプライベートも感染拡大と無縁ではいられずに、ダイナミックなドラマにつながってゆく。少々、登場人物が繋がりすぎで、ご都合主義にも見えるが、舞台のモントリオール(カナダのケベック)のスケール感を考えると、絶対ありえないほどでもないのかなと思えてくるところは、ま、ご愛嬌。
 ドラマ自体は、カナダものだけに、アメリカの一流ドラマやBBCものなどと比べるとややゆるい作りだとは感じる。が、逆にアメリカ的な善悪の極めつけがなく、非難されるべき人も、追求する側も、別の側面が描かれていて考えさせるのだ。たとえば、夫の浮気に憤る妻も、過去にその夫を他の女から奪い取った過去があったり、真面目な大臣が罪を犯したり、夫と不倫している相手の医師が命を救われて、夫の妻に協力しようとしたり、なかなか複雑。全体としてはアメリカ的ながら、微妙にフランス的な価値観を残していると感じる。出演者は、カナダの中でも特別の文化圏であるケベックを中心に活躍する人が多く、世界的な俳優はいないが演技力は十分。特に子役たちはみな可愛く、演技も優れている。

 しかし、とにかくすごいのはリアルすぎる感染拡大の描写だ。綿密な取材で想定した結果らしいが、動物から広まる過程が当初特定できずに、被害者が広まってゆく過程や医学的な部分はともかく、当初はモントリオールに多い、イヌイットのホームレスの病気だと考える市民の(差別的)態度や、感染が拡大すると都市から周辺部に越境しようとする人々を、今度は郊外の人たちが「病気を持ち込むな」と差別する社会的な流れまで、現実の世界そのものですごい!ウィルスが拡大した現在を見てる我々には、このドラマの進行自体「あたりまえ」のように感じるが、もしコロナ禍が怒らなかったら、本当に現実味がないだろう。
 ドラマを見てしまうと、あまりに現実をなぞっていて、にわかには信じがたいが、撮影は2019年中に終わっている。最初に放映された頃に武漢でウィルスが蔓延し始めたあたりなのだ!
 まさに予言ドラマだが、この後世界はドラマ以上の蔓延が止まらない事態になっている(2020.7現在)。ドラマ上ではなんとかモントリオール近郊だけで、新型コロナウィルス(ドラマの中ではCo-Vaと名付けられる)の封じ込めは成功したかに見えるが・・現実世界では・・。というわけで、さすがにこれだけでは終われないと感じたのか、シーズン2は、早々と決まっているようだ。

by 寅松