ゴールド・ディガー 〜疑惑 年下の男

サーティーンの脚本監督コンビが描く、熟年女性の心の揺れと人生の総決算!

Gold Digger
2019年 イギリス カラーHD 60分 全6話 BBC / BBC One AXNミステリーで放映
クリエイター:マーニー・ディケンズ 監督:ヴァネッサ・キャスウィル、デヴィッド・エヴァンス
出演:ジュリア・オーモンド、ベン・バーンズ、アレックス・ジェニングス、セバスチャン・アルメスト、アーチー・ルノー、ジェミマ・ルーパー、ニキ・アムカ=バードほか

 大変秀逸なドラマである。「13 サーティーン/誘拐事件ファイル 」で13年間男に人生を奪われた20代の女性のターニング・ポイントを描いた、脚本家マーニー・ディケンズ、監督ヴァネッサ・キャスウィルの女性コンビ。2人が今回描いたのは、35年間の失敗した結婚で自分の人生を奪われた還暦の女性が、離婚後に下す大きな決断の物語である。そこに、当然のように持ち上がる秘密の暴露やいざこざ。サスペンス要素も十分で、細部に至るリアリティーも素晴らしい。
 主人公のジュリアを演じるのは、『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』や『サブリナ』、『デブラ・ウィンガーを探して』、「テンプル・グランディン 〜自閉症とともに」などで知られるジュリア・オーモンド。そうか、還暦ですか・・。ま、貫禄は十分。
 その相手役で、36歳年下のイケメンすぎる恋人ベンジャミン・グリーンは、『ナルニア国物語』のカスピアン王子(のちの王)や『ドリアングレイ』、「ウエスト・ワールド」などのベン・バーンズ。本当にいい男すぎて、怪しさ爆発だ。
 物語は、夫と離婚したジュリアが、3人のこどもたちと還暦を祝うはずが、3人とも都合がつかず、一人ロンドンに取り残されて、所在無く美術館に足を運ぶところから始まる。美術館の展示品の前で、イケメンに声をかけられるおばさん。典型的なパターンにしか思えない。
 ちなみにタイトルの<Gold Digger>というのは文字面通りなら「金塊掘り」ということになるが、スラングとして一般に玉の輿を狙う(通常は女だけど)やつを指す言葉である。
 警戒しながらも、ベンジャミンとラブラブになってしまうジュリア。まあそこまではよくあるロマンスものと同じであろう。
 ベンジャミンは、明らかに何かを隠している風ではあるが、あからさまにジュリアの金を目当てにしているのかは見えてこない。むしろ、物語の中心は、ベンジャミンが登場することによって巻き起こる、家族が今まで封印してきた感情的なゴタゴタだ。
 ジュリアは、どうやら飲酒の問題のある独断的な夫との結婚生活を長年耐えてきたようなのだが、夫の不倫が発覚し、1年かけてようやく離婚が成立したというタイミングらしい。南西イングランドのデヴォンに、美しいお屋敷を所有。別荘もあるから、かなりのお金持ちだ。
 徐々にわかってくるのだが、その夫の不倫相手は、ジュリアの親友で今は彼女の屋敷で前夫は暮らしているらしい。
 息子が2人と娘が1人。金持ちの家庭らしく、みんなヘタレで問題も抱えてるが、その描き方も、ありがちではない。一番下の息子レオ(ルノー)は、甘やかされたヤンキー風だが、父と母の本当の修羅場は見ないで育ってきたので、父親にもなついているし、闖入者であるベンジャミンさえいなければ家族はまた一つになると信じている。
 子供もいる身で、勤務先では浮気をしている弁護士の長男パトリック(アルメスト)と、レズビアンでコメディアンを目指す長女デラ(ルーパー)は、子供ながらに暴力を振るう父の記憶があるので、父親には複雑な感情を持っている。が、かといって自分たちど同年代のベンジャミンを簡単に受け入れるはずもない。母親に対する気持ちは、それぞれが別の想いを抱いている。
 一方、離婚が成立しても未だにジュリアや子供たちを自分の所有物のように考えている変わらない前夫テッド(ジェニングス)も、ジュリアとベンジャミンの仲を裂こうと画策し始める。
 家族の苛立ちをよそに、ジュリアはついにベンジャミンと再婚することを決意するのだが・・・。最後の最後にようやく明らかになるベンジャミンの本当の秘密!
 なーるほど!しかし、こんなことが最後までわかならなった、この子供達や元夫は本当に能力がないなあ・・お金持ちということか。
 デヴォンの美しい自然を背景に、遁走する花嫁と追いかける夫。ジュリアの目的は、自分の幸福というより、これまでの失われた人生にケリをつけるということだったのではないか?と思わせるものです。奥が深ーい!

 最後のシーンの前に、80年代の悪趣味な曲の筆頭、「ロックバルーンは99」がかかっていて、まさか次はアレじゃないよなあ・・と心配していたら心配の通り「テイク・オン・ミー」かかりました!

by 寅松