バティスト〜アムステルダムに潜む闇〜

ウィリアムズ兄弟が贈る、「ザ・ミッシング ~消えた少年~」のスピンアウト!冷静厳格な元刑事のバティストを試練が襲うが・・。

Baptiste
2019年 イギリス カラーHD 60分 全6話 Two Brothers Pictures/BBC One スーパー!ドラマTVで放映
クリエイター:ハリー・ウィリアムス、ジャック・ウィリアムス 監督:ボルクル・シグソルソン、ジャン・マタイス
出演:チェッキー・カリョ、トム・ホランダー、ジェシカ・レイン、バーバラ・サラフィアン、アナスタシア・ヒル、ボリス・ヴァン・セーヴェレン、アレック・セキュリアノウ

 「ザ・ミッシング ~消えた少年~」、「犯人はこの中にいる(真実を知る者)」、「ザ・ウィドウ ~真実を求めて~ 」などイギリス・ミステリー界で確固たる地位を築いたクリエイター、ウィルアムズ兄弟の最新作。BBC Oneで2019年に放映された。
 今回は、トルコ生まれのフランス人俳優、チェッキー・カリョが「ザ・ミッシング」シリーズで演じた刑事を退職した探偵、ジュリアン・バティストをメインに据えた物語で、「ザ・ミッシング」よりハードなサスペンスを展開する。
 物語はオランダのアムステルダムが舞台。脳腫瘍の手術からも回復したジュリアン・バティストは、本当の引退を考えこの地で妻とアパートを構えている。以前は問題も起こした娘も、このシリーズでは結婚し、孫も生まれてどうやら家族は幸福そうだ。
 しかし、そんな彼のもとに、昔馴染みのアムステルダム警察の警視マルタ(サラフィアン)から人探しの依頼が舞い込む。アムステルダムの売春街(飾り窓)のどこかに消えた姪を探している、イギリス人エドワード・スラットン(ホランダー)の手伝いをしてやってほしいというのだ。実は、マルタはバティストが結婚前に付き合っていた女性でもあり、この依頼を気がすすまないながら引き受けることになる。
 売春婦仲間の証言から、バティストは姿を消した姪、ナタリー(アンナ・プロフニャック)を匿っているのは、地元で虐待女性の援助をしているキム(タリサ・ガルシア)だと目星をつけるのだが・・・。
 ウィリアムズ兄弟の脚本は、どれもそうなのだが出だしは少々かったるい。スロー・スタートで、面白くなるのか「?」を抱かせるが、途中から俄然面白くなる。実は、バティストは早々とその「姪」にたどり着くのだが、スラットンの姪だというのは真っ赤な嘘で、エドワード・スラットンは彼女に固執している変態の客だと説明される。
 おやおや、そういう話だったのかー!と思うと、次の回には実はそれも真実ではなく、客であることは確かだが、ナタリーとエドワードは共謀してルーマニア・マフィアの売上金を奪ったらしいとわかってくる。無差別に家族を殺すルーマニア・マフィアに関わってしまったバティストは、ついに家族を田舎のセーフハウスに避難させねばならないことになってしまうのだ。
 このドラマの面白さのポイントは、話の過程で180度変わってくる登場人物の見え方だ。最初から、少々うらぶれたビジネスマンとして登場し、最後には驚くほど腹の据わった反撃ぶりを見せるエドワード・スラットン。虚無的な表情を見せる彼は、実は娼婦のナタリーにソックリな娘がいたが、ヤク中になりアムスで行方不明となっていた。それ以来自分を許せていないことが後半で語られる。
 マルタが途中、バティストに打ち明ける秘密。女性援助する地元のカフェ経営者、キム・ボーゲルの本当の素顔。ルーマニア・マフィアの逮捕に固執する、ユーロポールの女性担当官ジュヌビエーブ(レイン)の本当の動機などなど、すべての人に表層の顔とは別の裏面がある。相変わらずウィルアムズ兄弟の脚本には、どこか文学的な要素があると言わざるを得ない。
 ただ、ミステリーとしてだけ言えば、キムのボーイフレンドが長い間、まったく「ソレ」に気づかなかったのか?とか。最後にわかる、あっと驚く裏切り者が、犯罪に手を染めた理由が「そんなことかあ?」とか、いろいろ突っ込みどころはなくはないのだが・・。
 バティスト役のカリョの存在感も充分生かされているが、演技という意味では何と言っても『プライドと偏見』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』、「ナイト・マネジャー」で知られるトム・ホランダーのうまさは格別だ。
 だからといってドラマの最後最後が、この2人のおじさんの会話で終わるのはちょっと???だけどねぇ。
 「コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語」の初々しい新人助産婦、ジェニファー役で有名なジェシカ・レインさんの、キリキリした官僚的な捜査官ぶりもそそられる。
 ともかく、最初の1回目を見て、投げ出さないで欲しい作品である。数回見ると面白さは加速度的に倍増する。

by 寅松